{{toc}} !セミラミス (Semiramis) 簡易版 !簡易版です。気づいたとこの増補、改訂、優先に大歓迎。 !PCが予め知ってていい情報 *「判定処理なしに、PCが知ってることにしていい」情報とします。  セミラミスは、[[古代メソポタミア]]の伝説上のキャラクターで、実在した人物ではない、とされている。  グレコ・ローマンの[[古典古代|グレコ・ローマンの古典古代]]以来、[[ヘレネス]]や[[古代ローマ人]]たちは、セミラミスを過去に実在した人物と信じていた。いわゆる[[ヘレニズム期]]以降、セミラミスは「全アジアを支配した(ことがある)伝説的な女帝だった」と、信じられた。この場合、「全アジア」とは、「エジプトを除いたオリエント」くらいのイメージだっただろう。  こうしたセミラミス伝承は、長い間、ヨーロッパの文化エリートの常識であり、歴史書や文芸を通じて、一般にも知られていた。考古学が発展し、古代メソポタミアの研究が進んだ結果、20世紀には、セミラミスは伝説上のキャラクターで、実在した人物ではない、とみなされるようになった。  一方、[[西アジア]]では、アラブ人やアルメニア人などの間に、神話的になったセミラミスの物語が伝えられた。西アジアの幾つかの場所に、セミラミスを祀った祀堂などが遺っている。 '''【参照イメージ】''' *[[セミラミス|http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/6b/Semiramis-Regina.png]]{{br}}(18世紀のヨーロッパ人がイメージした「古代アルメニアのアマゾネス女王、セミラミス」,[[Wikimedia Commons]]) !やや詳しい情報 *「簡単な判定に成功すればわかる情報」とします。  歴史伝承では、「セミラミスは、ニネヴェを創建したアラブ人の王ニヌスの妃となった」と、語られた。ニヌス王も伝説上のキャラクターで、ヘレニスト・ユダヤ人(ギリシア語を[[母語]]にしたユダヤ系の古代人)たちによって記された歴史伝承で伝えられている。  伝承のある異伝は、「ニヌス王は、セミラミスの仇であり、ニヌス王が、全アジアを征服した直後に、セミラミスが毒殺して仇を討った」と、語っている。  多くのセミラミス伝承では、セミラミスはニヌス王との息子ニニュアスを産んだ、とされる。セミラミスがニヌス王を毒殺したプロットの物語では、「ニニュアスが、セミラミスに謀反を企て、セミラミスは鳩に変身すると天界に去った」と、語られている。 ----  後世、よく知られたセミラミス物語は、紀元前1世紀頃から紀元後4世紀頃にかけて、グレコ・ローマンの古代歴史家が著した歴史書に記されたものが、原形になった。  現在では、古代の歴史家が準拠したソースは、[[ベロッソス]]が紀元前3世紀初めに著した『メソポタミア誌』だったかもしれない、と目されている。『メソポタミア誌』原典は、まとまった型で伝わっていないが、古代文書に引用された断片には、セミラミスのことが、「人魚のような姿の[[シリア|歴史的シリア]]の[[女神デルケトー|デルケトー女神]]と、人間の男アスカロンとの間に産まれた娘だった」とする伝承が見られる。  「アスカロンは、産まれたばかりの娘を棄て、セミラミスは鳩に育てられた」と、伝承は続く。  ベロッソスの『メソポタミア誌』は、セミラミス伝承を記した書物の内、現在、遡れる最古のものと思われる。  時として、「セミラミス伝承はベロッソスの創作だった」と唱えられることがあるが、これは違うはずだ。なぜなら、ベロッソスに先立って[[ヘロドトス]]も「バビロンの門(イシュタル門)は、セミラミスの建造」との伝承を記しているからだ。  つまり、『メソポタミア誌』は、「セミラミスの生涯の物語」を記した古代文書の内、現在、辿れる最古の文書である可能性が大、ということだ。ベロッソス以前にも、西アジアでセミラミス伝承が語られていたことは確からしい。もちろん、当時語られていたセミラミス伝承が、ベロッソスが纏めたような物語であったかどうかは、別問題だし[[定かではない|定かでない]]。  紀元前後に活動したユダヤ人歴史家[[ヨセフス]]は、ニヌス王をユダヤ教聖典(『旧約』)が伝えた[[ニムロデ]]だ、とした。この、ニヌス=ニムロデ説も、後世まで強い影響力を示し、セミラミス実在説の論拠とされた。 もちろん、ユダヤ教聖典のニムロデの物語には、セミラミスは登場しない。ニムロデ伝承と関わったセミラミス伝承は、一種の聖典外伝承になる。  ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖典外伝承では、セミラミスは、しばしば「バビロンのセミラミス」と呼ばれる。この場合「バビロン」は、黙示文学などで語られる「悪徳の都市」のイメージであることが多い。ニムロデ王が、(ノアの箱舟の大洪水以降)歴史上最初の専制君主で暴君、とイメージされるのと対になり、「バビロンのセミラミス」は「歴史上最初に偶像崇拝を世に広めた悪の女帝」と語られることがある。  他方、古代アルメニア系の歴史伝承でも、セミラミスは実在の人物として伝えられていた。アルメニアの古代伝承は、ニムロデ王をアルメニア開祖の遠祖としているので、ある意味当然の展開と言える。  さらに、西アジアでは、アラブ人やペルシア人、チュルク系の民族などの間で、由来が忘れられた古代建築の遺跡の多くが、「セミラミスが建造した建物の遺跡」と伝えられた。例えば、アケメネス朝のダレイオス大帝が刻ませたベヒストゥン碑文は、長い間、セミラミスの銘文と信じられていた。バビロンのイシュタル門や、空中庭園もセミラミスの建造と、伝えられていた。 !さらに詳しい情報 *「難易度がある程度高い判定に成功すればわかる情報」とします。  「セミラミスは伝説上のキャラクター」であることは、現在、ほとんどすべての研究者が認めている。  しかし、「伝説のセミラミスにも、モデルとなった実在の人物がいたのではないか」との説は、現在でも唱えられることがある。  古くからの有力説の1つは、「[[新アッシリア時代]]の[[アッシリア王|古代アッシリアの王位]]、[[シャムシ・アダド5世]]の妃だった[[サンムラマト]]がモデルだった」と、する説だ。  この説は「『セミラミス(Semiramis)』のキャラクター名は、古典ギリシア語で伝わったもの」、と考え、「アッカド語形を推定復元すると『サムル-アマト(Sammur-amat)』だったかもしれない。これは、サムラマトのことだろう」と、する。  さらに、「アッカド語の『サムル-アマト(Sammur-amat)』は、『海の贈り物』の意味になるので、セミラミス伝承と符合する」とも言われる。  しかし、現在の歴史言語学が知る音韻変化では、「サムル-アマト」が古典ギリシア語で訛化しても「セミラミス」にはならない、とされ、サンムラマト・モデル説も否定されることが多くなった。むしろ、「サンムラマトをセミラミスと結びつけたいがための、語呂合わせ」と言われることが多い。  ちなみに、サンムラマトが、アッシリアで「海の贈り物」と呼ばれたかどうかは、知られていない。  他方、歴史言語学からの批判にはおかまいなしに、サンムラマト・モデル説や、サムル-アマト説は、さらに突飛な説の論拠にもされている。  例えば、「真の空中庭園は、バビロンにはなく、ニネヴェにサンムラマトが作らせていた(はずだ)」といった説だ。  あるいは、「サムル-アマトはサンムラマトのことではなく、シュメール文明を擬人化したもの」との説もある。この説は、「サムル」を古代ヘブライ語で記すと、ヘブライ語で「バビロニア地方」を意味した「シナラ(Shinar)」にあたる、という語呂合わせめいた論拠を持っている。 '''【参照イメージ】''' *[[セミラミス|http://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/e/ec/Shamiram_ara.jpeg]]{{br}}(近代アルメニアの画家 Vardkes Sureniants が19世紀末に描いたセミラミス,[[Wikimedia Commons]]) !GM向け参考情報 *GM向けの捕捉情報、マスタリング・チップス、アイディア・フックなど !!その他のセミラミス :「北方のセミラミス」: 「北方のセミラミス(Semiramis of the North)」は、14世紀〜15世紀のデンマーク王国の女王マルガレーテ1世が同時代に呼ばれたニック・ネーム。 :: 18世紀帝政ロシアの女帝エカチェリーナ2世も、同時代に「北方のセミラミス」と呼ばれた。 :584 Semiramis: 「584セミラミス」は、アステルロイド・ベルトを構成している小惑星の一つ。 :プログレ・バンド: 「セミラミス」は、1970年代に活動したイタリアのバンド。レパートリーは、主に、プログレッシヴ・ロックだった。 !リンク *[[小辞典]]{{br}}⇔ [[小辞典ワールド編]]{{br}}⇔ [[神話、伝説のキャラクター]] !!関連項目 *[[ニムロデ]] *[[ベロッソス]] !!資料リンク *[[Wikipedia英語版:Semiramis]]{{br}}[[Wikipedia日本語版:セミラミス]] !活用や検討 !!活用 *このページの記事を踏まえた、[[アイディア・フック]]、使ってみた[[シナリオ]]、セッション・レポ、などなど {{comment}} !!重要な改訂の情報 *内容に追加、変更があった場合のみ、でいいでしょう。{{br}}(誤字脱字の訂正や、文章を整える程度では記録不要) {{comment}} !!検討 *このページの記事内容についての質問、重要な疑問、改訂の要望など *検討の項は記名記入を推奨(無記名記入は、随時書換え対象になりえます) {{comment}}