{{toc}} !オシリス-イシス神話 オシリス-イシスしんわ (Myth of Osiris and Isis) 暫定版 !記事内容追加調査中の暫定版です !PCが予め知ってていい情報  「[[オシリス|オシリス神]]と[[イシス|イシス女神]]の神話」は、あるいは、古代エジプトの神話の内、現代人にもっとも広く知られている物語かもしれない。  物語では、オシリス神の死と黄泉帰りを中核に、古代エジプト王朝の神話的な起原が語られている。  古代ローマのギリシア系宗教家[[プルタルコス]](プルターク)が、その著作『オシリスとイシス』で物語の概略を整理して紹介し、後世に伝えた。 !追加情報 :'''小辞典版推奨判定''':「表現+知性 目標値10〜12」「歴史+知性 目標値12〜14」 ::'''やや詳しい情報''' 「プルタルコスが紀元2世紀頃に紹介した『オシリスとイシスの神話』ですが、本来は複雑な物語が、かなり整理されて紹介されています。 :: おそらく、紹介されたような神話がエジプトで成立したのは[[新王国時代|古代エジプトの新王国時代]]のことと思われますが、神話に含まれている主要なエピソードの多くは、すでに[[古王国時代|古代エジプトの古王国時代]]の[[ピラミッド・テキスト]]などに見られます。 :: 当然のように異伝や、よくつながりのわからない関連エピソードが多数あります。古くはどのような神話物語だったかいろいろな推測説はありますが、[[定かではありません|定かでない]]。 :: おそらくは、死者の支配者であり、死者の来世への転生を司るオシリス神の地位が、どのようにして定まったかを語る部分が、古い部分と思われます。この部分は、農耕神としてのオシリス神の死と再生に太地母神としてのイシス女神が関わっているように思えます。しかし、そうだとすると、死と再生神話がどのようにして語られ現在のような物語になったのか、その系譜関係は、今一つ[[定かになっていません|定かでない]]。 :: 20世紀になって、新王国時代、[[第19王朝|古代エジプト第19王朝]]期の神話を記したパピルスが発見されました。 :: これは全長5mほどの長いパピルスの巻物に記されていました。こちらの物語は、同じようなエピソードの反復なども多いのですが、大筋は、プルタルコスの紹介紹介した物語よりもシンプルかもしれません。 :: プルタルコス自身、エジプトでオシリス神の[[密儀|密儀宗教]]に参与することを許されたことを、ほのめかしています。おそらくは、彼がエジプトで知った口伝の奥義なども併せて紹介したのだろう、と思われます」―― ''考古学にかぶれた民間伝承研究家'' :'''小辞典版推奨判定''':「表現+知性 目標値10〜12」「魔術+知性 目標値12〜14」 ::'''プルタルコスが伝えた神話の粗筋''' (プルタルコスは、以下の物語の神名をグレコ・ローマン神話の神名に置き換えて記した) :: [[太陽神ラー|ラー神]]は、[[天空の女神ヌト|ヌト女神]]に神の呪いをかけ、1年を通じて子を産めない体にしてしまった。そこで[[トト神]]は、暦に5日を追加した。そこでヌト女神は[[ゲブ神]]と交わり、閏日の第5日に、[[オシリス神]]、[[ハロエリス]](大ホルス)、[[セト神]]、[[イシス女神]]、[[ネフティス女神]]をこの順で産んだ。 ::(古代エジプトの古い暦は、太陰暦から発達したものらしく、30日×12月に5日の閏日を付け加えて365日にしていた。上は、ラー神がヌト神に360日間子を産めぬ呪いをかけ、その後トト神が1年を365日にした、という意味) :: 地上に降りたオシリス神は、人間に農耕の正しい方法と神々の崇拝を伝えた「善き支配者」となった。文字を発明した[[トト神]]に補佐され、最初に法律を定めたのもオシリス神だった。オシリス神の名声を妬んだ[[セト神]]は、オシリス神を殺害しようと罠を用意した。 :: ある日オシリス神を招いたセト神は、オシリス神をたぶらかし、オシリス神の体にあわせてしつらえておいた棺おけに神を入らせた。セト神は、棺おけの蓋を封じると、そのまま[[ナイル川]]に投じてしまった。オシリス神の妹神で、その妻になっていたイシス女神は、喪服を着ると、オシリス神の遺体を捜し求める。 :: オシリス神を封じた棺おけが[[シリア|歴史的シリア]]の[[ビュブロス]]に流れ着いたと聞いたイシス女神は、ビュブロスに赴いた。女神が、オシリス神の遺体をビュブロスからエジプトへ持ち帰ったと聞いたセト神は、イシス女神を襲撃すると、オシリス神の遺体を14、あるいは16に分割してエジプト各地にばら撒いてしまう。イシス女神は、エジプト各地を巡り、オシリス神の遺体断片を1つずつ集めていく。 :: イシス女神は、苦労してオシリス神の遺体断片を集めたが、ナイル川に沈んだペニスだけは、[[オクシリンコス魚]]が呑み込み回収できなかった。しかし、イシス女神は、[[ホルセイサ]](息子ホルス)を産み、オシリス神を黄泉帰らせる。復活したオシリス神は、死者の支配者として冥界に赴く。 ::(プルタルコスは、イシス女神がどのようにして息子ホルスを産み、オシリス神を黄泉帰らせることができたか「[[密儀|密儀宗教]]の神聖を侵すことになる」として、記していない) :'''小辞典版推奨判定''':「表現+知性 目標値10〜12」「魔術+知性 目標値12〜14」 ::'''第19王朝期のパピルスの神話粗筋''' この物語は、パピルスの冒頭部に欠損があり、語りだしがわからない。 :: オシリス神が、死者の支配者として冥界に赴いた後、オシリスの弟セト神と、オシリスの息子ホルス神との間で、王権の継承を巡る争いが起きた。どちらの主張が正しいかを巡り、[[ヘリオポリス9柱神]]が審議をする。 :: セト神とイシス女神がそれぞれに弁論し、審議は長引いて果てしなく続いた。神々の総意を受け、トト神が、母神[[ネイト神]]の意向を問うと、ネイト神は、「オシリス神の王権はホルス神が継承すべし」と告げた。これを聞いたセト神は怒り、イシス女神はますますホルス神を弁護した。9柱神は、審議をナイル川に浮かぶ島に移すことにする。 :: 一計を案じたイシス女神は、美しい未亡人の姿に変身すると審議の会場となった島を訪れた。セト神が美女の正体に気づかぬまま女神に声をかけると、女神はセト神に「夫が死んだら財産は息子のものになるか、他の男のものになるか」と問いかけた。セト神がうっかり「それは息子のものになる」と答えた瞬間、イシス女神は正体を顕し、9柱神は、ホルス神の王位継承を採決する。 :: 腹に据えかねたセト神はホルス神に挑戦し、2神は戦うが戦闘は長引き決着がつかなかった。戦闘の途中、ホルス神が両目を失い、ハトホル女神に癒されたりする。最後には、トト神が冥界のオシリス神に手紙を書き、王権をホルス神に委ねるのがオシリス神の意向と伝えられる。セト神もついに王権をあきらめた。 ---- :'''小辞典版推奨判定''':「魔術+知性 目標値12〜14」「表現+知性 目標値14以上」「歴史+知性 目標値14以上」 ::'''詳しい情報''' 「プルタルコスは古代エジプト神をグレコ・ローマン神の名に置き換え、エジプト神話の概略を伝えた。第19王朝のパピルスに記された物語は、ヘロドトスが伝えた物語の言わば続編にあたる。 :: オシリス神再生の物語が、ホルス神による王権継承の物語に発展した背景には、[[ヘリオポリス]]の神官団と、[[ヘルモポリス]]の神官団とが、[[中王国時代|古代エジプトの中王国時代]]に争った神学論争があったのだよ。この神学論争は、[[ヘリオポリス9柱神]]と[[ヘルモポリス8柱神]]の融合という型で収束していったのだが――何? オシリス-イシス神話の話をしろ?? だから話してるではないかね。これだから俗世間の人間は――ああ、わかった、わかった、せっかちな俗世の諸君に向けてはしょった説明をしよう。 *古王国時代の王宮神話では、当初[[ファラオ]]は太陽神たるホルス神の化身で「生けるホルス」と呼ばれた。{{br}}当時、王宮祭儀にも、すでにオシリス神を死者の支配者、イシス女神をその配偶神とする神話は組み込まれていた。{{br}}結果、王宮神話でもホルス神はオシリス神の継承者という神話が信じられていた。 *その後、エジプト王朝が発展すると、下エジプトのヘリオポリスの神官団とつながりが生じ、ファラオは、太陽神ラーの化身だ、との神話が公に説かれるようになった。{{br}}おそらく、この頃、オシリス神とイシス女神とが、セト神、ネフティス女神と共に[[ヘリオポリス9柱神]]に迎え入れられた。{{br}}ホルス神は少なくともこの段階では、ヘリオポリスの神学には迎え入れられなかった。 *中王国時代に、上エジプトのヘルモポリスの神官団とヘリオポリスの神官団との間に神学論争が生じた。この論争は、表面的には、ヘリオポリスとヘルモポリスのそれぞれでで伝えられた宇宙創世神話のどちらが信じられるか、という型で争われた。{{br}}付随して、オシリス神、イシス神と、ホルス神との関係に大きな変化も生じた。{{br}}と言うのは、ヘルモポリスでは、ホルス神はハトホル女神の配偶神と信じられると同時に、ハトホル女神は、イシス=ハトホルとして崇拝されていたからだ。結局、ホルス神は、イシス女神の息子にして配偶神ということになってしまった。{{br}}(実際、イシス女神は[[ホルスの息子たち]]の母神とされているし、[[ホルセイサ]](息子ホルス、幼児ホルス、ハレンドテスとは別の神)が怒りにまかせてイシス女神を強姦した、という神話もあるのだよ) :: 結局のところ、第19王朝のパピルスも王室の公式神話にすぎないのではないのかね? オシリス神話、イシス神話の秘伝は神殿の内奥で[[密儀|密儀宗教]]とともに継承されていたはずだと思うがね」―― ''結社をはぐれた魔術師'' :'''小辞典版推奨判定''':「表現+知性 目標値12〜14」「魔術+知性 目標値14以上」「歴史+知性 目標値14以上」 ::'''詳しい情報''' 「えー、神話の古い型と言えば、オシリス神を殺し、ホルス神と争ったのは、[[セト神]]ではなく、[[アポフィス大蛇|アポフィス]]だ、って異伝がありまして。[[一説に|一説に〜]]こちらの神話の方が古い、とする説もあるのですが、どうなんでしょうねえ? [[定かではありません|定かでない]]」―― ''考古学にかぶれた民間伝承研究家'' !GM向け参照情報  オシリス神とイシス女神の神話は、異伝や関連神話が多くて、もう、[[シナリオ]]では好きに料理してって感じです(笑)。  「セト神と争ったホルス神が目を失った」ってくだりがあって、解説記事にも織り込んでますけど。これとか、元々は、[[大ホルス]]が目を失うと日蝕や月蝕が起きるって神話が、オシリス-イシス神話に組み込まれたようです。  と、言うわけで、オシリス-イシス神話に採り込まれた神話エピソードまで関連神話に含めると、本当に収拾がつかなくなります。「アポピスとホルス神が争った神話」が古い、と言う説を[[定かでない]]として、疑問を示唆していますが。これも、「古いのは、アポピスがラー神の太陽船を襲う」物語で、オシリス神を殺害し、ホルス神に復讐を挑まれる物語は、やはりセト神の方が古い、という説もあるからです。 !リンク *[[小辞典]]{{br}}⇔ [[小辞典ワールド編]] !!関連項目 *[[イシス女神]] *[[オシリス神]] *[[ホルス神]] !!資料リンク *{{isbnImg('400336645X')}} *[[bk1の購入案内『エジプト神イシスとオシリスの伝説について』をみる|http://www.bk1.co.jp/product/1325848/p-sf0023]] !活用や検討 !!活用 !!検討 *検討の項は記名記入を推奨(無記名記入は書き換えられても仕方なし、ってことで) ----