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なぜなにほねっこ男爵領バックナンバー

第一回
OPテーマが流れ、スタジオの照明が段々と明るくなる。
そこにタイトルの“なぜなにほねっこ男爵領”の文字が被る。

「はい、今週もなぜなにほねっこ男爵領の時間がやってまいりました」
「司会の書記長@ばーちゃるねっと犬耳人妻2×歳です」

「アシスタントの深夜です」

「コメンテーターの火足水極です」

「……こめんてーたー?」

「良いのよ、深夜ちゃん。藩王様がやりたいと仰ってるんだから」

「うむ、よきにはからえ」

「……藩王様?」

「ごめんなさいごめんなさい、調子に乗ってごめんなさい」(ガクガク


「さて、気を取り直して。深夜ちゃん、今週のお題はなんだったかしら?」

「えーと、今週は“ほねっこ男爵領の冬の風物詩”ですね」

「そう……ほねっこ男爵領の風物詩といえば鳴駒の湖で行われるスk「赤フンだ!!」


めきょ


 距離を取ってみれば、それは赤く斑に汚れた襤褸の山にしか見えなかっただろう。
 しかし、迂闊にも近づいてしまった私が見たそれは……それは……。
 思い出すだけでも筆を持つ指先が震える。
 嗚呼、神よ、私に勇気を。
 それは人体という神の創りたもう傑作の、醜いカリカチュアだった。
 背徳的に崩れた胴部からは、名状しがたき臭気が立ち昇り、
 私の鼻を通して薄灰色の器官に冒していく。
 手足は、或いは人体ならば手足に相当するであろう部分は、この世ならざる角度で折れ曲がり、
 動くたびに、筋と筋が、骨と骨が擦れあう涜神的な響きを周囲に撒き散らしている。
 そして、その顔には……その顔には!
 無惨に歪んだその顔の中で、虚無の暗黒を思わせる眼窩の中に……嗚呼、嗚呼!
 私は確かにそこに見た。
 苦痛に塗れた知性を、自我を。
 それは……いや、彼は自らのおかれた状況を認識し、理解し、
 そして、果てない無窮の苦痛の内にのたうちまわっているのだ!
 
深夜記す


「……人間って、あんな風になっても生きてられるんですね。凄いや」

「人間の生命力って素晴らしいわ」


「あ、簀巻きで冬の鳴駒の湖に放り込むのは止めて、止めt……死んじゃう、死んじゃうって、あーっ!」


「本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ。あの程度で儚くなる様じゃ、ほねっこ男爵領の男爵代行は務まらないわ」

「……はぁ、そういうものなんですか」


「こほん。それは兎も角、ほねっこ男爵領の冬の風物詩と言えば、やっぱりスケートね」
「深夜ちゃんもやった事あるんじゃないかしら?」

「それは、まあ、ボクもここで生まれ育ちましたから。でも、冬は家の中に居る方が好きです」(きっぱり

「若いの不健康よ、深夜ちゃん。それに、スケート場は冬の数少ない出会いの場よ?」

「そういうのは、別にいいですよ。ボクはあんまり興味ないですし……」

「あらあら……うふふ」

「そ、それは兎も角、やっぱりスケートなんですか、冬の風物詩って」

「ほねっこ男爵領は、冬の間殆ど雪に埋もれてしまうから、仕方ないのよ」

「それならそれで、スキーとかでも良いと思うんですけど?」

「スキーは大規模な施設が必要で、お金が掛かるのが、ね」
「その点、凍結した鳴駒の湖をそのまま利用できるっていうスケートの強みは大きいわ」
「もっとも、将来的には、観光客を見込んでスキー場の整備を進めるって話もあるのだけど」

「へ〜、初めて知りました。良い話だと思いますし、もっと大々的に告知しないんですか?」

「ほねっこ男爵領はメッケ岳を始めとして、山に対する畏敬の念が強いのよ……」

「ああ、なるほど」

「その所為で、どうしても山に手を入れざるを得ないスキー場建設は、政庁内でも反対意見が根強いの」
「私もね、心情的には反対派。でも、国庫の苦しさも知ってるから、強く反対も出来ないわ」

「はぁ、偉い人は大変ですね」

「他人事みたいに言っちゃダメよ? スキー場を造るって事は、本格的に外から人を呼ぶって事でもあるわ」
「その場合、どうしたってほねっこ男爵領全体が変わっていくことになるでしょうし」
「それに、ゲレンデの恋って素敵な響きよね」(ほわわん

「ほねっこ男爵領全体のことは兎も角、一番最後はボクには全く関係ないので、やっぱり他人事です」

「む〜、若いのにそんな事じゃ本当にダメよ、深夜ちゃん」
「ここは一つ、おねえさんが恋のレクチャーを一からしてあげなきゃね!」
「じゃあ、まずは私とあの人の出会いから……あれは良く晴れた日のスケート場だったわ……」(遠い目

「……おねえさん?」

「深夜ちゃん。何か言ったかしら?」(ごごごご

「い、いえ、何でもありませんっ!」

「そう、なら良いわ。ええと、どこまで話したかしら」
「そうそう、あの人ったら、運動神経は悪くないのに、どこかそそっかしくて……」

(長くなりそうだなぁ)
(もしかして、書記長さんがスキー場建設に消極的なのって、スケート場に思い入れがあるから?)
(だとしたら、スケートが冬の風物詩から外れるのは、ずっと先の事になりそう……)
(この国の裏の支配者、書記長さんだし)

延々と書記長さんの惚気話が続く中、EDテーマが流れ、スタジオの照明が段々と暗くなる。

Fin

藩王に天誅

第二回
OPテーマが流れ、スタジオの照明が段々と明るくなる。
そこにタイトルの“なぜなにほねっこ男爵領”の文字が被る。

「はい、今週もなぜなにほねっこ男爵領の時間がやってまいりました」
「司会の書記長@ばーちゃるねっと犬耳人妻2×歳です」

「アシスタントの深夜です」

「……」

「………」

「……あれ?」
「今週はいないんですね、藩王様」

「流石に毎週お茶の間にショッキングな画像をお届けするわけにもいかないもの」

「確かに。ボクもあの文体を書くのは骨ですし」

「それに、南天さんと色々悪巧みするのに忙しいんですって」

「……不潔」

「私は変に隠そうとするよりはよっぽど潔いと思うけど」
「深夜ちゃんは潔癖なお年頃なのね」

「良いじゃないですか、別に。ボクは、そーいうのがだいっきらいなんです!」

「あらあら……」
「でも、今週の話題は、藩王様と南天さんの悪巧みにちょっと関係してるんだけどな〜」

「……ふつーの話題だったのに。南天さんのバカ。藩王様のヘンタイ」(ぼそ

「うふふ、どうしたかしら、深夜ちゃん?」

「なんでもありません。今週の話題は、この間発見されたリングゲートについて、ですね」

「そう。墜落した輸送機を救助に向かった、南天さんと深夜ちゃんが見つけた謎の現象」
「静かに降り積もる雪の中、それ自体が淡く光る異界への窓……いえ、門」
「我が藩国が誇る星見司のXH−834さんによれば、ヒトが通るのに何の支障もないらしいわ」

「小笠原って場所に繋がってるんですよね」

「ええ、その通り」
「今はほねっこ男爵領政府が、厳重な警備を敷いて確保してるわ」

「そうでもしないと、国中の人が見物にきちゃいますし」

「……ほねっこ男爵領の冬は、娯楽が少ないものね」

「これ以上ないってくらい目新しい見世物ですよね、今のところ」

「お隣の冬の京を蹂躙してる機動兵器の目標って噂もあって、
 そんなのんびりしたものでもないのだけれど」

「ええ、お陰でわんわん帝國は臨戦態勢に。貧乏藩国である我らがほねっこ男爵領も青息吐息です」
「お給料、遅配になったりしないですよね……?」

「うふふ……」

「いえ、笑ってないで、否定してください。お願いします……」

「ま、それは兎も角」

「兎も角じゃないです」

「深夜ちゃん、第一発見者として、お話を聞かせてもらえないかしら?」

「もう、そうやって話題を変える……良いです、今回は乗せられてあげます。
 どうせ書記長さんには敵わないし」

「うふふ、ありがとう。じゃあ、最初に見つけたときの印象から教えてもらえる?」

「そうですね。最初見たときは、事故機の積荷か何かが燃えてるんだと思いました」
「でも、何かが燃えてるって明るさとは違うって、すぐに思い直したんです」

「違うって言うと、どういう風に?」

「光の当たる場所の色合いが、炎の光のそれよりもずっと多彩だったんです」
「それに、あの時、あの場所では随分風が吹いてましたけど、
 光源が揺れなかったのも、違和感を感じた原因ですね」

「それで?」

「それで覗き込んでみたら、光の向こう側に、白い砂浜と、見たこともない明るい空と、
 物凄く広くて、明るい青一色の平原が広がってる、って。最初見たときはそう思いました」

「その平原が、小笠原の海だったのね」

「はい。南天さんに教えてもらったんです」
「ボク、海を見たこと無かったから、びっくりしちゃいました」
「あと、海って何か変な匂いがするんです」
「本部に連絡して、調査隊が来るまでの間、ボクと南天さんで見張りをしてたんですけど、
 ボク、ちょっと気持ち悪くなっちゃって」

「あら、そんなにきつい匂いなの?」

「いえ、こういうのには個人差があるって、南天先輩は言ってました」
「すぐに慣れちまうよ、って言ってたんですけど、ボクはどうも海の匂いに弱いらしくて」
「南天先輩が知ってる海の香りは、もっとずっときつかったそうです」
「お前は先遣調査隊は無理だな、って笑いながら言うんです。酷いですよね」
「ボクだって行ってみたいのに。あの時はちょっと調子が悪かっただけで、次は、きっと……」

「そういえば、小笠原に行く先遣調査隊の話しもあったわね」

「あ、はい。帝國の方から助成金も出るそうです。近日中に調査団が送られる事になりますよ」
「凄いですよね、まさに藩国の一大イベントです」

「で、その一大イベントに、碌でもない水着を持ち込もうとした不埒者が、
 南天さんと藩王様のコンビって訳ね」

「……はい」
「もう、あの人たち、本当になに考えてるんだろ……」

「深夜ちゃんが悩む事じゃないわ。気を取り直して、ね」
「南天さんも藩王様も、子供じゃないんだから、責任くらいは自分で取れるはずよ」

「そうなんでしょうか……」

「そうよ」
「そ・れ・よ・り・も」

「?」

「あの水着の3サイズ、私にぴったりだったの……」

「え?」

「何処からデータが漏れたのかしらね……?」(ごごごご

「藩王様も、南天さんも、そういう情報網だけは計り知れない物を持ってますから」

「うふふ、今後こういう事のないように、あの二人にはきちんと全部白状してもらわなきゃ、ね」
「政庁に勤務する女の子たちが安心して勤務できなくなっちゃうもの」
「……絶対に逃がさないわ」

月も恥じて隠れんばかりの美しい笑顔に殺気を漲らせた書記長さんに寄せていたカメラが右にパンする。

「うわ……漏らした人、可哀想に……」
「あ、そうそう」
「なぜなにほねっこ男爵領では、藩国内外の視聴者の皆様からの質問を募集しています」
「ほねっこ男爵領の素朴な疑問から、麗しの書記長さんへの質問まで」
「あて先はなぜなにほねっこ男爵領質問係まで」
「お待ちしてまーす」

カメラに向かって深夜が手を振り、EDテーマが流れ、スタジオの照明が段々と暗くなる。

Fin
更新日時:2007/01/30 13:11:53
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