高位北国人+名パイロット+黒い舞踏子+ブリザードパイロット
高位北国人+名パイロット+黒い舞踏子+ブリザードパイロット:SHQ
高位北国人+名パイロット+黒い舞踏子+ブリザードパイロット
名称 | 高位北国人+名パイロット+黒い舞踏子+ブリザードパイロット |
要点 | 涼しげな服装,白い肌で美しい人材,白い髪,頭環,略帽,イエロージャンパー,航空用腕時計,細い手足,宇宙軍制服,黒い肌,星の瞳,逆立ち,見えそうで見えない下着 |
周辺環境 | 雪の中の王宮,コクピット,船内,ゲームセンター |
評価 | ・体格6,筋力7,耐久力6,外見9,敏捷6,器用5,感覚8*,知識5,幸運2 |
特殊 | *高位北国人の人カテゴリ = ,,高位人アイドレス。 |
*高位北国人の根源力制限 = ,,着用制限(根源力:25001以上)。 | |
*高位北国人のイベント時食料消費 = ,条件発動,(一般行為判定を伴うイベントに参加するごとに)食料−1万t。 | |
*名パイロットの職業カテゴリ = ,,派生職業アイドレス。 | |
*名パイロットの位置づけ = ,,パイロット系。 | |
*名パイロットのパイロット資格 = ,,搭乗可能({I=D,RB,航空機,水上艦船,宇宙艦船})。 | |
*名パイロットの搭乗戦闘補正 = 搭乗,条件発動,({I=D,RB,航空機}に搭乗して、戦闘する場合での)全判定、評価+1。 | |
*黒い舞踏子の職業カテゴリ = ,,派生職業アイドレス。 | |
*黒い舞踏子の位置づけ = ,,{パイロット系,コパイロット系,舞踏子系,義体系}。 | |
*黒い舞踏子の性別制限 = ,,着用制限(性別:女性)。 | |
*黒い舞踏子のパイロット資格 = ,,搭乗可能(I=D)。 | |
*黒い舞踏子のコパイロット資格 = ,,搭乗可能(すべて)。 | |
*黒い舞踏子の搭乗補正 = 搭乗,条件発動,(I=Dに搭乗している場合での)全判定、評価+3。 | |
*ブリザードパイロットの職業カテゴリ = ,,派生職業アイドレス。 | |
*ブリザードパイロットの位置づけ = ,,パイロット系。 | |
*ブリザードパイロットのパイロット資格 = ,,搭乗可能({戦車,I=D,航空機,RB,宇宙艦船,水上艦船})。 | |
*ブリザードパイロットの搭乗戦闘補正 = 搭乗,条件発動,(乗り物に搭乗して、戦闘する場合での)全判定、評価+2。 | |
次のアイドレス | 呪術師(職業),吟遊詩人(職業),船乗り(職業),藩王(特別職業),小さい舞踏子(職業),金髪舞踏子(職業),ホープ(職業),エリザベス・リアティ(ACE),ジジとその飼い主(ACE),超大型I=Dの開発(イベント),ウイングオブアジア(ACE),ヤバイ医薬品(アイテム),ブリザードアイ(職業),雪の魔女(職業),牧原輝(ACE),ブリザードマシンの開発(イベント) |
*SHQボーナスによる感覚+2を反映済み
設定文あるいは後ほねっこにおける日常の一幕
六つ斑飛行場の近く、稼業を終えたパイロットや整備士たちが集まる店がある。 ネオンと言うには慎ましい看板が点滅し、アスファルトをピンクや青に染めている。 「えっと、ここで良いのかな?」 たらすじは軽トラックの荷台から降りると、ローブのフードを跳ね上げる。 ぶんぶんと頭を振って灰色がかった白い髪を整える。 空色をした瞳が何となく不安げにその店をのぞき込んだ。 「航路さーん、歓迎会の集合場所……。ですよね、ここ」 答えるように軽トラックがばうんとはね、ぷしゅうと排気を漏らした。 そして、ドアが開きごろごろと転がりだしてくる有象無象。 「ぎゅむー、シートに乗ってたのに荷台のジャガイモみたいな心持ちですよう」 海の色の瞳、人の良さそうな魔法使いが立ち上がって土埃を払う。いも子である。 「む、く。飛行場の備品予算、そんなにけちってないのになぁ」 黒みがかった銀色の髪から埃を落としくしゃみを一つ。これはヤサト。 「ご、ごめん。車がまさかこんなにひどいとは」 運転席から降りてきたのは、2人とは異なるイエロージャンパー姿の航路。 航空用腕時計を見やると予定時刻の3分前、ギリギリセーフと言ったところ。 「書記官さんがいってたのは、このゲームセンターだと思うけど……」 そう言って4人は店に足を踏み入れた。 真っ先に気がつくのは、雑多な喧噪、耳を聾する電子音である。 どうやら間違いはないようで店の中には幾人も略帽やイエロージャンパー姿のパイロット達がいる。 壁際にピンボールが4つ、奥には三面連結モニタの大型筐体にレースゲームが並んでいる。 クレーンゲームやコインゲーム、プリクラなどは一切ない。 ついでに言うなら、色っけもにぎやかさもない。 世にはアミューズメント・センターなどの言葉もあるというのに、真っ向昔懐かし、ちょっといかがわしのゲームセンター。 いわゆるゲーセンだった。 「あ、『式神の城III』が稼働してるー」、「へー50円台なんてあるんだ」 置いてあるゲームの年代は幅広く、20年前のゲームすら現役稼働だった。 シューティング、アクションが多く対戦格闘は少なめ。 見れば壁には各ゲームのハイスコアが記されている。どうも月間で集計しているらしい。 眺めているうち航路はあることに気がつく。ランカーの名前に見覚えがあった。というか、これはコールサインである? 「ASIAって亜細亜ちゃんだよね?」「じゃあ、この最上位を独占しているFBKって、吹雪先生?」 「正確には、吹雪先生の奥さんだがな」 疑問に答えたのは、ほねっこの古強者Millbackだ。日に焼けた肌でにやりと笑う。 「あの車で無事たどり着けたか、おみごと」 と、ちょうど店の奥、パイロット連中がたむろっている一角で歓声が上がる。 どうやらケリがついたな……。 そう呟くとMillbackはたらすじ、航路、いも子をぐいぐいと引っ張ってゆく。 奥にあるのは、シートのついた大型筐体だった。 2台並んでおり、壁の大型スクリーンに画面が映し出されている。 到着した仲間を認め、藩王火足水極はにっかと笑って手を振った。 「よーう! 間に合ったな。これなら、歓迎会の前にランキング作れそうだ」 どーんと爆発音がして、大型筐体がゆれ、中からユーラが放り出されてくる。 ご丁寧だかなんだか、とんがり帽子をかぶせられ首からは“脳みそ半分飛びましたー”とカードがぶら下がっている。 「は、藩王。これ、実戦よりも難しくないですかっ!」 「ふふふ、星鋼京のI=D博物館で試作されてるの借りてきた特別製だからな。 筐体は実機のコクピットをそのまま利用し、描画エンジンや感覚フィードバックはシミュレータに手を入れた究極のゲームマシン! 子供の頃の夢今ここに、大人の力で復活! これが本当の大人買いってヤツだっ!!」 返答に困る航路、たらすじ、いも子。だからどーしろと? 「というわけで、歓迎会の前に各人の腕前を披露してもらおうっ! ふふふ何人生き延びることができるかなぁッ。規定点数に届かなかったヤツは航空基地で一週間の集中訓練をプレゼント!」 「「えええええ〜〜〜ッ!」」 「そ、そんな。よりによって12ターン対応でパイロット外しているときにこんなことやんなくたってッ!」 だがしかし、藩王の命令は絶対。 こうして強制訓練にかり出されるか否かのデスゲームが始まった! 「ぎゃぼー」ヤサト、3面のほねっこ攻防戦にて撃墜。 「うぎゃー」たらすじ、3面の対白オーマ戦にて撃墜。 「わーん」いも子、同じく白のボラー戦にて撃墜。 「どうしたどうした! 根源力即死がないんだぞう、良いとこ見せてみろ!」 当時ボラーを見ただけで撤退した藩王が言えた台詞ではないのだけど調子に乗った馬鹿は止まらない。 まして、アーケードゲームのシューティング・ゲーム、3面以降は難易度が上がるのである。 「くっ、さすがにこれはッ!」航路、4面ダンジョンでダンボール無双中にエネルギー切れ。撃墜。 「っと、ケントなんて久しぶりだ」Millback、5面宇宙戦にて撃墜。 「ははは、どうしたどうした? だらしないぞみんな!」 自分が勝ったわけでもないのに勝ち誇る藩王、三下悪役ムーヴが板についてしまっている。 設定国民に見られたなら、それだけで国民流出が始まりそうな勢いである。 『……駄目だこいつ、早くなんとかしないと』 誰もがそう思った時、バンと店の扉が開いた。
その数は3人。 色鮮やかなイエロー・ジャンパーに濃紺の宇宙軍制服。 しかし、カスタムにカスタムを重ねた制服はもはや、本来の目的。画一化された威圧的なシルエットを備えていない。 裾の各所にレースをあしらい、上着と言うよりもビスチェというのがふさわしい。 しなやかな肢体がえがく美しい稜線、それを鋭角に彩る装いはあくまで挑発的。 「これ以上馬鹿な振る舞いは、たとえ藩王と言えど許しません」 短く切りそろえたプラチナブロンドに白磁の如き肌、その下から覗く頭環は高位北国人の証。 ショートパンツのボーイッシュな姿は凛々しく可憐。 「くーるしゅーたー、深夜。見参」
「しばらく秘書官業務で留守にしてたら……さぁ、どうしてくれましょうか?」 ウェーヴした髪を掻き上げ、ぎらりと目を光らせる。黒ストはデキる女の証。 「ひーとぶらすたー、南天。推参」
「え、えっと、無理を言うのは良くないんじゃないかと」 あふれる黒髪にちょこんと略帽を乗せ、かなり恥ずかしそうにもじもじしながら登場したのはニーソックスの後藤亜細亜。 問答無用、後ほねっこ男爵領のヒロインである。だが、何か言いかけて、口ごもる。 「ほら、亜細亜。教えたでしょう? 決める時に決めるのがヒロインってものよ! いいからやってあげなさい。ここは紳士の社交場、ルールを守って楽しくゲーム……」 うしろから、声を掛けるのはほねっこ最強の存在、吹雪先生の奥さんである。 「く、くいっくさんだー、亜細亜。参上」
そう言って真っ赤になる亜細亜。 そして後ろで満足げにうなずく吹雪先生の奥さんは、びしいっ、と火足水極を指さし言った。 「コイン一枚の前には地位も名誉も関係ないっ。 国王相手だからといって、弾のスピードが落ちる? 自機のボムが増える? 残り時間が増えたりする? しないわ、それが紳士の社交場ゲームセンターの掟。 そこにパワハラを持ち込むなんて、たとえ天が許しても私が許さないッ!」 「ああっ、あれは!」 「み、ミセス・ブリザードッ!」 「この間、50円三枚で3時間粘ってハイスコア全部書き換えていった!」 「ショットボタンが連射に耐えきれず砕けたって言うぜ」 「定規つかって連射してたヤツがフルボッコにされたって」 「やり過ぎてほねっこ城市のゲーセンすべて出禁になったんだろ」 「だから、こんな地の果てまで」 「かわいそ「ぐべらっ……!」 丁寧に紹介してくれたパイロット達、最後の言葉が不明瞭だったのは投げられた椅子を顔面でキャッチする羽目になったからだ。 『だれか吹雪先生に言いつけたほうがいいのでは』 摂政ユーラは言葉を飲み込む。その思慮が彼をここまで命長らえさせてきた。 だが、摂政という外付け良心の沈黙が馬鹿の増長を導く。 「ほほう、奥さんといえども藩王に向かってそのもの言いは無視できませんな? これはパワハラではありませんよ。そう、いうならば友愛のためのテストです、テスト。 いかがですかな? 一勝負」 「だ、だめだ。みんなっ…!」 航路が叫ぶ。 「このゲーム、普通のゲームじゃあ、ない! 途中から、敵の量がッ」 吹雪先生の奥さんはフンと鼻を鳴らす。 「その程度の勝負、あたしが出るまでもない。 あたしの弟子達“ブリザード・パイロット”なら、あのおとなしい亜細亜だって勝てるわ」 (注:ブリザード・パイロットは奥さんからの派生ではありません) 「えええええっ! そ、そんな?」 驚く亜細亜。 「いえ、亜細亜ちゃんが出るまでもないわ。 あの馬鹿藩王には少しばかり熱いお灸を据えてやる必要があるわね」と南天。 「南天さん、この責任まずは留守を預かっていた僕たちに任せてください」 すっくと立った深夜が筐体の前に立つ。 ちーん、音を立てて弾いたコインが、すっぽりと投入口に吸い込まれ「Player 1」と表示が出る。 「勝負です、藩王!」 「む、地上面であえて機体はケントを選ぶ?」 「高速一撃離脱機体で市街戦をクリアする気か?」 一面は地上戦、高速機体の取り回しは困難。そのはずだった。しかし、 「な、なんて精密な操作なんだッ!」 「あの猛攻に全然ひるむ様子がないぞ?」 「まるで精密機械だ」 「つ、冷たい。機体の動きに迷いもためらいもないっ?」 「いや、でも」たらすじが呟く。 「ここから、地獄が……!」 「「こ、これはっ!」」 お前らパイロットやめて解説で飯を食えとツッコまれそうなくらい息のあった掛け合いを続けていたギャラリーが息を呑む。 弾が六分、敵が三分、でたらめといっていい画面である。無理だ、誰もが思った。 「できるわ、ブリザード・パイロットなら」 にやりと笑う吹雪先生の奥さん。そのときギャラリーは信じられないモノを見た。 「ああっ、深夜が逆立ちしているッ!」 「なんであんな無理のある体勢で?」 「待って、あのジョイスティック捌きは」 「そうか、体重移動だ? 全身の体重移動がスムーズな機体操作を可能にしているッ!」
一つ、二つ、三つ。着実に敵を落としてゆく。 深夜、ブリザード・パイロットの面目躍如といったところである。 だがしかし、火足水極は蛇のように笑う。 そして高指向性スピーカーで深夜の耳にだけ届く言葉をささやく。 『ヤガミとは一体何があったのかな?』 「な!?」 瞬間、掌に溢れ出す汗。精妙なコントロールと体勢維持、それを崩すには十分な汗。 爆発音と共に、深夜が放り出される。三角帽で首には“マヌケここに眠る”のボード。 「おやおや、口ほどにもないようですなぁ」 けきょけきょとわらう藩王。突然の不調にはギャラリーは誰も気づかない。 しかし、ブリザード・パイロット達の顔には緊張が走る。 「く、ごめん。みんな!」悔しがる深夜。 その肩を叩いて、南天がステージに上る。 「大丈夫。仇は討つ」 選んだ機体はフェイクトモエリバー。宰相府でも扱った南天の愛機である。 ステージは空中迎撃。高空の覇者を駆って、破滅の炎をまき散らす。 大空の暴君のゆくところ敵は四散し、崩れ落ちる。 まさに破壊、蹂躙、大打撃。玉砕、粉砕、大喝采。といった有様。 「まるで、業火が機体の姿を取っているみたいだ……」呟くのはヤサト。 が、爆炎の中から敵機が一つ。高速機体の出現によりドッグ・ファイトに突入する。 そのとき、南天の目がぎらりと光り額の第三の目が覚醒した(ように見えた)。 風に気がついたのはいも子だった。『空気が、集まっている!?』 その感じ方は正しい。室内にもかかわらず、渺々と吹き付ける風がステージに向かって、いや、南天の筐体に向かって集まってゆく。 「こ、これは一体?」ここぞというタイミングで疑問を口にするたらすじ。 待ち構えていたように解説に入るのはMillbackである。 「上昇気流だ。南天の高速スティック捌きが熱を発し、上昇気流を生み出しているんだ!」 見よ、筐体の上には陽炎がたなびき、風が南天の周りを渦巻いてゆく。 カッと目を見開いた時、南天の体は上昇気流に乗って羽のように舞い上がる! 「な、なんて早いレバー入力!」 「そうか、空中浮揚によってレバー操作にかかる荷重を軽減してるんだ」 「羽毛が触れても動きを拾うほどに鋭敏なレバー操作だ!」 「なんて離れ業なんだ」 「み、見える。羽のように舞うフェイクトモエが!」
敵機を翻弄するフェイクトモエ。 その挙動はまさしく帝國が誇る翼にふさわしい。 だが、その操縦者の耳にまたも悪魔のささやきがきこえてきた。 『なぁ、南天さあ。さすがに現役女子高校生とならんでへそ出しって、年齢考えるとイタくないか?』 大ゴケした。 どっかーん、これは画面で機体が爆発する音。 べちゃ、これは南天が顔から筐体に落下した音。 それこそ、どっかのコントかなにかのように南天は見事なコケを披露し顔からスティックに突っ込んだ。 さすがの大惨事に、強者揃いのパイロット達も一瞬沈黙である。 ああ、アレはイタい。顔も、指摘も何もかも。 哀れ南天、三角帽で放り出される、首のカードには「ぽんぽん冷やしちゃいけません」 まるっきり子供扱いの恥辱である。 「ふふふ、口ほどにもないな南天。あとで、毛糸の腹巻きを医療費として予算計上しておいてやる」 得意絶頂、カリスマウナギ下がり。新国民歓迎の意味が全くなくなっている。 「こ、このままでは藩国の恥部がッ」焦るユーラ。 「大人げない、いろんな意味で大人げないッ!」ため息をつくMillback。 そして藩王は、唇を噛む吹雪先生の奥さんに語りかける。 「ブリザードパイロット。残るは亜細亜ちゃんのみか? どうです、そろそろ伝説のFBKが出ないと話にならないのでは?」 サンダルのまま前に出て、エプロンからがま口を取り出す吹雪先生の奥さん。 ギャラリーにざわめきが走る。 「つ、ついにFBKがッ!」 「どんな技を見せるんだ?」 ――だが、そのとき。 「……亜細亜?」 「やります」 一念発起。きりりと唇を引き締め、亜細亜はコインを弾いた。 「私が今まで遊んできた、このゲーム。絶対に負けない! ゲームでの戦いは、退かない!」 “Player 1 Entry!” 合成音声が弾幕舞踊の始まりを告げた。 「選択機体は、ダンボールか」航路が呟く。 シールドの量が多く、若干の被弾も許される。 何よりも低スピードで扱い易い。初心者向けの機体だ。 クリア重視の自機選択である。 ボムのじょり丸ファイアーも他の機体にくらべて一発多い。 「で、でも。あのゲームにおいてダンボはあくまで操作の習熟に使う機体じゃ」 たらすじが初心者騎士団での経験をもとに指摘。 「そ、そうだよ。銃砲は他に負けちゃいますよ」これはいも子。 その通り、火砲の充実性と機動性では他の機体に一歩劣る。ボス戦までの道中をパターン化していないと、辛い。 「フ、そうね。確かにみんなそう考えるわ」 不敵に笑う吹雪先生の奥さん。 「でも、このゲームでのダンボールの価値は火砲によらないわ」 「白兵戦?」ユーラが弾かれたように顔を上げる。 「たしかにこのゲーム、ダンボの白兵戦は強化されてます。けどっ!?」 「確かに、ダンボは白兵戦で性能を示した。 けれどアレは、陣地形成ができてたり、戦う場所を選べたからだ」 かつてダンボ無双を成し遂げたMillbackが冷静に指摘する。 「まず間合いに入らなければならない。弾幕を避けて敵の懐に入るなんて、そう簡単にはできない」 「どうかしら?」 「中ボス撃破!」 「一面ボスが来た」 「うわああ、すごい極太レーザーだ」 「避ける隙間がないぞっ」 「ああっ、亜細亜ちゃんが飛んだ!」 驚くギャラリー。 そう、確かに亜細亜はいま筐体の前で高く飛んだ。 そして、上空で両の手の甲をクロスし、一気に振るう。 電流火花がスパークし、ダンボールの動きが加速する。 「な、なんだ! あの動きは」 「ダンボールが、敵のレーザーをすり抜けている!?」 「いや、瞬間移動しているッ!」 「ダンボールが稲妻のようだ!」 「そう、あれこそがブリザード・パイロット奥義の一つ、ライトニングサンダー!」 「静電気干渉でゲームの基盤に直接干渉、自機のあたり判定を一瞬消失させるという荒技ですっ!」 拳を握り、三角帽子のまま解説する南天と深夜。 「……それってやっぱりチートなnごぺらばっ」 吹雪先生の奥さんの裏拳がヤサトの指摘に強制介入する。 というか、定規連射で人をボコにした人間があの技にはOKってどうなのよ。 「馬鹿ね、道具を使っていない以上、アレは技なのよっ」は、すみません。 亜細亜のダンボールは敵ボスに肉薄、スコップの打ち込みが唸り高速撃破する! ギャラリーの興奮は極大に達した。 「くぅ、このままではいかん」 二面、三面も着実に撃破されてゆき、スコアの伸びも順調。 まさか亜細亜がここまでやると思っていなかった藩王火足水極、亜細亜の弱みなど抑えてはいなかった! 「こうなったなら……!」火足水極は、もう一つの筐体に乗り込み、レバーでコマンドを入力する。 「↑↑↓↓←→←→BABAっと、エクストラステージ、後ほねっこ宮殿!」 ヴィーッ、ヴィーッ、ヴィーッと警報ブザーが鳴り、画面には”Caution!! Gate Open!”の文字。 「ええっ、一体何が?」とまどう亜細亜。 すると画面がぐにゃりと曲がり、ダンボールがそのゆがみに吸い込まれていく。 「こ、これは?」 「ゲートが開いた?」 「この場所は……」 「王城だ!」 その通り。 スクリーンに描かれたのは新王城、なじみ深い後ほねっこ男爵領の町並みである。 粉雪舞う王宮、その真正面に立つのは異形の大型I=D。 ハリネズミのように火砲を備えたそれは、禍々しい砲塔を亜細亜の駆るダンボールに向ける。 「ここまでやるとは、さすがといってやろう。しかし、この私に勝てるかな?」 雪の中から出てくる敵、敵、敵。 大型I=Dの援護射撃を受け、あまたの敵機がダンボールに集中する。 「ふははは! どうだ、怖かろう!!」 あっという間に、緊急回避にボムが費やされ、シールドが減ってゆく。 まがりなりにもクリアを前提に構成されているステージとは異なり、このエクストラ・ステージは藩王の思うがまま。 バランスなど知らぬとばかりに大口径レーザーと誘導ミサイル、浮遊機雷がばらまかれる。 「だ、駄目だ!?」 「残機ゼロ!」 のこるは、画面上一機のみ。 「か、勝てないの?」 呆然とスクリーンを見る亜細亜、そのとき吹雪先生の奥さんが叫んだ! 「亜細亜、忘れちゃ駄目。あなたは1人で戦ってるんじゃない! 確かに筐体の前では1人よ、でもその後ろにあなたの後ろに何人もの仲間がいるの! それを思い出して!」 「くっ」亜細亜は飛んだ、腕をこすり静電気干渉を起こす。 「ふはは、ライトニングサンダーで操作できるのはせいぜい一つの基盤! 二つの基盤に効果を及ぼす電気を腕の振りだけで起こせるモノか! そうれ、後一捻りッ!」 そのとき、ごうと風が吹いた。 「ああッ、あれは!」 「筐体の上に黒雲が?」 「雷雲だッ! なんでこんな所に?」 「深夜の『冷気』と南天の『炎』その強烈な温度差がさっき風を呼んだ。 けれど、亜細亜のオーラがさらにその風を局地的な低気圧とし、積乱雲を作り上げた!」 状況を分析するMillback。 「なんてこった、こんなことが可能だなんて!」 「聞いたことがあります」ユーラが続ける。 「かつて、夏の同人誌即売会中、参加者の熱気が建物の中に雲を作ったことがあるとか」 「今この場の熱気があれば、それくらいのことは可能よ」三角帽子のまま南天が言葉を裏付ける。 ――そう、1人じゃない。 亜細亜の瞳に星が映った。その輝きは、仲間達の信頼の輝き。ゲームに賭けた青春の輝き。 「今よ! 亜細亜、あなたならできる。あのわざを!」 空気がイオン化し、雷鳴がとどろく。 亜細亜の作り出した静電気が二つの筐体に雷撃の道筋を開く。 そして、迅雷の閃光が荒れ狂った! 「ライトニングサンダー……スパークノヴァ!!」
静電干渉場は局地的落雷を呼び、その落雷は火足水極の筐体をも撃った。 「見ろ、ダンボールのスコップが!」 「稲妻を受けて長く伸びてるッ!」 「まるで稲妻の大剣だ」 「く、いかん。まさかここまでの大出力とはッ」離脱をはかる大型I=D。 が、火足水極の操作が一切受け付けられない。 「ま、まさか? 静電気干渉でこちらの操作を奪うなんてッ」悲鳴を上げる火足水極。 「いきますッ!」 神速の踏み込みでダンボールが大型I=Dを捕らえる。 残像を残し、まるで数体ものダンボールがスコップを振るっているかのようだ。 その道筋に触れた敵機はそれだけで爆発し花道を飾った。 棒立ちになった大型I=Dのシールドが瞬くうちに削られた。 そして、轟音。 ”Enemy Defeated!” 静電干渉は筐体の射出システムにも及んだのか。 数倍の強さで放り出された藩王はゆっくりと宙を舞った。 「あれ、おかしいな。負けたのか。ここまでやって……」床に激突するまでの数瞬を火足水極は呆然と眺めた。 眼下で沸き立つパイロット達、藩国民達。そして、やはり空中にいる一足先に着陸する亜細亜。 愚王は見た、亜細亜の絶対領域、ニーソックスとスカートの間が作り出す聖域が、 今まさにこのアングルからのみ鉄壁の守りを崩そうとしているのを。 吹き飛ばされたこの角度、この位置、この高度からのみ、宙返り中の亜細亜の絶対領域のその上のあのロマンが ええと良いのかこれうわ見える見えるもう少しもう少し神様お願いあと数秒です風よ吹け嵐よ起これ後一吹きで ちらっとぴらっと見えそでみえない桃源郷が青春の1ページが甘酸っぱい記憶が…」どべちゃ」 この設定文がピンクの設定文として没になる直前、世界の善意が藩王の意識を刈り取った。 火足水極はゲーセンの屋根に頭を突っ込んで奇怪なオブジェのようにぶら下がった。 “Mission Complete!“、“Extra Stage Clear!“ 後ほねっこ男爵領、新着用アイドレス。 “高位北国人+黒い舞踏子+ブリザードパイロット+名パイロット”の華々しいデビューはこうして幕を閉じた。 その後のどたばたはみらのが連れてきた吹雪先生によって収拾された。 これにより藩王は一週間ほど首にギブスを巻くだけで済んだ。 吹雪先生が間に入らなかったら、12Tの外交団参加も危うかったろう。 危ういと言えば、ブリパの格好をしようとした奥さんに 「へそ出しする年じゃ……云々」を口にした誰かが藩王に隣に同じようにぶら下がったり、 みらのが亜細亜にゲーム勝負を挑んだりしたけどそれはまた別の物語。 たぶん、今日も後ほねっこ男爵領は平和である。
キーワード:
参照: