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食料生産地

食糧生産地
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設定に活かされる要点・食料・育成中の食料・生産地で働く国民
周辺環境食糧倉庫・食糧生産に向いた地形

設定要点:育成中の食料

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周辺環境&設定要点:食料生産に向いた地形&生産地で働く国民

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設定要点:食料

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周辺環境:食料倉庫

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○解説

ほねっこ男爵領における主な生産作物は小麦である。
秋ともなれば、南部の小麦畑が黄金に波打つ様を目にする事が出来る。
清らかな水と、(少なくとも春から秋にかけては)穏やかな気候が、
小麦の育成に適しており、数少ないほねっこ男爵領の輸出品目にその名を連ねている。
秋に収穫された小麦は、粒のまま倉庫で冬を越し、春に出荷される……筈だった。

そこに今回、わんわん帝國からの食料増産命令が下った。
幸い、倉庫の中に他国への出荷用の小麦が山と積んである。
問題は、小麦という穀物はそのままでは食用にはならないという事であった。
稲のように、精米してそのまま煮れば食べられる、というわけにはいかない。
収穫したら製粉し、そこから更に何がしかの加工を加えて、初めて小麦は食用たる。
故に、そのままでは倉庫の中の小麦は食料としては使えない。
さて、どうしたものか。

「……パン工場だな」
「パン工場ですか」
「ああ、パン工場だ」
「……は、では、そのように」

そういう事になった。

これは一見思いつきで決めたように見えるが、それ相応に理由がある。
何よりまず、パンは温めずとも食べられる。
携帯するのに、必ずしも缶詰にするなど加工する必要が無い。
焼き締めて作れば、スペースも取らない上に、保存期間も長くなる。
更に、甘いものにも、塩気のあるものにもあわせられる。
まさに、戦時下の食事に適した食材だと言えた。

「品質は極力上げるように」
「全力を尽くします」

与えられた条件下で、僅かな時間に最善手を模索し、更に民への配慮を忘れない。
平時、如何におちゃらけていようとも、火足水極が男爵代行足りえる理由が、其処にあった。

製粉施設を備えたパン工場の建設は、最も高い優先順位を与えられ、急ピッチで進められた。
ありとあらゆる行政的横車を押し、コスト比という言葉が馬鹿馬鹿しくなるほど、
全てが建設速度と工場というシステムの質を高める事に注ぎ込まれる。
豪雪地帯であるほねっこ男爵領の冬に、何かを建設するという事、
それ自体が無謀と言って差し支えない試みである事は、もはや誰も問題にはしない。

藩国国民は冗談混じりに、春が来る頃には、
男爵領はパン工場で埋め尽くされているだろうと笑いあった。
政庁に勤務する担当者も、さも可笑しい冗談だと言うように笑った。
春が来る頃には、男爵領にパンという新たな名物が生まれているだろう、とも言った。
こちらの方は、少なくとも政庁勤務の者は冗談にする気がないようだった。

そして、幾多の困難を乗り越え、パン工場は完成した。
冗談の種にしていたものも、思わず、ほう、と感心のため息を漏らした。
雪を背に棟を並べて建つそれは、
下手な軍事施設よりも、よほど頼りがいのありそうな威容を誇っていた。
そのため息を聴いた担当者が、会心の笑みを浮かべる。
まさにこれこそが、窮乏と言う名の敵から、民の生活を守るためだけに造られた砦。
戦争と言う理不尽に膝を屈しないと言う、弱小藩国の意地と誇りの結晶だった。

パン工場は設備が完成した次の日には、稼動を開始した。
華やかな式典は無用。藩国重鎮の視察のためのお披露目も不要。
工場はただただ正しく、効率的に機能することだけが求められた。
倉庫に運び込まれる山のような小麦の袋。
この日が来るのを、今か今かと待っていた、工場員たちの人の波。
工場員たちの中には、多くのパン職人が混ざっている。
この工場が稼動し始めたら、藩国内のパン屋は軒並み失業。
だったら、そのノウハウを藩国営パン工場に活かして欲しい。
ゆくゆくは、ほねっこ男爵領のパンは帝國随一だと、あっと言わせてやろうじゃないか。
彼らはそんな風に掻き口説かれた人たちだった。
間違っても、藩国のために耐え忍んでほしいなどと言わない辺り、担当者の面の皮は相当厚い。
しかし、その説得に乗る辺り、ほねっこ男爵領の人々はずば抜けて暢気なのか、或いは豪気なのか。
もしかすると、その両方なのかもしれない。
 
工場員が仕事場につくと、工場に生命が吹き込まれる。
小麦は次々と製粉され、やがて辺り一帯に、パンの焼ける良い匂いが漂い始める。
出来上がったパンは、冷めるのを待ってから包装され、倉庫に一旦備蓄される。
後日、充分に数が揃ったら、新たに備蓄されるパンと入れ替わりになる形で、
各家庭に配給される事になっていた。
パンは日持ちがする事と、味が落ちない事を最優先とされ、
相変わらずコストは度外視されていた。

男爵代行火足水極は、自らを小心者だと任じている。
美人で気立てが良いと評判の書記長さんの怒りが恐ろしく、
尻に噛み付いてくる王犬じょり丸の牙が恐ろしく、
冗談を外した時の部下の冷ややかな視線が恐ろしく、
戦争の足音が恐ろしく、戦争の招く死が恐ろしく……
民の失望の声を聞くのが恐ろしかった。
民の嘆きの声を聞くのが恐ろしかった。
何よりも、民の声が聞こえなくなるのが、恐ろしかった。

だから、戦争と言う状況下でも、出来るだけ美味しいパンを、
必要な時、必要なだけ藩国民に届けられるようにした。
建前は帝國からの食糧増産計画に応えるためであったが、戦争が始まるとなれば、
何時か必ず同じ事をしたに違いないと言うのが、側近の部下たちの言い分だった。
そしてその言葉は、真実のど真ん中を射抜いていた。
まさかこんな良いタイミングで帝國から話が来るとは思わなかった。
助成金まででて、本当に俺は運が良い、とは藩王の言葉である。

そして、今、小心者の男爵代行は、ささやかな役得に与っている。
目の前には焼きたてのパン。
パン工場で一番最初に焼き上がったパンだった。
まずは、ぱくりと一口。
もぐもぐと口いっぱいにパンを味わい、ごっくんと飲み下す。
破顔一笑。

「美味い」

この日、ほねっこ男爵領において、藩国営のパン工場が完成した。
更新日時:2007/01/25 00:06:17
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