{{toc}} !古代エジプト時代 こだいエジプトじだい !PCが予め知ってていい情報  「古代エジプト時代」は、漠然と「エジプト地域の古代」とイメージされることが多い。  しかし、エジプト地域が古代ローマ帝国の皇帝領とされた時期は、普通「古代エジプト時代」には含めない。(「エジプトのローマ時代」は、少なくともその1部は、「エジプトの古代」には含まれる)  また、「古代エジプト地域」と言っても、古代エジプト王朝の支配が及んだ地域は、時代によって異同もある。王朝の支配地の拡大縮小とは別に、古代エジプトの伝統的な領域イメージは長い間人々に共有された。しかし、このイメージは、必ずしも現在の[[エジプト領|エジプト=アラブ共和国]]とイコールではない。 *古代エジプト時代の具体的な時代区分については、「古代エジプト略史」を参照のこと。⇒ [[古代エジプト略史]] !追加情報 :'''小辞典版推奨判定''':「歴史+知性 目標値10〜12」 ::'''やや詳しい情報''' 「古代ローマ帝国の皇帝領とされた時期」は、「(エジプトの)ローマ時代」と呼ばれ、「古代エジプト時代」とは別の時代とみなされる。 :: 教科書的に整理すれば、「エジプトの古代」は、「古代エジプト時代」と「エジプトのローマ時代」とに大別される。同様の整理をしていけば「エジプトのビザンツ時代」も「エジプトのローマ時代」と区別されそうなものだが、その辺の区別は議論が多く、統一見解が整理されているとも言い切れない。 :: それ以前に、B.C.305年からA.D.30年まで続いた[[プトレマイオス朝]]時代を「古代エジプト時代」に含めるかどうか、という議論もまだある。 :: 古典的な「エジプトの[[ヘレニズム時代]]」なり、「エジプトのグレコ・ローマン時代」なりの区分は、大づかみすぎるとして、さすがに下火になってきている。 :: では、「プトレマイオス朝のエジプト統治の実情はどんなものだったか?」と言うと、ファラオの王朝としてエジプト社会の伝統的スタンダードに則って振舞った面と、マケドニア系の王朝として古代地中海の国際政治で幅広く活動した面と、どちらが主でどちらが従だったか? といった議論は、細かく検証されている。 :'''小辞典版推奨判定''':「表現+知性 目標値10〜12」 ::'''やや詳しい情報''' 「古代エジプトの伝統的スタンダードでは、例えば、『西方の沙漠は人の住むべき土地では無い』とされました。 :: 西方の沙漠は、神々の領域であり、死者が赴く国との間に横たわる土地であり、[[セト神]]のような畏怖すべき神の息子たち、とみなされた遊牧民の領域でした。つまり、西方沙漠は現在の『国土』のようにはみなされていなかった。古代エジプトを『エジプトの古代』とするなら、その『エジプト地域』は古代人の理解を踏まえたものであるべきでしょう。 :: 1つの考え方としては『古代エジプト時代とは、古代エジプトの伝統的なスタンダードが社会的に共有され意味を持っていた時代』と見ることができます。古代の領域イメージも、『伝統的なスタンダード』の1部です。 :: 『エジプトのローマ時代』は、古代エジプトの伝統的スタンダードが致命的に損なわれた時代です。古代エジプトに含めないのも頷けます。地域によって伝統神崇拝は続けられましたが、ミイラ化や埋葬儀礼などは暫時廃れていきました。だから、『古代エジプト時代』には含めない、――という考え方は成り立つでしょう」―― ''考古学にかぶれた民間伝承研究家'' :'''小辞典版推奨判定''':「魔術+知性 目標値10〜12」 ::'''やや詳しい情報''' 「仮に『古代エジプト時代とは、伝統的なスタンダードが社会的に共有され意味を持っていた時代』と考えてみよう。一体、『伝統的なスタンダード』が『社会的に共有』されるようになったのはいつのことだろう? :: 俗世の研究者の説を信じるなら、それは[[古王国時代|古代エジプトの古王国時代]]も末のことだそうだ。 :: 古王国の王朝は、『伝統的スタンダード』を確立すると、まるでスタンダードを営む体制を構築するのに疲弊したかのように衰滅していった。 :: 俗世では、普通、『古代エジプト時代の前史を先王朝時代』としているではないか。『古王国時代が古代エジプト時代の前史』とは聞かない。 :: [[魔術的な見地|魔術技能]]から言えば、古代エジプト時代は、『[[ファラ]]と神官たちに伝えられた太古の秘密知識が、様々に応用されていった時代』だな。占星術しかり、ミイラ化しかり、埋葬儀礼しかり。もっと言えば、『呪術的だった泥臭い儀式が、後世の高度な魔術に近いシステムに洗練されていった時代』だ。スタンダードの社会的共有などは、本質ではあるまい」―― ''結社をはぐれた魔術師'' :'''小辞典版推奨判定''':「歴史+直観 目標値10〜12」 ::'''インスピレーション''' 「おまえらみんな考えすぎ(苦笑)。 :: 『古代エジプト時代は、古代エジプト人が自前で国をやってた時代』でいーじゃねーかよ。 :: そりゃ、国が大きくまとまった時期も、細かく別れた時期もあっただろうさ。 :: ローマ皇帝は、普段はエジプトにいないで支配したんだから、『自前の国』じゃねーわな。 :: プトレマイオス朝は、よそから来た連中がエジプトに本拠を構えて支配したんだから、はじめはズルもやったが、段々エジプト風に染まった、でいーじゃねーかよ」―― ''ロマン大好きな古代史マニア'' ---- :'''小辞典版推奨判定''':「表現/分析+知性 目標値12〜14」 ::'''詳しい情報''' 「『プトレマイオス朝は、段々エジプト風に染まった』。これはそうですね。 :: 実は、プトレマイオス朝だけでなく、古代エジプト王朝には外来王朝も少なくないですし。それも後世にいくほど増えていく。[[第25王朝|古代エジプト第25王朝]]のヌビア出自は有名ですし、[[第22王朝|古代エジプト第22王朝]]、[[第23王朝|古代エジプト第23王朝]]はリビア系です。 :: 古代エジプト時代を『古代エジプト人の王国が営まれていた時代』ということもできると思いますが。その場合、『古代エジプト人の民族素性』が問題になります。 :: 例えば、イスラム化した後のエジプトの住民は『古代エジプト人』とは別の[[民族]]なわけです。 :: 古代エジプトの古い諺『1度ナイルの水を飲んだ者は必ず帰ってくる』は、今でも使われることがあるようですが。要するに、古代エジプトは、古代中国に負けないくらい同化力の強い文化を持っていたのです。 :: 文化と一言で言っても、どう整理するか鍵ですが。鳥羽口としては『伝統的スタンダードの共有』をキーにして整理していくといいように思えます」―― ''考古学にかぶれた民間伝承研究家'' :'''小辞典版推奨判定''':「歴史/分析+知性 目標値12〜14」 ::'''詳しい情報''' 「プトレマイオス朝は、段々エジプト風に染まった」、これは一面正しい。 :: プトレマイオス朝時代は、かつて「エジプトの[[ヘレニズム時代|ヘレニズム]]」とも言われたが、今ではかつてのような意味で「ヘレニズム時代」が言われることは、少なくともエジプト史ではない。 :: 以前は、「外来王朝が、ギリシア風の文物をエジプトに広めた時代」として「ヘレニズム時代」が言われたが、「プトレマイオス朝時代は、どう見ても、外来の王族がエジプトに土着化していった時代」だからだ。マケドニア系のプトレマイオス一族が、ギリシア的な文化をもっていたのは当たり前すぎて、それだけを指してヘレニズム云々を言うのも、大げさというものだろう。 :: しかし、問題は、王朝はエジプト化していったにも関わらず、プトレマイオス朝時代のエジプト社会では、オリエント化とでも言えるような変質が急速に進んだことだ。 :: 具体的には、アケメネス朝ペルシアがエジプトを支配した時代に導入された貨幣経済が広く浸透し、伝統的な社会システムが混乱していった時代がプトレマイオス朝時代と言える。 :: プトレマイオス朝は、[[アレクサンドリア|アレクサンドリア,エジプトの〜]]に集まったユダヤ人たちの地中海交易を管理して王朝の財政を運営した。古代エジプト王朝では、国際交易に従事するのは、王朝付きの官僚、つまり公務員に限るのが伝統だったが、プトレマイオス朝はユダヤ人たちにかなり自由に国際交易をさせ、その上前をはねるような手法を導入した。今風に言えば、国家管理だった交易を自由化したわけだ。ローマ時代までには、貨幣経済がかつての農本的なエジプト社会を変質させていた。 :: この「社会の変質」は、伝統的スタンダードの喪失にも関わっているだろうと、予想される。今風に言えば、グローバリゼーションで地域経済が壊滅的打撃を受けるに似た事態が、長期的に進行したわけだ。 :: 古代は、人、物、金、情報の流通速度は現在よりはるかにゆったりしていた。今なら1、2世代でおこるような社会変動が、数百年かけて進行したわけだ。それでも、伝統社会にとって、打撃は打撃だった。 :'''小辞典版推奨判定''':「魔術/分析+知性 目標値12〜14」 ::'''詳しい情報''' 「『貨幣経済の浸透』が『伝統的スタンダードの喪失にも関わっているだろう』ねえ。それはそうなのだろうが……。 :: 伝統的社会を焦点にして論じるなら、ミイラ化や埋葬儀礼は新王国時代に俗化して平民にも広がったな。貨幣経済の浸透以前のことだが。これをどう考えるかね? 神聖なる神の化身にのみ許された儀礼の俗化もスタンダードの共有と呼ぶのかな(?)。貨幣経済以前に、すでに、スタンダードとやらは変質をはじめていたのではないかね? :: ローマ時代を、エジプト古代史の大きな区切りにするのはわからんでもない。プトレマイオス朝の王族はミイラ化もしたし、近親婚で聖婚儀礼も果たした。ローマ皇帝はミイラ化などしなかったし、エジプト風の聖婚儀礼など営まなかったからな。 :: しかし、社会的スタンダードを区切りにするなら、真に重要なのは、ローマ時代にエジプトにキリスト教が広まり、少なくとも下エジプトがキリスト教化した時になるのではないかね。この時、上下エジプトの伝統的統一は決定的に不可能になった。ローマ時代に入って、下エジプトがキリスト教化するまでの時代は、言わば古代エジプト時代のエピローグになるのだろうな。社会的スタンダードを焦点にして考えるならば、の話だがね」―― ''結社をはぐれた魔術師'' ---- :'''小辞典版推奨判定''':「歴史/分析+知性 目標値14以上」 ::'''専門的知識''' 「古代エジプト時代」は、「エジプトの古代」とイコールではない。しかし「古代エジプト時代とは、どんな時代か?」と言われると、すっきりした整理はまだ提出されていない。 :: 「古代エジプト独自の王朝が営まれた時代(地方政権も含む)」この整理は、政治史的な整理と言える。 :: 「王朝と神殿との協力体制で、ナイル川の定期的な氾濫に基づいた農本的な社会システムが営まれた時代」この整理は、経済史的な整理と言っていいだろう。あるいは、生産技術を重視した歴史と言ってもいい。 :: 「人々が、来世への転生を説く伝統宗教を社会的スタンダードとして共有していた時代」この整理は、社会史的な整理と言える。 :: これらの整理は、どれかが決定的に正しくて、他は完璧に間違っていると、いったものではない。切り口の問題ではある。 :: 「王朝と神殿との協力体制でのナイルの水利管理」は、占星術と暦の管理と儀式で執りおこなわれ、[[ファラオ]]が太陽神の化身だ、という社会的スタンダードを権威付けた。暦の運用は太陽の運行のように規則的であるべきだ、と社会に期待されたからだ。ファラオが「太陽神の化身」として伝統的スタンダードを営むのでなければ、実力だけで上下エジプトを支配しようとしても容易でなかったことは、多くの事例が示している。 :: 結局、よりすっきりした整理を基にして、古代エジプトで起きた無数の出来事のより多くを、よりよく説明できるのが、より正しい説明なのだ。 :: 研究者たちは、よりすっきりした整理で、より過不足なく古代エジプトの歴史を説明できる古代エジプトの定義を求め、日夜研究を続けているのである。 !GM向け参考情報 :'''小辞典版推奨判定''':―― ::'''おまけ''' :: 「ねえねえ、超古代文明のお話は? ピラミッドって、大昔にアトランティス人が作っておいたのに、エジプト人が後から名前を書き換えたり彫刻したりしたんでしょ?? ちょっとズルいよねー」 ::(絶句)「ちょっと、キミ、そこに座りたまへ。ピラミッドと言うのはだね、[[マスタバ墓]]が発展したものでだね。マスタバ墓と言うのは」 :: 「あれ? 宇宙人が作ったんだっけ??」 :: 「ムッキー★ まず、説明を聞きたまえ。えーとだね」 :: 「まったく(苦笑)。俗ウケする[[超古代説|超古代文明]]の致命的欠陥は、まるでアトランティス文明がシステマティックに古代文明に伝承されたかのような話を吹くところだな」 :: 「ちょい待ち、世間でも、アトランティスが滅びて、細かな技術がエジプトに伝わったとか言ってるんじゃねーの? ウソかホントかは、俺ぁ知らねーけど」 :: 「失敬、そこを言ったつもりだったが、ハショったかな。 :: 断片化した技術がエジプトに伝わった。なるほど、例えば、ピラミッドの内部構造は、サーチライトのような照明器具を使って建造したとか言うな。では、その電源はどこに行ったのだ? 照明器具や電源機械を作る工場は?? :: 燃料は『オリハルコン』だとも言うな。しかし、エネルギーを抽出して電気に変換するシステムはあったはすだろう。電球さえあれば、照明ができると言うのでは、まるで呪術師の発想と同じではないかね(笑)。 :: 断っておくが、『オリハルコン』は、乾電池やバッテリーのようなチャチなものではなかったはずだ」 :: 「だから、電源とか工場とかは、きっと大きな宇宙船に積んであったのよ。それで宇宙船ごとどこかに行っちゃったから、なんにものこらなかったの」 :: 「ちょっと、キミ、まだマスタバ墓の説明も終わってないですよ」 :: 「古代エジプトに、ミステリーが多いことは確かなんですけどね。ギリシアの伝承起源の『アトランティス』とか『オリハルコン』とかを考えなしに持ち込むから話がこじれるわけでしょう」 :: 「まあ、[[ヘレネス]]自身が『エジプト人に聞いた』と伝えてるわけだがね」 :: 「ええ。しかし、仮にそれを信じるとしても、異文化間の伝達ギャップや、伝承過程での話の変形などを検討するのが先決ですよね。謎は謎として取り組む方が、急がば回れですから。 :: ところが、超古代説は、ある謎に別の謎をショート・カットで掛け合わせくような論法ばかりですから、わけのわからない話になるはずです(笑)」 :: 「謎に謎を掛け合わせるね。言っちまえば、思い込みが強すぎってことか」 :: 「もちろん、私とて俗世間で言ってるような『アトランティス』なぞ信じているわけではない。プラトンも自分のテーマを優先させて、肝心のところは充分説明してないしな」 :: 「へー、そうなんだ。んじゃ『アトランティス』って何だったんだい?」 :: 「うむ、私の考えを理解してもらうには、まず、[[アストラル・システム]]という秘伝について知ってもらう必要があるのだが」 :: 「…………」 :: 「あ、あたしそれ、聞いたことあるよ♪ アストラル・システムって、偉い宇宙人連盟なんだよね♪」 ::(絶句)「ちょっと、キミ、そこに座ってくれたまえ」 :: 「あの、まだこちらの話も終わってないんですが」 !リンク *[[小辞典]]{{br}}⇔ [[小辞典ワールド編]]{{br}}⇔ [[考古学、歴史研究の関連用語]] !!関連項目 *[[古代エジプト略史]] //資料リンク !活用や検討 !!活用 ---- !!検討 *検討の項は記名記入を推奨(無記名記入は書き換えられても仕方なし、ってことで) ----