{{toc}} !ギルガメシュ (Gilgamesh) !PCが予め知ってていい情報  [[古代メソポタミア]]の神話、伝説で語られた英雄。2/3が神で、1/3が人間だった、と伝えられている。  モデルとされた人物が、[[ウルク]]の王として実在していた可能性も論じられているが、直接の証拠は少なく、現状では慎重に判断保留とする研究者も少なくない。 !追加情報 :'''小辞典版推奨判定''':「歴史+知性 目標値10」 ::'''やや詳しい情報''' ギルガメシュの名は、「[[シュメール王名表]]」では、[[エアンナ]](ウルク第1王朝)第5代の支配者として名が見える。エアンナの王朝は、大洪水の後にキシュ第1王朝から王権が移ったとされるが、現状では半ば以上伝説の時代に属している。 :: 仮に、ギルガメシュが実在の人物か、あるいは物語のモデルになる個人が実在したと想定すると、おそらくは、紀元前3[[千年紀]]前半、現在の時代区分で言うと、[[初期王朝時代|シュメール・アッカド時代の初期王朝時代]]第I期か第II期かの人物と思われる。 ---- :'''小辞典版推奨判定''':「歴史+知性 目標値12〜14」「表現+知性 目標値14以上」 ::'''詳しい情報'''  後代の、[[古バビロニア時代]]の伝承では「ギルガメシュはウルクの市壁をはじめて築いた」と伝えられていた。 :: ギルガメシュが登場するシュメール語の物語(英雄詩)は現在のところ5種類ほどが知られている。この内、『ギルガメシュとアッガ』と呼ばれる詩は、神話的と言うよりも伝説的な内容。もし、ギルガメシュにモデルとなる実在の人物がいたとしたら、その事跡を踏まえた内容である可能性がもっとも高いと目される。 :: 他の4編のシュメール語の英雄詩は、それぞれが後代[[アッカド語]]の叙事詩(『ギルガメシュ叙事詩』)として再編される物語の部分的な原型をなしている。 :: 4編のシュメール語の詩とは、{{br}}『ギルガメシュと生者の国』、{{br}}『ギルガメシュと天の牛』、{{br}}『ギルガメシュとエンキドゥと冥界』、{{br}}『ギルガメシュと死』。 ::(⇔ 「[[ギルガメシュ叙事詩]]」) :'''小辞典版推奨判定''':「歴史+知性 目標値12〜14」 ::'''詳しい情報''' 「ギルガメシュ」はアッカド語系統の言語によるキャラクター名で、シュメール語では「ビルガメシュ」と呼ばれていた。シュメール語碑文では、ビルガメシュの名は、神格を示す限定詞([[ディンギル・マーク]])を冠して刻まれていた。  :: 初期王朝時代末、[[ラガシュ]]市末期の宗教文書には「ビルガメシュ神の土手の神殿」に犠牲を捧げた記録が知られている。当時の宗教記録は、神格の高い神から順に捧げた犠牲が記録されており、ビルガメシュ神の神格はかなり低かったことが知れる。 :'''小辞典版推奨判定''':「魔術+知性 目標値12〜14」、「歴史+知性 目標値14以上」 ::'''詳しい情報''' ウル第3王朝時代、ギルガメシュ神は「冥界のルガル(王)」であるとされ、[[エレシュキガル女神]]、[[ドゥムジ神]]、[[ネルガル神]]らと共に、冥界神の1柱と数えられるようになっていた。 :: この時代の宗教文書では、ギルガメシュ神は、エレキシュガル女神が司る「冥界に届く太い管のある所(死者へ供物を届ける粘土製土管の至る場所の意)」[[エンネギ]]市のルガルである、とされた。 :: これは「[[ギルガメシュ叙事詩]]」に編み込まれた『ギルガメシュとエンキドゥと冥界』の影響だろう。 !GM向け参考情報 :呼称:ギルガメシュ :別称類: 「ギルガメシュ」はアッカド語系統での名で、シュメール語では「ビルガメシュ」と呼ばれていた。 :形容: 「シュメール王名表」ではエアンナ(ウルク第1王朝)第5代の支配者とされている。 ::  「2/3は神で1/3は人間」。ただし、シュメール時代には、ビルガメシュの名は、神格を示す限定詞([[ディンギル・マーク]])を冠して刻まれた。 :: 後代、冥界神の1柱としては「エンネギ市のルガル(王)」と呼ばれるようになった。  :図像: 後代作られた、長髪で、長い髭を蓄えた逞しい体型の男性が、素手でくびり殺したとおぼしき獅子を小脇に抱えているレリーフなどが、現在の研究者からギルガメシュの像、と解釈されている。これは、同じようにくびり殺した野牛(?)を抱える男性像を描いた印章に、ギルガメシュを描いたものと推定されているため。 :: このタイプの男性像は、全裸で描かれた。この図像がギルガメシュを描いたものとしたら、英雄としての姿を描いたものだろうか(?)。 :持物:??? :聖域: 初期王朝時代末、[[ラガシュ]]市の土手の神殿。冥界のエンネギ市(ウル第3王朝時代) :: ウルクのエアンナ聖域にあったかもしれないビルガメシュ神の聖域は未確認。(神としては神格は低かった) :主要祭儀:??? :関連キャラクター:キシュ王アッガは、『ギルガメシュとアッガ』で、軍勢を率いウルクに攻め寄せ、ギルガメシュに敗れて捕えられた後、解放される。「かつてはギルガメシュの支配者だった」とも語られる。この物語は、解読された直後から多くの研究者の議論で話題とされた。 :: [[エンキドゥ]]は、『ギルガメシュとアッガ』ではギルガメシュの盟友であり、『ギルガメシュ叙事詩』では、はじめギルガメシュの敵対者として現われ、後、盟友になる。 :: 家畜を守護するニンスン女神は、『ギルガメシュ叙事詩』でギルガメシュの母神とされている。2/3の神性の源。 :: [[フンババ]]は、ギルガメシュとエンキドゥに退治される「杉の森(レバノンの山地のことされる)の番人」。シュメール語版では「フワワ」と呼ばれた怪物的な龍蛇。 :: [[イシュタル女神]]は、『ギルガメシュ叙事詩』で、ギルガメシュに求婚。ギルガメシュに拒絶され、その際受けた侮辱(非難)の報復として、天の牛をウルクに送り込むよう天空神[[アン神]]に請う。 !!主要エピソード :『[[ギルガメシュとアッガ]]』: 「キシュの王アッガの使者がウルクのギルガメシュのところにやってきた」。ギルガメシュに使者への対応を尋ねられたウルクの長老たちは、キシュに服従すべきだと応える。次に、ギルガメシュが若い人たちの集会に同じ問いを尋ね、武器をとって戦うべきだという応えを得ると心をはずませる。 :: ギルガメシュは盟友エンキドゥらの助力を得、ウルクの市壁まで攻め寄せたキシュの軍勢と戦い、アッガを虜にする。 :: ギルガメシュはアッガに言う「あなたはわたしのかつての支配者なのだ、その恩義に免じてあなたを解き放とう」。アッガはキシュに帰っていった。 ::(エピソード要約は、主に、大貫 良夫、他共著,世界の歴史1『[[人類の起原と古代オリエント]]』,中央公論社,1998,p.170の解説文を下敷きにさせてもらいました) !!トピック:ギルガメシュ実在説  ギルガメシュには少なくともモデルとなる個人が実在した、とする実在説の主要論拠は、「[[シュメール王名表]]」にある。  しかし、「王名表」にあるギルガメシュの名が論拠ではない。「王名表」の古い時代の記述は、神話と入り交じっており、単独では論拠になり得ないからだ。  「王名表」によれば、キシュの王アッガは、同じく王だったエンメバラゲシの息子と記されている。一方で、[[ディヤラ川]]の流域から出土した[[初期王朝時代|シュメール・アッカド時代の初期王朝時代]]中ほどの碑文に「キシュ王メ・バラ・シ」による奉納碑文が知られている。  王名表に見られる「エンメバラゲシ」の「エン」を、シュメール都市の一部で伝統的に用いられた王号「エン」と見ると、「エン・メバラゲシ」が、王名表のメバラシと同一人物である、とする解釈も開ける。アッガの父が実在したなら、ギルガメシュも実在しただろう、というのが実在説の主要論拠になっている。  この場合、後代の「ギルガメシュがウルクの城壁をはじめて築いた」といった後代の伝説は、実在説の旁証とされる。  この説の難点は、初期王朝時代後半、ビルガメシュがすでに神格化されていた点にあるだろう。人間は神々の被造物であるとし、神と人間との血縁、系譜関係を論じないシュメール・アッカド神話で実在の人物だったビルガメシュが神格化されたとしたら、極めて異例、と言えるからだ。  逆から考えて、個人として実在したビルガメシュが神格化されるだけの特別な背景をフィクション設定すれば、PCたちが挑戦すべき謎を導くことも可能になります。 !リンク *[[小辞典]]{{br}}⇔ [[小辞典ワールド編]]{{br}}⇔ [[神話、伝説のキャラクター]]{{br}}⇔ [[歴史上の実在人物]] !!関連項目 *[[ギルガメシュ叙事詩]] !!資料リンク !活用や検討 !!活用 !!検討 *検討の項は記名記入を推奨(無記名記入は書き換えられても仕方なし、ってことで) ----