{{toc}} !マルドゥック神 マルドゥックしん :'''英語、他'''(欧米語):Marduk(マァルドゥク),Merodach(メロダク) !PCが予め知ってていい情報 *「判定処理なしに、PCが知ってることにしていい」情報とします。  マルドゥック神は、古代メソポタミアの都市、[[バビロン市|バビロンの遺跡]]の祭神だった。  しかし、むしろ、[[バビロニア]]の主神、バビロニア神話の神々の王として知られる。  「神々の王」としては「ベル・マルドゥック(主マルドゥック)」と呼ばれた。「ベル神」とも。 '''【参照イメージ】''' *[[マルドゥック神|http://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/4/4f/Marduk_and_pet.jpg]]{{br}}(足元に[[mシュフシュ]]を従えたマルドゥック神,[[Wikimedia Commons]]) !追加情報 *「簡単な判定に成功すればわかる情報」とします。 :'''小辞典版推奨判定''':「歴史+知性 目標値10〜12」 ::'''やや詳しい情報''' マルドゥック神の起源は定かではない。[[バビロンの遺跡]]は地下水位が高く、発掘調査を[[新バビロニア時代]]より前に及ぼすことがほぼ不可能だからだ。 :: 普通は、[[ウル第3王朝]]時代に遡る『[[アガデの呪い]]』などを根拠に「マルドゥック神の崇拝自体は、都市バビロンの祭神として[[シュメール・アッカド時代]]からおこなわれていた」とされる。 :: 一方、『アガデの呪い』の文脈からは、おそらくは後世の改竄(あるいは、伝承過程での変形)が認められる、として、「マルドゥック神は、[[バビロン第1王朝]]を開く以前に[[アモリ人]](アムル人)がバビロニアに持ち込んだ」などとする異説もある。(どちらかと言えば小数派意見にあたる) :: 歴史学的に、確かに言えることは、バビロン第1王朝期には確実にバビロン市の祭神になったマルドゥック神は、[[ハンムラビ王]]がバビロニアを統一した後、徐々にバビロニア主神としての地位を確立した、という経緯だ。 :: バビロンがメソポタミアの広域に支配力を及ぼすに連れて整えられたのだろうと思える神話『[[エヌマ・エリシュ]]』は、古バビロニア王国の国家祭儀で再演された、と目される。この段階では、マルドゥック神は「ベル・マルドゥック」と呼ばれるようになっていた。 :'''小辞典版推奨判定''':「言語+知性 目標値10〜12」 ::'''やや詳しい情報''' 「バビロン第1王朝が営まれた時期は、シュメール語が日常使用されなくなったとは言え、古典語としては使われていました。マルドゥックの神名は、シュメール語的かもしれませんが、シュメール・アッカド時代に遡るとも断定し難い。 :: 一方、マルドゥック神のアッカド名は、「アマルトゥ」で「太陽の牛」を意味しました。また、エラム人もマルドゥック神を同じく「アマルトゥ」と記しています。これを傍証として重視すれば、アッカド系の神がルーツとの可能性も高まります。 :: ちなみに、『メロダク』は、ユダヤ教聖典や『[[旧約]]』に記された古代ヘブライ語由来の名です」−− ''フィールドの言語学者'' :'''小辞典版推奨判定''':「表現/分析+知性 目標値10〜12」 ::'''やや詳しい情報''' 「バビロンでは、マルドゥック神の神域で春の新年祭、[[アキツ祭]]が営まれました。神のシンボルは鍬とされたこともあり、本来は農耕神だった、との説がありますね。 :: しかし、この説はどうでしょう? アキツ祭りと鍬を結びつけた解釈なわけですが。鍬は、むしろ運河や都市の市域を確定して、秩序を定める神としてのシンボルともとれます。 :: また、『太陽の牛(アマルトゥ)』のアッカド名と、農耕神とにはしっくりしないものもあります。シュメール・アッカドの伝統では、牛は、野生の荒ぶる力や、神界の畏怖すべき力を体現することが多かったからです」―― ''考古学にかぶれた民間伝承研究家'' :'''小辞典版推奨判定''':「表現+知性 目標値10〜12」 ::'''やや詳しい情報''' 「そうでございますねぇ。いろいろ議論の多いところですが。マルドゥック神は、メソポタミア神としては一風変わっておりますな。 :: メソポタミアの古代神は、人間の姿で描かれるのが通例で、神であることは被りもので示されます。権威の高い神は被りものに角飾りが付けられますな。 :: マルドゥック神もバビロニア風の男性の姿で描かれることが多いのですが、4眼、4耳で描かれること、さらには、双面神、4面神として描かれた例もございます。これは、メソポタミア神としては異例と申せましょう。シュメール・アッカド起源ではない、という説にも説得力があるかと思われます。 :: インド=イラン的な神格表現では、多眼や多耳は、宇宙の秘密をより遠くまで見通す力を意味しますな。4面神も世界の4方を見渡す力の表現です。いえいえ、マルドゥック神がインド起源、などと申し上げるつもりはございません。ただ、表現スタイルは影響を被ったかもしれないと、申し上げているだけでして。 :: 判断に迷いますのは、双面神の神像ですな。これは、矛盾した神性を一身に帯びた神格の表現ともとれますし、シンプルに2柱の神格が習合されたことの表現ともとれますなぁ」―― ''趣味の古美術商'' :'''小辞典版推奨判定''':「魔術/分析+知性 目標値10〜12」 ::'''やや詳しい情報''' 「マルドゥック神のルーツが何であれ、完成されたベル・マルドゥック神は、魔術と水を司り、世界と人間の運命を握る神とされた。『知恵の神』ともされたが、この性格は『最愛の息子神』とされた[[ナブー神]]に委ねられたとしていいだろう。 :: マルドゥック神が司った『水』は、[[エア神]]が司っていた『真水』のことだろう。 :: 『[[エヌマ・エリシュ]]』の物語を[[魔術的見地|魔術技能]]から読めば、マルドゥック神が混沌を現す地下深淵([[ティアマット]])の勢力を打ち破り、地上と天界と神界に秩序をもたらした神であることは、明白だ。これこそが、マルドゥック神が司った『魔術と水』の本質だ。 :: 魔術的には、ルーツの詮索よりも、マルドゥックの神格にこうした性質を見出したのがアモリ人王朝、ということの方が重要だな。もちろん、マルドゥック神のルーツがわかれば、アモリ人が[[アストラル・システム]]とどうかかわったのか、より深い理解が開けるはず。俗世の学者にも研究に勤しんでもらいたいものだ。 :: 仮に、アモリ人がバビロニアにもちこんだ神格が、アッカド・ルーツのアマルトゥ神と習合してマルドゥック神となった、というようなことがあったとしても、驚くにはあたらない。重要なのは、魔術や人間の運命を司るような力が、アッカド文明とバビロニア文明のどちらにより多く由来するか、なのだ。 :: バビロニア占星術では、マルドゥック神は木星と関わるとされた。[[へレネス]]は[[ゼウス神]]と、[[ローマ人|古代ローマ人]]は[[ユピテル神]]と同一視した」―― ''結社をはぐれた魔術師'' ---- *「難易度が、ある程度高い判定に成功すればわかる情報」とします。 :'''小辞典版推奨判定''':「表現+知性 目標値12〜14」 ::'''さらに詳しい情報''' 「[[シュメール・アッカド時代]]の末には、後にバビロニア地方に統合された[[シュメール・アッカド地域]]の主神は[[エンリル神]]とされ、エンリル神の父である[[アン神]]が権威ある神とされていました。 :: おそらく、バビロン第5王朝が、バビロニアを支配するようになるのと並行して、マルドゥック神はエア神の息子神とされたのでしょう。『エヌマ・エリシュ』では、神界の神々に挑んだ地下深淵の神や怪物の軍団を、マルドゥック神が先頭にたって打ち破たことが語られています。 :: 戦いに勝った子とで、マルドゥック神は『神々の王』『ベル・マルドゥック』と呼ばれるようになります。エア神が司った真水と知恵とは、このときマルドゥック神に委ねられたように読めます。 :: バビロンの[[エ・サギラ神殿]]を神域としてマルドゥック神の神格が高められると、エア神を祭神として祀っていた[[エリドゥ]]は政治的首都バビロンに対して、宗教センターとしての権威を高めました。これ以降、エリドゥは、『バビロニア地方の古都』としてのステータスを獲得していきます。 :: エンリル神の方は、役割のかなりをマルドゥック神に奪われ、目立たない神になっていきます。ただし、エンリル神を祭神として祀っていたニップル市では、崇拝が続けられました」―― ''考古学にかぶれた民間伝承研究家'' :'''小辞典版推奨判定''':「魔術+知性 目標値12〜14」 ::'''さらに詳しい情報''' 「『ベル・マルドゥック』の『ベル』は、フェニキア系の古代神で嵐と雨を司った天空神バールの神名の古い形だな。バールは『主』を意味し、ベル・マルドゥックも『主マルドゥック』を意味した。 :: 今の言葉で言うと、“Lord Marduk”といったところだ。『神々の王』とすると、少し意味が強いな。『神々を主導する第1人者』といったニュアンスだ。 :: ところで、興味深いのは、フェニキア系のバール神が嵐を司ったように、マルドゥック神に主神の地位を奪われたエンリル神も嵐を司る神だったことだ。ベル・マルドゥックは嵐を司る権能もエンリル神から奪っている」―― ''結社をはぐれた魔術師'' :'''小辞典版推奨判定''':「歴史+知性 目標値12〜14」 ::'''さらに詳しい情報''' 古バビロニア王国は、B.C.1595年、[[アナトリア]]から長駆遠征してきたヒッタイト軍に滅ぼされた。 :: それ以前からバビロニア地域は統一を失って混乱していたのだが、なぜかヒッタイト軍が短期間で撤収した後、東方の[[ザクロス山脈]]を越えて地域に越境してきたのが、[[カッシート人]]だった。 :: カッシート人たちは、概ね4世紀ほどバビロニアで支配的に振舞ったが、段々とバビロニア化。王朝らしきものを営んだ場合、バビロニア神話に準拠して王権を権威付けた。彼らが設置した境界石にはバビロニア神のシンボル符号が刻まれている。カッシート人は一方で、シュメール語の復興を推し進めたが、マルドゥック神の神格も高いものとして尊重した。 :: マルドゥック神を巡る歴史的事件としては、他に、B.C.689年[[アッシリアの帝王|古代アッシリアの王位]][[センナケリブ]]がバビロンを破壊し、神像を持ち去った事件が有名だろう。当時、[[ニネヴェの都|ニネヴェの遺跡]]では、「マルドゥック神は罪人でありアッシュル神に裁かれた」との宗教文書が作られた。 :: 後、マルドック神の神像は、センナケリブの息子で帝位を継いだ[[エサルハッドン]]によって復興されたバビロンに、センナケリブの孫[[アッシュル・バニパル]]の代に返還された。 :'''小辞典版推奨判定''':「魔術/分析+知性 目標値14以上」 ::'''専門的知識(?)''' 「『エヌマ・エリシュ』では、ベル・マルドゥックは『50の名を持つ神』と呼ばれている。 :: 実際に、神格が高められるに連れ、多くの神々の権能を奪っていったようだ。 :: 俗世の研究者の間には、こうした神格の在り方を指して『一神教化』などと呼ぶ意見もある。さすがに、俗世の学会でも[[反論は多いようだ|諸説ある]]。 :: 『50の名を持つ』ベル・マルドゥックが一神教化した神格なら、『千の名を持つ』[[イシス女神]]は何になるのやら。まだ、『宇宙の根本原理[[ブラフマー]]を奉じるヒンドゥー教は一神教』という説の方が興味深い。(実際、ヒンドゥー教では、一部の聖職者がそう唱えているのだよ) :: [[魔術的見地|魔術技能]]から言えば、ベル・マルドゥックは一神教化した神格とは言い難い。『エヌマ・エリシュ』の神話を見る限り、宇宙の成り立ちと根本原理についての洞察が、一神教化の可能性も示している、といったところか。 :: 権能の抽象化も不足しているように思えるが、これは、神官文書などを読み、当時の秘伝、奥義を探らねば断定はできない」―― ''結社をはぐれた魔術師'' !GM向け参考情報 *GM向けの補足情報、マスタリング・チップス、アイディア・フックなど !!マルドゥック神の神格 '''【参照イメージ】''' *[[エ・サギラ神殿の推定復元図|http://m3mary.com/world_7_wonders/bable/babylon_marduk_temple.jpg]](エ・サギラ神殿の推定復元図,[[m3mary.com|http://m3mary.com/index2.htm]]) :'''呼称''': アッカド名「アマルトゥ(太陽の牛)」(アラム語名も同じ)。ヘブライ語名「メロダク」。「マルドゥック」は、欧米語のよる現代的な名。 :: 「知恵の神」ただし、この呼称はより多く[[ナブー神]]に捧げられるようになった。 ::'''神々の王、あるいは、神々の第1人者として''' 「ベル・マルドゥック」(ベル神とも)、「50の名を持つ神」。 :'''図像''': 通例、メソポタミア系の男性神らしい、整えられた髭を長く蓄えた頑健な肉体を持つ人間の姿。 :: 有名な図像では、豪華に飾られた王冠風の、円筒形縁無し帽を被る。(この冠には、メソポタミア神特有の角飾りはついていない) :: 『[[エヌマ・エリシュ]]』によれば、マルドゥックの誕生を喜んだエア神は、他の神の2倍の力を与えたとされる。このため4つの目、4つの耳を持つ姿で描かれることがある。また、双面神として描かれることもある。神話は「光輝く神の衣をまとい、 口からは炎を吐く」と続く。 :: 後代、4面の姿で描かれることもあった。 :'''持物''': 常に持つ持ち物(アトリビュート)ではないが、鍬がシンボルとされた。 :: かつては[[エンリル神]]が管理した「[[天命の書板]]」の、所有者とされた。時として、「天命の書板」を首から胸の前にさげたマルドゥック神が描かれることがあった。 :'''神聖動物''': ベル・マルドックは、小さめの角2本を持つ、[[ムシュフシュ]]を従える。 :'''聖域''': [[バビロン市|バビロンの遺跡]]の[[エ・サギラ神殿]]。『[[エヌマ・エリシュ]]』の神話では、バビロン市は、ベル・マルドゥックが創建した、と語られた。同神殿は、マルドゥック神に捧げられた[[ジッグラト]]、[[エテメナンキ]]を擁す。神話では、エテメナンキは、ベル・マルドゥックが定礎を固めたかに語られている。 :'''主要祭儀''': バビロン市のエ・サギラ神殿では、春の新年祭、[[アキツ祭]]が執りおこなわれた。 :: [[ハンムラビ王]]以降の[[バビロン第1王朝]]の国家祭儀では、『[[エヌマ・エリシュ]]』の神話を再演する祭儀が盛大に執りおこなわれた。 :'''他の神々との関係''': ベル・マルドゥックは、バビロニアの神々の第1人者とされ、「神々の王」とも呼ばれる。(シュメール神話の神王ではないことに注意) :: シュメール・アッカドの古い知恵の神[[エア神]]の息子神とされ、同じく知恵と関係した[[ナブー神]]の父神とされた。 :: 配偶神は、サルバニド女神。 :'''関連する神話''': 『[[エヌマ・エリシュ]]』 :'''関連遺物''': [[天命の書板]] !![[アイデア・フック]] :'''その他のマルドゥック''': *'''マルドゥック星'''{{br}}[[超古代説|超古代文明]]の著名な論客、ゼカリア・シッチンやバーク・エルデンは、「マルドゥック」を「かつて太陽系に存在した惑星、ティアマット星を崩壊させた(現代人には)未知の遊星ニビル星」のバビロニア名と主張しているようだが、よくわからない。{{br}}普通は、「ニビル」は木星のバビロニア名とされている(ただし、一部のバビロニア占星術書には、「ニビル」が北極星を指すと思わせるふしもあるが、古文書解釈が関わり[[定かでない]])。{{br}}シッチンによれば、「惑星ティアマットは、まずマルドゥック星の衛星の1つがぶつかり、いくつかに別れ、後にマルドゥック星本体がぶつかって粉々になり、現在のアステルロイド・ベルトのようになった」そうだ。もちろん、現在のように拡散するには、膨大な年月がかかったことだろう。{{br}}ティアマット星が粉々になったのに、マルドゥック星の方は、重力の相互作用を被らなかったらしいのは、おそらく重力制御のようなオーパーツ・パワーでガードされていたからだろうが、残念なことにシッチンはその辺のことをあまり記していない。ただ、「崩壊したティアマット星の1部とマルドゥック星の衛星の1つとから形成されたのが、我々が現在住む地球」だそうだから、マルドゥック星はたいへん大きな遊星だったはずと思われる。あるいは、それで重力の影響も、相対的に軽微だったのかもしれないが、シッチンの意見はよくわからない。{{br}}さらによくわからないのは、「マルドゥックは、天体に基づいた神名」と言いたいのか、「マルドゥック神がバビロニア占星術でニビル星と関係付けられた」と言いたいのかだ。あまりによくわからないので、どうも、その時その時で思いついた事を書いてるような気もしないでもない。 *'''ブラック・メタル・バンド'''{{br}}「マルドゥック」は、リアル・ワールドに実在するブラック・メタル・バンド。スウェイデンを中心に活動中。(2006年現在){{br}}⇒ [[The Official Marduk Website|http://www.marduk.nu/]] !リンク *[[小辞典]]{{br}}⇔ [[小辞典ワールド編]]{{br}}⇔ [[神話、伝説のキャラクター]] !!関連項目 !!資料リンク *[[Wikipedia英語版:Marduk]] !活用や検討 !!活用 *このページの記事を踏まえた、[[アイディア・フック]]、使ってみた[[シナリオ]]、セッション・レポ、などなど {{comment}} !!重要な改訂の情報 *内容に追加、変更があった場合のみ、でいいでしょう。{{br}}(誤字脱字の訂正や、文章を整える程度では記録不要) {{comment}} !!検討 *このページの記事内容についての質問、重要な疑問、改訂の要望など *検討の項は記名記入を推奨(無記名記入は、随時書換え対象になりえます) {{comment}}