昔々魔法使いの国があった{{br}} 魔法使い達は競ってダンジョンを作り その魔力や権力を誇示した{{br}}  しかしある時アルファドという盗賊が現れ{{br}} 次々にダンジョンに忍び込んでは 隠された宝をかっさらっていった{{br}}{{br}}  アルファドとは何者なのか{{br}} ダンジョンを空っぽにされた魔法使い達は顔をつきあわせ話し合った{{br}}{{br}}  アルファドは反逆の魔術師だ{{br}} なぜなら魔法で閉ざした扉や幻影で隠した階段をも 暴き出して突破してしまうのだから{{br}}  アルファドは熟練の盗賊だ{{br}} なぜなら巧妙にしかけた罠や仕掛けをも 解き明かして突破してしまうのだから{{br}}  アルファドは屈強な戦士だ{{br}} なぜなら番人としておいた魔獣や魔法生物をも 組み伏せて突破してしまうのだから{{br}}{{br}}  アルファドが持つという 変幻自在に形をかえる短剣『森妖精の指』のごとく{{br}} 得体の知れぬ盗賊は 魔法使い達より“魔盗”の名を与えられた{{br}}{{br}}  魔法使い達は“魔盗”アルファドを捕らえるべく{{br}} より強い魔術 より強い罠 より強い番人を ダンジョンに配置した{{br}} それはプライドを傷つけられた魔法使い達の意地であった{{br}} 本当に宝を隠したいのであれば ダンジョンを破壊して地中深くに埋めてしまえばいい{{br}} それをしないのは ダンジョンそのものが芸術品であり{{br}} その芸術が功を奏して 志半ばに倒れる愚かな挑戦者を嘲笑い 悦にひたりたいからなのだ{{br}}{{br}}  しかし いかに強い魔法 いかに強い罠 いかに強い番人をも{{br}} “魔盗”アルファドをねじふせるにはいたらなかった{{br}} かえって“魔盗”アルファドの盗みの技をより鍛える役に立っただけだった{{br}}{{br}}  奴隷とされていた魔法を使えない人々は “魔盗”アルファドの活躍を聞き喝采を送った{{br}} 己が神であるかのように振舞う 傲慢な魔法使いども{{br}} その鼻柱をへしおってくれたと{{br}}{{br}}  さらに強い魔法 さらに強い罠 さらに強い番人を!{{br}} 今度こそあの小憎たらしい“魔盗”アルファドを{{br}} 奴隷どもの“心の英雄”の座からひきずりおろしてやる!{{br}} 魔法使い達は研究に研究を重ねた{{br}}{{br}}  しかしいつしか“魔盗”アルファドは 姿を見せなくなった{{br}} 魔法使いの知り至らぬところで 力尽き倒れたのか{{br}} それともダンジョンを攻略するのに飽きてしまったのか {{br}} 謎のままに消えた“魔盗”アルファド{{br}} しかし奴隷達はその者の名を語り継ぎ 心の中から消すことはなかった{{br}}{{br}}{{br}}{{br}} 【註釈】{{br}} “魔盗”アルファドは古代王国期に活躍したダンジョン荒らしであり、{{br}} 現代における冒険者の先駆者のひとりと言われています。{{br}} (正確には三人組であったらしいことが最近明らかになりました){{br}} そのため、冒険者の間では比較的知られた存在です。{{br}}{{br}} <発案者:ステイシス>