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ほねっこ男爵領 - honeTV 差分

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!ほねっこTV

ここでは、ほねっこTV製作の番組が観られます。

!!引越しSS企画(試作版)
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根源種族の侵攻により国土を灰燼に帰されたほねっこ男爵領は、
帝國本国からの改易令を受けて藩国移転の真っ最中であった。
この日、ほねっこ男爵領各地での作業はそれはもう、大変であった。


‐政庁(PC深夜のケース)‐

政庁の書記官執務室は、戦場と化していた。
財政報告書から国民管理簿、移転後の住居計画などなど、
移転までにやらなければいけない仕事が山積みだったのである。
そんなわけで、普段は文族の深夜も書記官執務室でペンを手に戦っていた。

(カリカリカリカリ

無言でひたすらペンを動かす深夜。
その手元にはアイドレス工場の移転計画書と建設仕様書。
机の奥には食糧増産計画書も見える。

「深夜ちゃん、ちょっと休憩したら?」

一緒に作業をしていた書記長さんが手を止め、声をかける。

(カリカリカリカリ

「熱心なのは良いけど……ほら、お茶も入ったわよ?」

(カリカリカリカリ

「……深夜ちゃん?」

(カリカリカリカ…リ……カ……ぷしゅー

「だっ、誰かー、深夜ちゃんが壊れたわ!」


‐同じく政庁(PCユーラのケース)‐

書記官執務室が大変なことになっているそのとき、
新任摂政ユーラは、割り当てられた摂政執務室で目を回していた。

改易が言い渡されたときも、処遇がどうなるのだろうとか、
申し開きって何書けばいいんだろう。こんなこと書いて怒られないかな、とか、
まこと小心者らしく焦っていたが、
いざ、改易で大分に引越しとなると、それはそれでまたぐるぐるしていたのである。

「えーっと、えーっと……」

天領から改易の手間賃として、
30億わんわんとアイドレス2つが与えられたが、
そのための作業時間と担当者の負担を考えると嬉しいやら、つらいやら。

それに、先の戦争で消費した物資の補充もしなければならない。

「報告書のチェックと方針決定会議に中央市場への注文に施設移転……」

ああ、もう、どれからやればいいんですか、この場合。とぐるぐるしたあと、
まずは糖分を補給しましょう。
などと言い訳をしてスイートグラタンを食べながら作業を開始した。


‐街中(PCでみのケース)‐

ほねっこ城市内では、住民の引越し作業が進んでいた。
政庁職員が手配した大分への移動・運搬用のトラックが広場に集められ、
そこへ家財道具を運び込む人々で街はひどく混み合っていた。
そんな、慌しく人々が駆け回る街並みをのんびりと歩く無意味に礼服姿の男。

「久しぶりに顔を出してみれば、盛大な引越しとはね。私も間が悪いな」

以前旅の途中にのぞいたほねっこ男爵領 は見違えるように発展していたが、
それを十分楽しむ暇すらない今回の"お引越し”
消え行く国を瞳の奥に焼き付けておける事だけでも幸運だろうか。

ふと、でみの目に苦労して荷物を運び出そうとする女性の姿が留まる。

「あぁ、ご婦人。 それは重いので私が代わりましょう」

そう感慨にふけりながらも、大八車にタンスを積むのだった。


‐七ツ斑飛行場の外れ(PC南天のケース)‐

一方その頃、引越しの慌しさとはまるで無縁であるかのように、
南天は小高い丘の上で絵を描いていた。
その眼下に広がるのは廃墟となった街並み。
しかし、描かれているのは以前の美しい街並みである。

「南天さん、なにしてるんですか?」

七ツ斑飛行場の後輩パイロットがその姿を見つけ、声をかける。

「んー、引越しっても俺ぇ、荷物あんまりねぇしな。
 暇だから絵ー描いてる…記念に」

そうですか、と頷く後輩パイロット。
そうなんだよ、と頷き返す南天。そうしてまた、筆を動かし始めた。



‐政庁 食堂‐

王犬・じょり丸は、慌しく動く職員を眺めながら、
摂政から巻き上げたスイートグラタンを食べていた。
その視界の端を、頭から煙を上げた深夜が運ばれていく。
「?」と首を傾げるじょり丸。
そして、入れ違いに書記官執務室に連行される南天の姿。

じょり丸は、はふう、と一息ついて、
今日の散歩は一人で行ってこよう、と思った。


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!!TVクルーは見た、お引越しの藩王様
!!後ほねっこ男爵領のお引越し
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「っていうかさー、後ほねっこってなんだろう?」

軍用車両の荷台で足を投げ出して座っている南天が
気の抜けた声を出した。

「……ナンだ?なんの話だ?」

藩王は目を点にしている。
やっぱり俺の部下には普通な人間は居ない。


「二部構成?超大作スペクタクル?色々ギリギリな
 男爵領を様々な視点から切り込んだ問題作?
 ハートフル茶飲みコメディ?その衝撃のラストに全米が震撼!」

「意外と」

曇天を見ながらぼーっと独り言を続ける南天に
斜向かいで正座していたユーラが続ける。

「『もう後が無い』ほねっこ男爵領かもしれませんねぇ」

柔和な顔を、傾げながら物騒な事を言う。

「うーん、リアルだ」
「でも、何か転封されたわりに国庫は潤いましたよ?」

この有能な摂政のお陰で男爵領の国庫はかつかつ状態から抜け出せた。
感謝してもし足りない、拝んでも足りない
たった8名の国民は最大限、心の中でユーラに感謝を送っている。

「でも、大分って蛮族が蔓延ってるんでしょう?」

併走する車両の二台からまだ可愛らしい声。
飛び級で学園を卒業した吏族にして文族の深夜である。

「それ、話し合いで何とかならんかなぁ…」
「話し合いしかあるめぇ」

深い、年輪さえ感じるような声色でほねっこの問題児二人が呟いた。

「婚姻策かなー…」

藩王の一言で、視線が南天に集中する。

「おお、いいですね」
「向こうの姫様とこっちの英雄とか」
「相手が酋長の娘とかだったら…ですかねぇ?」

南天、3つの視線を受けにっこりと笑う。

「いいすよ、俺が貰います」

この男、最近練習している優しい笑顔のせいか、笑うと少し若く見えるようになった。

「いいじゃないすかー、最初は言葉も通じず、嫁に拒否されつつも
 次第に通い合う二人の心…ロマンスだ、王道だ。」


にっこりと台詞を引き継ぐ深夜。

「そして生まれる愛の結晶…ハーフオーク」
「オーク決定か!先住民の可愛らしい娘さんじゃないんかっ!!」

「いやぁ、強いですよ、ハーフオーク。暗視あるし」
「まったくだ」

「ぐぅ…」

「まぁ、そのときが決まってから考えよう。多分、人だとは思う
 蛮族の根源種族だったら、誰かさんにに呪いを…」

「人であれっ、頼む俺の嫁候補」

冷や汗を垂らす南天を見ながらユーラが一言。

「『奥様はシフ』」

続けて藩王がポツリ。

「花嫁は土偶」
「ハニー!?」

「戦火を越えて結ばれる愛!王道だ王道!」

身体をくねらせながら暑苦しいくらいに語る藩王。
南天、それを睨みながら歯軋りする。

「ちくしょう、末代まで祟ってやる…誰だか知らん、皆だ皆」

一息置いて、急に笑顔になる藩王
ユーラと南天が一歩下がる。

「……つくづく思うんだが、似たものばかりがあつまってないか、ここ?」

嬉しそうに藩王。

「類友?よしてください、自分はノーマルで「これも縁ですな」

南天の台詞に被るようにユーラ、言いながら嘘つき南天を笑顔で懲らしめている。


「あーん、ユーラさん痛いです、ホールドは緩めにお願いー」
「なんというか、この国だけ見てるとすごく平和に思えますねぇ」

現在帝國では法官による粛清が行われている。
何でも近々大規模な動員令があるとかで、帝國中が騒がしい。
男爵領も例外でなく、それに備えていたわけだが…
転封の為、今回の動員から外される事となった。

たしかに、藩王に侍る家臣団には改易令で身体を壊しそうになった者もいる。
いや、ここにいる全員が疲労困憊していた。

ユーラは市場監視で神経を、設計図作成で腕を痛め
藩王は忙しなさでぐるぐるになりっぱなし
深夜は男爵領でたったひとりの文族であるが故に疲労と言うか死が間近な顔色だったし
南天はトモエリバーのマイナーチェンジや新たなI=D工場建設で毎日明け方まで作業場に篭っていた。
星見、法官試験を受けた国民もいた。
8人が8人なりに精一杯なんか出した。出し尽くした。
で、枯れた。

それ故に、我らがプリンセスの詔は心に染み入った。

藩王はすっくと立ち上がると、背後を…故郷の滋賀を見ながら呟く。

「これが、俺たちが守るべき平和なんだ」

心からの深い声だった。
しばし沈黙ののち、ユーラが重々しく口を開いた。

「国、焼けてますけどね」
「国破れて山河あり、とかいうけどさー、地元オン出されたら、そんなこともいえなよねー」

フランクに両肩を上げてアメリカンチックにアクションする藩王。

「懲らしめよう、ユーラ、懲らしめてしまおう」
「生憎とたまねぎとおろし金しかありませんよ?」
「十分だ。おろし金で擦った玉ねぎを縛り上げた藩王の鼻の近くにやるという地味ぃーな拷問をしてやろう」

言いながら藩王を抑えるユーラ、玉ねぎをすりだそうとする南天。
こういうときだけ美しい連携。


「おまえらなぁ、絶対俺にシリアスをさせたくないだろう、そーだろっ」

泣きそうな顔で暴れる藩王を放し
撫でながらユーラが笑顔で小首をかしげる

「いえ、そんなことは。ただ慣れで」
「俺を苛めるのに慣れてるのかよぅ」

玉ねぎを大事に食料袋に詰めなおし、南天が笑う。

「藩王、知らなかったんですか?ギャグはシリアスより強いんスよ。アイドレスじゃー、有名な格言です」
「この国の連中は、ホントに強いよ。まったく」

「おやまぁ、なんと懐かしい事を言いますね南天殿」

ユーラが今度は本当の笑顔で嬉しそうに手を叩く

「厳しい冬を越せば暖かい春が来ることを知ってる
 だから、どんなにたわんでも折れないんですよ…この国は」
「ナイスユーラ!歌でも歌うか、廻る季節の」

南天が藩王に目配せする。
藩王、口の端だけで笑うとギターを取り出して爪弾きはじめた。

わふん!と、併走している車両からじょり丸陛下の声がした。
藩王はそうか、お前も歌いたいかと笑いかけた。
前奏はさらに調子よく、曇り空に吸い込まれる。

「……」
ユーラがこっそり避難を開始した。

「……」
南天が妙な笑顔で腰を浮かしている。

向こうの車両からは深夜の慌てた声がしているが
藩王、気づかずいい気持ちで、前奏が終わり、息を吸って…


「あ……ま、いっか。」

深夜の諦めたような声。
跳躍するじょり丸。
こちら側の車両に降り立つ、目にも留まらぬ速さで
藩王の背後に移動した……。

指で耳栓する南天、困り笑顔のユーラ。




「〜♪(がぶ)」









藩民:「大分に行っても」
藩民:「あの悲鳴は変わらないんだろうなぁ」

子供:「かーちゃん、藩王さまが泣いてる」
母親:「こら、指差すんじゃありません」


ユーラ:「書記長さん、傷薬を。ええ、いつものやつです」
南天:「ああ、ユーラ大丈夫そうだ…陛下がべろべろ舐めてる」

藩王:「(しくしく)次のアイドレスで親衛隊があったら、ほしいなぁ。尻衛隊に名前変えるひつようがあるけど」
深夜:「問題は誰か藩王の尻を護りたいと志願する奇特な人が居るかですね」





尻を濡らしてさめざめと泣く藩王から目を逸らし
ユーラと南天は空を見上げる。

相変わらずの曇天。

「……明日は晴れそうですねぇ」
「そうだなぁ、そうしようぜ」


大分は、きっと晴天だ。


後ほねっこ男爵領のお引越し・了
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