<<< 一 念 発 起 と書く。 い ち ね ん ほ っ き と読む。 ある事を成し遂げようと強く心に誓う、という意味の言葉である。 電網適応アイドレスにおいて、後藤亜細亜は常に守られる側の人間だった。 後ほねっこ男爵領の奪還に先立つ救助活動の大きな目的の一つは、 根源種族に囚われた亜細亜の奪還であったし、 一度戦闘に参加すれば、彼女を守るために、誰もが文字通り死力を尽くした。 自分が、誰かから守られているという事実を知った。 自分で思うよりも、ずっと多くの人に見守られていたのだと知った。 あまりにも多くのものを受け取り、申し訳ないほど何も返せない自分。 自分はそれを受け取るに値しないと泣く亜細亜に、誰かが言った。 『自分の無力を嘆かないで。  私だって、ずっと昔に誰かから受け取った物を、貴方に渡しただけなのだから。  それでも報いたいと思うのならば、約束して。  いつか貴方もそれを誰かに手渡すと』 亜細亜は、優しいというには、あまりにも臆病で、 繊細と言うよりも、剥き出しの神経のように過敏な女の子だった。 傷つけられる痛みを想像して、その苦痛の影の巨大さに怯えるあまり、 自ら作り出した殻の中に篭るような女の子だった。 だが、傷つく事を避ければ避けるだけ、現実に背を向ければ向けるだけ、 痛みへの恐怖だけが膨れ上がっていく。 わが身と心を守るための殻は、何時しか自分自身を閉じ込める檻と化していた。 そこから一歩踏み出す切っ掛けになったのは、吹雪先生とアイドレスだった。 おっかなびっくり人と関わるようになった。 泣きたいくらい怖い目にもあった。 痛みを乗り越える事が、自分で思っていたよりもずっと容易い事を知った。 その度に、誰かが亜細亜の事を守っていた。 誰かが亜細亜を守るたびに、 亜細亜の代わりに傷ついている事に気がつくのに、少し時間がかかった。 余裕が無かった事もあるが、それ以上に、 皆が亜細亜の心を守るため、自分が傷ついた事を悟らせまいとしたからだった。 あまりにも多くのものを受け取り、申し訳ないほど何も返せない自分。 誰かが悲しむのを見過ごすのも嫌だった。 誰かの悲しみと痛みを感じるごとに、我が事にように胸の奥が痛む。 目を閉じ、耳を塞いでも、自分を誤魔化す事は出来ない。 これほど苦しいのに、それを放っておく事など出来るはずが無かった。 でも、もう自分を守るために誰かが傷つくのを見るのは嫌だった。 『わたしは、誰かを守れる人になりたい』 それは、後藤亜細亜の一念発起。 皆から手渡されたものを、今度は自分が手渡す番なのだ。 深く息を吸い、ゆっくりと吐く。 手に持ったヘルメットには、曲面に沿って歪んだ自分自身の顔が映りこんでいた。 思い詰めた表情が、どこかユーモラスに崩れている。 だが、決意を込めた眼差しは驚くほどそのままだった。 その瞳に問いかける。 『わたしは、わたしの願いを叶えられるくらい強くなったかな?』 ――いいえ。わたしの力はまだ全然足りない。 『じゃあ、今わたしがしようとしている事は無駄なのかな?』 ――いいえ。足りない部分は戦場で学べば良い。 『何時か、届くかな』 ――わたしが、諦めなければ。 その答えが、YESである事を願って。 >>> [[亜細亜の成長|http://www26.atwiki.jp/minamitennka?cmd=upload&act=open&pageid=26&file=%E4%BA%9C%E7%B4%B0%E4%BA%9C%E3%81%AE%E6%88%90%E9%95%B7.jpg]] ||亜細亜の成長(イベント)|| ||要点||・ひっつめ髪・インナースーツ・ヘルメット・銃・決意して息をのんだ顔 ||周辺環境||・ウォードレス部隊 ||効果||後藤亜細亜はこの世の全てのACEを保護・救済し、アイドレス終了後も個人ACE達が消失されない道を探すことを決意する。 ||次のアイドレス||無制限父性復活(強制イベント)、廃役ACEに関する情報の公開(強制イベント)、亜細亜・ブルーアイズ(ACE)