!月夜埜綺譚の世界、とは  月夜埜綺譚の、ブック版の最大の売りに違いない、あの緻密で膨大で偏執狂的で時代遅れかも知れない、そして他のシステムにも十分使用可能であろう、ワールドガイドである。  これはTRPG界で、日本の郊外を遊ぼう! とするときの、現在のところ最大の資料集ではないか、と勝手に自負している。 (ということは、「クトゥルフの呼び声」で現代日本を舞台とするときにも最適かも知れない。と思うのは、月夜埜綺譚はこと“郊外を舞台とする”という点で、「クトゥルフの呼び声」の思想的な子孫であると自負するからでもある。そしてスティーブン・キングの作品が、やはり多く郊外を舞台とすることにも思いをはせてみたりする。) !月夜埜市  東京から電車で約二時間弱。神奈川県の西北部に属す典型的な“衛星都市”。あけぼのニュータウンという少し古ぼけたニュータウンがあったり、月夜埜副都心計画という大規模なビル群誘致などが行われたりしているが、いまいちぱっとしない。 !精神論? その他 (なにしろ、郊外の街を描くのに、デザイナーがこれほどまでに徒歩で歩き回った作品は他にあるまい。その実歩距離は100キロや200キロじゃきかない。というかどのくらい歩いたかよくわからない(笑)。まあ月夜埜綺譚をデザインするためだけに歩いていたわけじゃないが。)  もっともあらゆるTRPGの世界がそうであるように、世界はまずルールとして表現されていなければならない。逆に言うと、ルールは世界を図らずも表現してしまう。ので、ワールドガイドは、ルールに書ききれない暗然たるルール系であるとともに、妄想喚起力の高いフレーバーワード群、またシナリオフックでなければならない。  で、ブック版の「月夜埜綺譚の世界」も、上のようなことを目指してみた。どのくらい成功しているかはプレイヤー諸氏に任せるけれど、そんなわけで月夜埜市はダムから廃墟、都会から郊外、田舎まである様々に違和感に満ちた世界となった。具体的な地形としては町田市や相模原市をベースとしているのだけど、雰囲気としては、港北ニュータウンのある横浜市北部に近い。といっても、住んでいない人にはわかりにくいたとえかも知れないけど。 (とりあえず月夜埜市を作りながら思い出すのは、遊演体の「那由多の果てに」の舞台となった“波津野市”である。これはもともと遊演体が神奈川県秦野市にあったところから、名前をもじって舞台として選ばれたらしいのだが、いったいどんな世界だったのだろう。僕は結局参加できなかったのだ…。{{br}} 秦野はまた、月夜埜市のイメージとして多くを借りている場所である。月夜埜市に大山(秦野市にある名所。大山阿布利神社のご神体であり、関東三大不動の一つ大山不動尊などを持つ。)のパロディを作ればよかったかなあ、と悩むどころでもある。{{br}}…ちなみに現在、遊演体は厚木市にある。)