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メタエレメント -異能-

メタエレメント、とは

 そもそもエレメントとは、能力の適用範囲を狭くすることによって、行為ロールに数値的ボーナスをもたらすものである。ところで、月夜埜綺譚のゲームにおいては、レイズによって超自然的な成功すらも保証している。このとき、エレメントは成功確率を上げることで、超自然的な様々な事象を起こしうる力をプレイヤーキャラクターに与えているのである。

 さて、メタエレメントとは、プレイヤーキャラクターが持つ、社会的に忌避された超自然的な能力を示したものである。

 上述の記法に従うなら、能力の適用範囲をさらに(ほとんど一義的に)狭くすることによって、レイズ?抜きである程度の超自然的な成功を引き起こすもの、と定義できる。

 現行バージョンでは曖昧だったが、「続」においては、メタエレメントはまずこのように定義される。

(日本語に翻訳されていたシャドウラン(2版なのかな?)の「集中化」「専門化」に概念としては近いかも知れない。しかしそれが内在的な能力としてではなく、「外に向かった表現」そのものとして記述されるのが月夜埜綺譚の特徴といえる。)

異能をルール化する上での基本的な考え方

 自由に想像の羽を広げるためにはルールが必要である。すぐれたファンタジーメイカーたちが、数学的とも言える極めて精緻な世界観を持っていることは、その一つの傍証であろう。この作品で、そう言うあからさまに優れた作品の後を追うことは難しいけれど、月夜埜綺譚の異能というコミュニケーション様式において、いくつかの基本となる法則を明示しておきたい。ところでルールさえあれば、あとは好きに出来る。という考え方は、どことなくTRPG自身にも通じているように思う。

異能の段階

 異能は以下の段階を経て深化していく。

  1. 感覚
    • コミュニケーションに関係する、それでいて多くの人がノイズとして無意識化に落としてしまっている、何らかをそもそも感じ取ることが出来るという能力。ゲーム的に能力化する場合は、当然、その解釈をどの程度実用出来るかが問われることとなるが、おおむねキャラクターのスキルの値で代用させる。
  2. 遮断〜接続
    1. 遮断
      • 上記で得た「感覚」を操作可能にする方向性の一つで、流れのようなものを阻害するイメージを持つ。“結界”のような場を区切る能力に端的に表され、分断、区切ること、守ること、などを意味する。プリミティブな感覚の遮断から、生命線の切断(直死の魔眼とか?)までに通じる。遮断の行き着く先は絶対の孤独であろうが、もちろんそれは人間には不可能な世界である。
    2. 接続
      • 上記で得た「感覚」を操作可能にする方向性の一つで、違う向きにある流れを繋げるようなイメージを持つ。“心話(テレパシー)”のような交流的な能力に端的に表され、共感、繋ぐこと、発見すること、時間の超越、などを意味する。携帯電話的な遠隔通話手段から、「希望」のような絶対的な感覚の共有までに通じる。接続の行き着く先は個性というものの喪失だろうが、これもまた様々なものが許さないだろう。
    3. その遷延性
      • 「接続」と「遮断」は表層的になればなるほど対立概念として現れ、深層的になればなるほど同一化していく部分を持つ。そして「接続」と「遮断」の間には無限の段階が存在する。ともあれ量子論ではないけど、その行き着く先はほとんど同じような場所だ。ともあれ、おおむね異能は「感覚」の向こうに「接続」「遮断」という色づけを持つこととなる。
  3. 侵襲
    • これは「接続」と「遮断」の向こうで、相手をある意図に沿って変えてしまうことを意味する。相手を傷つけてしまう「手からビーム」の類がそれらを代表するだろうか。後にも述べるが、この侵襲というやつは、術者の意図するしないに関わらず発生する。そして上記の手順を踏めばそれはより技巧的に、飛ばせばより暴力的になるとほぼ決めることができる。もっとも「接続」「遮断」とそれほど位置が遠いわけではない。あくまでルール的な区分である。

異能の制定の基本則

  1. 高度な「侵襲」には「感覚」〜「侵襲」への手順を必要とする。
    • すなわち「感覚」タイプの異能の取得、それを拡張する(すなわちある種の感覚を取得条件とする)「接続」「遮断」タイプの異能、そして「侵襲」タイプの異能を全て取得しなければならない。さらに条件が加わったりする。旧版にあった<記憶操作>などの高度な異能がここに属す。
    • 同時に、メタエレメントには(一部のメタコネクションにも)明確な取得順序が存在すると言うことを直接意味する。
  2. 感覚を経ない「接続」「遮断」は、操作している主体を操作者自身が自覚し切れていない留意を必要とする。
    • ルール的には第一に、高度なタイプの「侵襲」型の異能の前提にしてはいけない、ということが言える。もっとも攻撃などのような低位なタイプの「侵襲」型には直接つながるものかも知れない。
    • 調査の主体ではなく、行為に置いてしか用いることが出来ない。あたりまえか。
  3. 「感覚」「接続」「遮断」を経ない「侵襲」は、文字通り侵襲的にしか働かず、また使用に際し危険が生じる。
    • 感覚などを経てくる侵襲は、どちらかといえば「操作」かもしれない。前提を経ていない他者を変化させる因子は、わけのわからないエネルギーをただ抱えていることとほとんど同義である。
    • ルール的には、高度な操作的手法に使えないことを明示するとともに、その代償・コストなどが跳ね上がることで表現する。またなんらかのアクシデント可能性を留意しても面白いかも知れない。

異能の制定の基本則2

 上は異能そのものの区分わけだが、対象においても区分しておく。ただし「感覚」〜「侵襲」が直線的な関係を持っていたのに対し、こちらは三角形を描く。それぞれはある程度相補的に働くため、ルールの制定以外では以下を強く意識することはないかも知れない。

  1. 個体
    • 人間一人である。前提として自分か他人かはわけられるだろうが、いずれにしても拡張の手段がレイズしかない以上、自他の差はあまり無い。ただし戦闘では複数攻撃があるため、戦闘においてだけはルールを明記しておく必要があるだろう。
  2. 領域
    • 場に対するもの。人間が複数か個体かは関係しないが、いずれにしても異能なので対象者は人間である。攻撃等なら、エリア攻撃魔法もここに含まれるわけだが、当然、味方と敵を区別する手段はレイズ以外には用意しない。
  3. 時間
    • 領域が現在的な横の広がりだとすれば、時間的な縦の広がりに対して作用するのが「時間」である。ある種の幽霊を見る能力などは、この時間的異能ととらえることが出来るだろう。また、人間ではない擬似的な意志を有する存在「魔」は、SF的な設定としては“時間”が我々の世界とずれた存在である。ずれた時間を調律することがすなわち「魔」とのコミュニケーション手段そのものであるため、勢い「魔」に絡む異能は常に“時間”と接することとなる。

異能の制定の応用則(BetandRaise?による拡張)

 今回の版では、異能のBetandRaise?は戦闘進行と同じようにある程度ルール的なくくりで縛られることとなる。すなわち“レイズ表”を用意するわけだ。このレイズ表をどのようなくくりで用意するかについて、以下のルールを前提としてデザインしたい。

※補足だが、レイズは現実を超越するものとしてデザインされるものなので、前節で述べたような前提も超越してかまわない。たとえばイヤボーン的な攻撃的にしか用いられない異能で、人の記憶を操作してしまうような奇跡を起こしてもよい。ただしそれには、それなりのレイズ段階を必要とする、という限りに置いて。

  1. 異能が属する領域のレイズ拡張
    • たとえば「感覚」なら「感覚」の範囲で、効果が拡大すること。なにげに一番わかりやすい例はクリティカルヒットの類だろう。
  2. 異能が隣接する領域へのレイズ拡張
    • たとえば「感覚」なら「接続」「遮断」へ。2段階うつるためにはレイズも2段階必要となる。レイズを2段階使えば、イヤボーンな異能で、誰かの囁きに耳を傾けることも出来るわけだ。