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試作品置き場

試作品置き場

ここは、後に提出するかもしれないSSやイラストなどをおいておきます。 提出する際に、それぞれのページに張り替えましょう。

ほねっこ、大改修

後ほねっこ男爵領の藩国寮は古くから存在する年季の入った建物である。
元々は宮廷につかえるメードたちのために作られた寮であったが、
わんわん帝國でも1、2を争う小国である後ほねっこ男爵領の宮廷はこじんまりとしたものであったため、
宮廷のみでなく政庁をはじめとする官公庁の職員のための寮として現在まで続いている。

その寮も、そろそろ傷みが目立つようになってきた。
伝統ある女子単身寮はメード訓練として日々の手入れがされているため綺麗なままなのだが、
それでも建物自体の老朽化は避けて通れない。ところどころは補修が必要な個所も出てきている。
それに、今後は迷宮巡視員のための施設や、迷宮案内犬のための犬舎も必要になる。
雷電用の厩舎も用意しなければならないし……。

そんな諸々の事情で、後ほねっこ男爵領は寮の改修・増築工事に取り掛かったのであった。

既存のの改修

これまでも藩国には、女子単身・家族・男子単身が存在していたが、
特に改修が進められたのが、家族と男子単身である。

・家族

家族寮の改修は、建設当時に女子単身寮に入っていた職員たちが相応の年齢に達して、
家庭を持つようになったことが考慮され、大規模な改修が行われています。
結婚を機に家庭に入る女性も少なくありませんが、政庁勤めの女性は結婚してもそのまま職場にとどまることが多いようです。
その要因の一つに、今も現役バリバリ活躍中の書記長さん(美人人妻眼鏡書記長)の存在があるとかないとか。
家族寮は建て増しを行い、戸数を大幅に増やしています。
また、各家庭の交流を深めるために新たに広いロビーも用意されました。
家族寮は単身寮とは異なり、集合住宅と言った方が適切な造りとなっていますが、
売店と医務室は単身寮時代に世話になったということで要望が多く、家族寮にも設置されています。


・男子単身

プレハブを端材、廃材で強化して使っていた男子単身寮。そこには様々な苦労があった。
半分しか開かない窓や、鍵をかけてないのに開かないドア、吹き込む隙間風などなど……。
しかし、このたびの改修により、不遇の男子単身寮は見違えるほどに立派になったのである。
というかもう、元がプレハブじゃあ改修じゃなくて建て替えだって。


・女子単身

今回の改修ではあまり大きく手を入れておらず、老朽化した部分の補修・改装が主となっています。


・単身の共通設備

食堂:
単身寮での食事は基本的に食堂でとることになっています。
栄養バランスを考えた各種メニューから選べます。

売店:
日用品や雑誌などがそろった売店です。
外で買い物するのが面倒な時、時間がないときに重宝されています。

談話室:
入寮者が集まってお話したりお茶を飲んだりする場所です。
なぜか女子寮の方が談話室が広いのは公然の秘密。

娯楽室:
ボードゲームやカードゲーム、テレビなどの娯楽品が置かれた部屋です。
休暇前には大勢の人が集まりゲームに興じている姿が見られます。

サウナ風呂:
北国では湯船に浸かるお風呂よりも、サウナ風呂が一般的です。
単身寮には共用の大きなサウナルームがあります。
もちろん水風呂とシャワールームも付いています。

調理室:
入寮者が自由に使える調理室です。
お茶を淹れたり、簡単な夜食を作ったりできます。
また、個人で買った食品を保存しておく冷蔵コインロッカーも設置されています。

自動販売機コーナー:
飲み物だけじゃなく、お菓子にパン、インスタント食品も売っています。
食べすぎにはくれぐれも注意しましょう。

洗濯室:
寮にはクリーニングサービスもありますが、基本は自分で洗濯です。
洗濯機と洗剤類の販売機も設置されています。

乾燥室:
北国では冬に洗濯物を外に干すと凍ってしまうため、乾燥室が設置されています。

医務室:
日常でのちょっとした怪我や体調不良の悩みに応えてくれます。
市立病院への直通回線があるので緊急時の連絡も安心です。

新しい施設の建設

の改修で最も大きな変化は、新しい施設の建設です。
既存のとの調和を保ちながら、新しく以下に示す施設が建設されました。

・迷宮巡視員

基本的な部分は通常の寮と変わりませんが、一部分で巡視員用に工夫された作りとなっています。
迷宮巡視員はバディとなる迷宮巡視員が決定した後は、案内犬と寝食を共にします。
そのため、全個室となっており、迷宮案内犬には大型犬も多いため、一部屋あたりのスペースが大きく取られています。
また、階段の上り下りは犬の脚に余計な負担がかかることがあるため、階段の脇にはスロープが作られています。
通常の寮には見られない設備として、迷宮巡視員と迷宮案内犬用の装備の保管庫と、
休暇中でも体を鍛えられるようにトレーニングルームも用意されています。

・犬舎

迷宮案内犬のために建設された犬舎は、北国の環境に耐える丈夫な造りと十分な広さを持たせた建物になっています。
この犬舎では迷宮案内犬としての適性検査を通過した仔犬(訓練犬)が生活しています。
訓練犬と巡視員(候補生)はここで互いの相性をみてバディを決めるお見合いに臨み、
以降は巡視員寮で一緒に生活しながら訓練をすることになります。
お見合い後の犬舎は、訓練犬や案内犬の健康管理や傷病治療のための動物病院としての役割が主となります。

・厩舎

後ほねっこ男爵領の迷宮課顧問である芝村瑛吏氏のバディであるクイーンと、
その補佐役である瑛の南天のバディであるアヤフジ・フジトラのために用意されました。
雷電の飼育に必要な様々な条件を満たすために、芝村瑛吏氏の監督の下に建設されています。
この厩舎は雷電を6頭まで飼育可能な設備をそろえています。
これは今後、新たに雷電が加わった場合のことと、使用している部屋に不具合が生じたときに、
3頭まるごと別の部屋に移して調整や修理を行えるよう考えてのことです。

・ドッグラン

宮廷と寮の周辺の庭園の一部を改装して、迷宮案内犬の運動場にしました。
訓練とは別に自由に走り回って、パートナーと遊べる場所として用意されています。
運動場にはアスレチック設備もあり、年に数回、競技会も行われます。

じょり丸様プロフィール

写真
名前じょり丸
性別オス
犬種ゴールデンレトリバー
毛色赤茶がかった金色
性格穏やかで人懐こくおりこうさん。ちょっぴりお茶目。
役職後ほねっこ男爵領王犬
特技探し物
趣味お散歩、お昼寝、食べ歩き
好物お肉、パン、乳製品、甘いもの
好きなことブラシをかけてもらうこと、一緒に遊んでもらうこと
最近のブームフリスビーキャッチ、ボール探し
最近がんばったことアヤトラとかけっこ(惜しくも僅差で負けたようです)
お気に入りのもの藩王の古着(昼寝用の寝床にされているようです)
お気に入りの場所後ほねっこ男爵領
みんなに一言「わんっ!」(尻尾を振っている)

じょり丸様のお散歩

じょり丸様の日課は藩国内のお散歩です。
お散歩はじょり丸様にとって運動と藩国内の視察、国民とのコミュニケーション等とても大事なものです。
少々天気が悪い日でも、専用のコートを羽織り、フードをかぶってお出かけします。
じょり丸様のお散歩については、王犬としてその身の安全を図るために、
散歩コースを設定して警備をすることが検討されました。
しかし、コースを限定するとかえって狙われやすくなるのではないかという問題と、
そもそも危険感知能力についてはじょり丸様の方がずっと優れているという点、
なによりじょり丸様の楽しみを制限してはならないという意見により、
特にコースを限定することはなく、じょり丸様自身がお散歩コースを判断して散歩をしています。
じょり丸様はもともと人懐こい性格なので、ときには地域の子供たちと一緒に遊びます。

じょり丸様がお散歩に出かけるときは、必ず誰かがお散歩係として付き添います。
ちなみにこれはじょり丸様を散歩に連れて行っているのではなく、じょり丸様のお散歩に同行しているのです。
じょり丸様のお散歩用バッグには、散歩に必要な様々なものが入っています。
飲み水、おやつ、ボールやフリスビーといったおもちゃ、休憩用のマット、お手入れ用のブラシ等のお散歩グッズの他に、
万が一に怪我をした時のための救急セットや、連絡のための通信機、大型ライトに発煙筒といったものまで様々です。
そのため、お散歩係にはこれらの荷物を持って同行するための体力も必要なのです。

(政府広報:『じょり丸様のわんだふるらいふ』より一部抜粋)

じょり丸

brain
遊ぶときはめいっぱいはしゃぎ、執務中はぴしっとする。
じょり丸様は状況に応じた行動がとれるしっかり者。
ときどきお茶目なことをしたりしますが、実はとっても賢いのです。

eyes
澄んだブルーの瞳はじょり丸様の優しさと凛々しさが表れています。
その瞳はときに見る人の心を揺さぶります。
動体視力は抜群。そんじょそこらの攻撃なんか止まって見えるっ!

ears
たれ耳ですが人間よりもすぐれた聴覚を持つじょり丸様。
藩王がこっそり執務室を抜け出そうとしてもすぐに気付いて先回り。
実は絶技詠唱の無音領域も聞き取れるという噂があります。あくまで噂。

mouth
必殺技は『お尻を咬む』。お仕置きの他に叱咤激励の意味もある。らしい。
甘いものが大好きですが、太らないように書記長さんに制限させられています。
人語を話したことはないですが、犬士なので話せるはず。
でもみんな犬語でなんとなく理解しているからそれでいいっぽい。

nose
人間をはるかに上回るスーパー嗅覚。
探し物から敵味方の判別まで。一度嗅いだ匂いは忘れないぞ!

tail
長いふさふさの尻尾は、走行時の舵の役目を持っている。
じょり丸様の脅威の脚力はこの尻尾によって支えられているのだ。
触るととっても気持ちいい。

stomach
日ごろの運動量が多いこともありよく食べる。
好物はやっぱり肉と甘いもの。
歯のお手入れも欠かしません。王犬様も歯が命。

hands
犬なのにとても器用。
どういうわけだか過去にはI=Dを操縦していたという噂があります。

feet
太くてしっかりした脚により脅威の速度を発揮する。
走行安定性は抜群だ!

body
表面は硬い毛で覆われ、中はもこもこの保温性抜群の毛が密集している。
そのため寒さの厳しいほねっこでも元気いっぱいにお散歩できるのだ。
毛が空気をたくさん含んでいるので泳ぎも得意だぞ。
シャンプー後のふわふわもこもこの毛はさいこーです。

裏話

ある日の会話

南天「じょり丸様はきっと強すぎるぱわーを抑えるために犬の姿にっ!」
深夜「いやいやいや。ペンギンさんじゃあるまいし」
ユーラ「でもじょり丸様が人間の姿になったらどんな感じなんでしょうねえ」

(各自、想像中)

たらすじ「駄目です、想像の限界です」
いも子「いつものじょり丸様以外に思い浮かびませんっ」
南天「ませんっ」
深夜「ですねえ」
ユーラ「うむ」

結論:じょり丸様はそのままで最高です。

亜細亜の曙

嵐吹くとも 吹雪くとも♪

とある行軍歌より

〜〜〜〜〜

志半ばで倒れるならば、前のめりで倒れたい。
膝を屈するなんて中途半端は、彼女には似合わない。
最後まで力を尽くして、ぱったりとエネルギーが切れるのが、彼女らしい終わり方だと、
わたしは信じている。
どんな困難も、どんなに高く見える壁も、彼女を諦めさせることなど出来はしない。
いつものように、いつもの如く、それがごく当たり前のことでもあるかのように、彼女は
壁を乗り越えるための努力を始めるだろう。
見知らぬウェブサイトを閲覧することにすら、勇気を振り絞る必要のあった少女は、今や、
目に映る全ての苦しみに手を差し伸べようとしている。
それは嬉しくも寂しい変化であり、成長だ。

見守る相手だった彼女の背を、今、わたしたちは必至になって追いかけている。


『亜細亜の曙』


後ほねっこ男爵領の夏は、それなりに暑い。
湿度こそ低いものの、その分日差しは烈しく、強い。
こんな時ばかりは、船乗りの、布地の少ない服がありがたかった。
日差し避けの布の彼方、光で漂白された視界の果てに、少女の影を確認する。
緩やかに波打つ黒いロングヘアー、浅黒い肌。
こうして見ると、ごくごく普通ポイ女の子にしか見えない。
亜細亜ちゃんだ。
大きく手を振って挨拶する。
ぶんぶんと振り返してくれる姿に、わたしは、思わず微笑んだ。


「今日呼んだのは他でもありません」

「はい」

「この度、後ほねっこ男爵領は、亜細亜ちゃんを全面的にバックアップすることになりま
した」

「はぁ……って、え?」

暑い中立ち話もなんなので、と入った喫茶店で、わたしは開口一番こう切り出した。
亜細亜ちゃんの目が、皿のように丸くなる。


きっかけは、共和国の崩壊だった。
悶え苦しみながら分解しつつあった共和国を救うため、亜細亜ちゃんが藩国を飛び出した
とき、後ほねっこ男爵領は、ただただ遠くから見守ることしか出来なかった。
NWにその名を轟かす弱兵ぶり故に、である。
誰よりもヒロイックに振舞った彼女を、追う事も、手伝うことも出来なかったという事実
は、藩国上層部の心に深い影を落としていた。
亜細亜ちゃんの心と眼差しには、黄金の価値があると、藩国の誰もが信じていた。
だからこそ、それが無為に失われるのではないかと、恐れていた。
だが、危険だからと言って、安全な場所に縛り付けても、やはり、その眼差しの意味は損
なわれる。
……危険と承知で、見知らぬ誰かを救いに行くような亜細亜ちゃんだからこそ、我々はそ
の心を尊いと思うのだから。

ならば、と誰かが言った。
ならば我々がその心を守れば良い。
困難を分かち合い、共に危険に向かって走り出せば良い。
倒れる時は、亜細亜ちゃんを守って倒れよう。
彼女の心に黄金の輝きがある限り、一人が倒れても、きっと誰かが後に続くだろう。
例え志半ばで倒れようとも、最期に彼女を救えたならば、笑いながら逝けるに違いない。

かくして、後ほねっこ男爵領が次に取得するアイドレスは決定し、わたしは亜細亜ちゃん
に連絡を取った。


「まあ、そんなわけで」

「えっと、その……」

「よろしくお願いしますね」

爽やかに笑う。
こここそ、行きては帰れぬ分岐点。
表情は軽く。あくまでも軽く。何一つ危険などないかのように。
その決定が重要なものだと悟らせないよう。
悩む間など与えず、それがコンビニで雑誌を買うごとく、ごく当たり前の選択だと、そう思
わせなければならない。
焦りを表情に出さないよう、奥歯をかみ締める。
長い長い、一瞬。

「あ、はい。よろしくお願いします」

ぺこり、と下げられる頭。目の前に、亜細亜ちゃんの旋毛。
内心の快哉を押し込めて、私も頭を下げる。
まるで詐欺師にでもなった気分。

だが、それも仕方ないと自分に言い聞かせる。
亜細亜ちゃんという少女は、傷つく痛みを知るが故に、誰かが傷つくことを好まない。
故に、自分と行動を共にすることの危険に気づいてしまえば、絶対に承諾はしないだろう。
こっそりと影ながら見守ることも検討されたが、咄嗟の事態に即応できない可能性があるこ
と、そして、何よりも、もはや亜細亜ちゃんがただ守るべき存在ではなく、共に戦う戦友で
あるという事実が、その選択肢を選ばせなかった。

だから、今はまだ、こんな不意打ちのような方法を許してもらおう。
何時の日か、私たちの覚悟が亜細亜ちゃんに伝わる日が来ると信じて。

〜〜〜〜〜

我らが心は快活ぞ♪
我らが心は快活ぞ♪

ブリパ文

 設定文できあがりました。

要点

 涼しげな服装、白い肌で美しい人材、白い髪、頭環

 略帽、イエロージャンパー、航空用腕時計、細い手足

 宇宙軍制服、黒い肌、星の瞳、逆立ち、見えそうで見えない下着

周辺環境

 雪の中の王宮、コクピット、船内、ゲームセンター

 ヌケがあったら指摘して下さい。

 あと、相変わらずみなさんの口調はわからないまま書いていますので、積極的に修正してくれると助かります。

¥¥  六つ斑飛行場の近く、稼業を終えたパイロットや整備士たちが集まる店がある。ネオンと言うには慎ましい看板が点滅し、アスファルトをピンクや青に染めている。

「えっと、ここで良いのかな?」たらすじは軽トラックの荷台から降りると、ローブのフードを跳ね上げる。ぶんぶんと頭を振って灰色がかった白い髪を整える。空色をした瞳が何となく不安げにその店をのぞき込んだ。「航路さーん、歓迎会の集合場所……。ですよね、ここ」

 答えるように軽トラックがばうんとはね、ぷしゅうと排気を漏らした。そして、ドアが開きごろごろと転がりだしてくる有象無象。

「ぎゅむー、シートに乗ってたのに荷台のジャガイモみたいな心持ちですよう」海の色の瞳、人の良さそうな魔法使いが立ち上がって土埃を払う。いも子である。

「む、く。飛行場の備品予算、そんなにけちってないのになぁ」黒みがかった銀色の髪から埃を落としくしゃみを一つ。これはヤサト。 

「ご、ごめん。車がまさかこんなにひどいとは」運転席から降りてきたのは、2人とは異なるイエロージャンパー姿の航路。航空用腕時計を見やると予定時刻の3分前、ギリギリセーフと言ったところ。

「書記官さんがいってたのは、このゲームセンターだと思うけど……」

 そう言って4人は店に足を踏み入れた。

 真っ先に気がつくのは、雑多な喧噪、耳を聾する電子音である。どうやら間違いはないようで店の中には幾人も略帽やイエロージャンパー姿のパイロット達がいる。

 壁際にピンボールが4つ、奥には三面連結モニタの大型筐体にレースゲームが並んでいる。クレーンゲームやコインゲーム、プリクラなどは一切ない。

 ついでに言うなら、色っけもにぎやかさもない。世にはアミューズメント・センターなどの言葉もあるというのに、真っ向昔懐かし、ちょっといかがわしのゲームセンター。いわゆるゲーセンだった。

「あ、『式神の城III』が稼働してるー」、「へー50円台なんてあるんだ」

 置いてあるゲームの年代は幅広く、20年前のゲームすら現役稼働だった。シューティング、アクションが多く対戦格闘は少なめ。見れば壁には各ゲームのハイスコアが記されている。どうも月間で集計しているらしい。眺めているうち航路はあることに気がつく。ランカーの名前に見覚えがあった。というか、これはコールサインである?

「ASIAって亜細亜ちゃんだよね?」「じゃあ、この最上位を独占しているFBKって、吹雪先生?」

「正確には、吹雪先生の奥さんだがな」

 疑問に答えたのは、ほねっこの古強者Millbackだ。日に焼けた肌でにやりと笑う。

「あの車で無事たどり着けたか、おみごと」

 と、ちょうど店の奥、パイロット連中がたむろっている一角で歓声が上がる。

 どうやらケリがついたな……。そう呟くとMillbackたらすじ航路いも子をぐいぐいと引っ張ってゆく。

 奥にあるのは、シートのついた大型筐体だった。2台並んでおり、壁の大型スクリーンに画面が映し出されている。到着した仲間を認め、藩王火足水極はにっかと笑って手を振った。

「よーう! 間に合ったな。これなら、歓迎会の前にランキング作れそうだ」

 どーんと爆発音がして、大型筐体がゆれ、中からユーラが放り出されてくる。ご丁寧だかなんだか、とんがり帽子をかぶせられ首からは“脳みそ半分飛びましたー”とカードがぶら下がっている。

「は、藩王。これ、実戦よりも難しくないですかっ!」

「ふふふ、星鋼京のI=D博物館で試作されてるの借りてきた特別製だからな。筐体は実機のコクピットをそのまま利用し、描画エンジンや感覚フィードバックはシミュレータに手を入れた究極のゲームマシン! 子供の頃の夢今ここに、大人の力で復活! これが本当の大人買いってヤツだっ!!」

 返答に困る航路たらすじいも子。だからどーしろと?

「というわけで、歓迎会の前に各人の腕前を披露してもらおうっ! ふふふ何人生き延びることができるかなぁッ。規定点数に届かなかったヤツは航空基地で一週間の集中訓練をプレゼント!」

「「えええええ〜〜〜ッ!」」

「そ、そんな。よりによって12ターン対応でパイロット外しているときにこんなことやんなくたってッ!」

¥¥ このあたり、藩王の横暴へ抗議してください ¥¥

 だがしかし、藩王の命令は絶対。こうして強制訓練にかり出されるか否かのデスゲームが始まった!

「ぎゃぼー」ヤサト、3面のほねっこ攻防戦にて撃墜。

「うぎゃー」たらすじ、3面の対白オーマ戦にて撃墜。

「わーん」いも子、同じく白のボラー戦にて撃墜。

「どうしたどうした! 根源力即死がないんだぞう、良いとこ見せてみろ!」

 当時ボラーを見ただけで撤退した藩王が言えた台詞ではないのだけど調子に乗った馬鹿は止まらない。まして、アーケードゲームのシューティング・ゲーム、3面以降は難易度が上がるのである。

「くっ、さすがにこれはッ!」航路、4面ダンジョンでダンボール無双中にエネルギー切れ。撃墜。

「っと、ケントなんて久しぶりだ」Millback、5面宇宙戦にて撃墜。

「ははは、どうしたどうした? だらしないぞみんな!」

 自分が勝ったわけでもないのに勝ち誇る藩王、三下悪役ムーヴが板についてしまっている。設定国民に見られたなら、それだけで国民流出が始まりそうな勢いである。

『……駄目だこいつ、早くなんとかしないと』

 誰もがそう思った時、バンと店の扉が開いた。

 その数は3人。

 色鮮やかなイエロー・ジャンパーに濃紺の宇宙軍制服。しかし、カスタムにカスタムを重ねた制服はもはや、本来の目的。画一化された威圧的なシルエットを備えていない。裾の各所にレースをあしらい、上着と言うよりもビスチェというのがふさわしい。

 しなやかな肢体がえがく美しい稜線、それを鋭角に彩る装いはあくまで挑発的。

「これ以上馬鹿な振る舞いは、たとえ藩王と言えど許しません」

 短く切りそろえたプラチナブロンドに白磁の如き肌、その下から覗く頭環は高位北国人の証。ショートパンツのボーイッシュな姿は凛々しく可憐。

「くーるしゅーたー、深夜。見参」

「しばらく秘書官業務で留守にしてたら……さぁ、どうしてくれましょうか?」

 ウェーヴした髪を掻き上げ、ぎらりと目を光らせる。黒ストはデキる女の証。

「ひーとぶらすたー、南天。推参」

「え、えっと、無理を言うのは良くないんじゃないかと」

 あふれる黒髪にちょこんと略帽を乗せ、かなり恥ずかしそうにもじもじしながら登場したのはニーソックスの後藤亜細亜。問答無用、後ほねっこ男爵領のヒロインである。だが、何か言いかけて、口ごもる。

「ほら、亜細亜。教えたでしょう? 決める時に決めるのがヒロインってものよ! いいからやってあげなさい。ここは紳士の社交場、ルールを守って楽しくゲーム……」うしろから、声を掛けるのはほねっこ最強の存在、吹雪先生の奥さんである。

「く、くいっくさんだー、亜細亜。参上」そう言って真っ赤になる亜細亜。

 そして後ろで満足げにうなずく吹雪先生の奥さんは、びしいっ、と火足水極を指さし言った。

「コイン一枚の前には地位も名誉も関係ないっ。国王相手だからといって、弾のスピードが落ちる? 自機のボムが増える? 残り時間が増えたりする? しないわ、それが紳士の社交場ゲームセンターの掟。そこにパワハラを持ち込むなんて、たとえ天が許しても私が許さないッ!」

「ああっ、あれは!」「み、ミセス・ブリザードッ!」「この間、50円三枚で3時間粘ってハイスコア全部書き換えていった!」「ショットボタンが連射に耐えきれず砕けたって言うぜ」「定規つかって連射してたヤツがフルボッコにされたって」「やり過ぎてほねっこ城市のゲーセンすべて出禁になったんだろ」「だから、こんな地の果てまで」「かわいそ「ぐべらっ……!」

 丁寧に紹介してくれたパイロット達、最後の言葉が不明瞭だったのは投げられた椅子を顔面でキャッチする羽目になったからだ。

『だれか吹雪先生に言いつけたほうがいいのでは』摂政ユーラは言葉を飲み込む。その思慮が彼をここまで命長らえさせてきた。だが、摂政という外付け良心の沈黙が馬鹿の増長を導く。

「ほほう、奥さんといえども藩王に向かってそのもの言いは無視できませんな? これはパワハラではありませんよ。そう、いうならば友愛のためのテストです、テスト。いかがですかな? 一勝負」

「だ、だめだ。みんなっ…!」航路が叫ぶ。「このゲーム、普通のゲームじゃあ、ない! 途中から、敵の量がッ」

 吹雪先生の奥さんはフンと鼻を鳴らす。

「その程度の勝負、あたしが出るまでもない。あたしの弟子達“ブリザード・パイロット”なら、あのおとなしい亜細亜だって勝てるわ」(注:ブリザード・パイロットは奥さんからの派生ではありません)

「えええええっ! そ、そんな?」驚く亜細亜。

「いえ、亜細亜ちゃんが出るまでもないわ。あの馬鹿藩王には少しばかり熱いお灸を据えてやる必要があるわね」と南天

南天さん、この責任まずは留守を預かっていた僕たちに任せてください」すっくと立った深夜が筐体の前に立つ。

 ちーん、音を立てて弾いたコインが、すっぽりと投入口に吸い込まれ「Player 1」と表示が出る。

「勝負です、藩王!」

「む、地上面であえて機体はケントを選ぶ?」「高速一撃離脱機体で市街戦をクリアする気か?」

 一面は地上戦、高速機体の取り回しは困難。そのはずだった。しかし、 「な、なんて精密な操作なんだッ!」「あの猛攻に全然ひるむ様子がないぞ?」「まるで精密機械だ」「つ、冷たい。機体の動きに迷いもためらいもないっ?」

「いや、でも」たらすじが呟く。「ここから、地獄が……!」

「「こ、これはっ!」」

 お前らパイロットやめて解説で飯を食えとツッコまれそうなくらい息のあった掛け合いを続けていたギャラリーが息を呑む。

 弾が六分、敵が三分、でたらめといっていい画面である。無理だ、誰もが思った。

「できるわ、ブリザード・パイロットなら」にやりと笑う吹雪先生の奥さん。そのときギャラリーは信じられないモノを見た。

「ああっ、深夜が逆立ちしているッ!」「なんであんな無理のある体勢で?」「待って、あのジョイスティック捌きは」「そうか、体重移動だ? 全身の体重移動がスムーズな機体操作を可能にしているッ!」

 一つ、二つ、三つ。着実に敵を落としてゆく。深夜、ブリザード・パイロットの面目躍如といったところである。

 だがしかし、火足水極は蛇のように笑う。そして高指向性スピーカーで深夜の耳にだけ届く言葉をささやく。『ヤガミとは一体何があったのかな?』、「な!?」

 瞬間、掌に溢れ出す汗。精妙なコントロールと体勢維持、それを崩すには十分な汗。

 爆発音と共に、深夜が放り出される。三角帽で首には“マヌケここに眠る”のボード。

「おやおや、口ほどにもないようですなぁ」けきょけきょとわらう藩王。突然の不調にはギャラリーは誰も気づかない。しかし、ブリザード・パイロット達の顔には緊張が走る。

「く、ごめん。みんな!」悔しがる深夜。その肩を叩いて、南天がステージに上る。

「大丈夫。仇は討つ」

 選んだ機体はフェイクトモエリバー。宰相府でも扱った南天の愛機である。ステージは空中迎撃。高空の覇者を駆って、破滅の炎をまき散らす。

 大空の暴君のゆくところ敵は四散し、崩れ落ちる。まさに破壊、蹂躙、大打撃。玉砕、粉砕、大喝采。といった有様。

「まるで、業火が機体の姿を取っているみたいだ……」呟くのはヤサト。が、爆炎の中から敵機が一つ。高速機体の出現によりドッグ・ファイトに突入する。

 そのとき、南天の目がぎらりと光り額の第三の目が覚醒した(ように見えた)。

 風に気がついたのはいも子だった。『空気が、集まっている!?』。その感じ方は正しい。室内にもかかわらず、渺々と吹き付ける風がステージに向かって、いや、南天の筐体に向かって集まってゆく。

「こ、これは一体?」ここぞというタイミングで疑問を口にするたらすじ、待ち構えていたように解説に入るのはMillbackである。「上昇気流だ。南天の高速スティック捌きが熱を発し、上昇気流を生み出しているんだ!」

 見よ、筐体の上には陽炎がたなびき、風が南天の周りを渦巻いてゆく。カッと目を見開いた時、南天の体は上昇気流に乗って羽のように舞い上がる!

「な、なんて早いレバー入力!」「そうか、空中浮揚によってレバー操作にかかる荷重を軽減してるんだ」「羽毛が触れても動きを拾うほどに鋭敏なレバー操作だ!」「なんて離れ業なんだ」「み、見える。羽のように舞うフェイクトモエが!」

 敵機を翻弄するフェイクトモエ。その挙動はまさしく帝國が誇る翼にふさわしい。だが、その操縦者の耳にまたも悪魔のささやきがきこえてきた。

『なぁ、南天さあ。さすがに現役女子高校生とならんでへそ出しって、年齢考えるとイタくないか?』

 大ゴケした。

 どっかーん、これは画面で機体が爆発する音。

 べちゃ、これは南天が顔から筐体に落下した音。

 それこそ、どっかのコントかなにかのように南天は見事なコケを披露し顔からスティックに突っ込んだ。

 さすがの大惨事に、強者揃いのパイロット達も一瞬沈黙である。

 ああ、アレはイタい。顔も、指摘も何もかも。

 哀れ南天、三角帽で放り出される、首のカードには「ぽんぽん冷やしちゃいけません」まるっきり子供扱いの恥辱である。

「ふふふ、口ほどにもないな南天。あとで、毛糸の腹巻きを医療費として予算計上しておいてやる」

 得意絶頂、カリスマウナギ下がり。新国民歓迎の意味が全くなくなっている。

「こ、このままでは藩国の恥部がッ」焦るユーラ

「大人げない、いろんな意味で大人げないッ!」ため息をつくMillback

 そして藩王は、唇を噛む吹雪先生の奥さんに語りかける。

「ブリザードパイロット。残るは亜細亜ちゃんのみか? どうです、そろそろ伝説のFBKが出ないと話にならないのでは?」

 サンダルのまま前に出て、エプロンからがま口を取り出す吹雪先生の奥さん。ギャラリーにざわめきが走る。

「つ、ついにFBKがッ!」「どんな技を見せるんだ?」

 ――だが、そのとき。

「……亜細亜?」

「やります」

 一念発起。きりりと唇を引き締め、亜細亜はコインを弾いた。

「私が今まで遊んできた、このゲーム。絶対に負けない! ゲームでの戦いは、退かない!」

 “Player 1 Entry!”

 合成音声が弾幕舞踊の始まりを告げた。

¥¥ 「選択機体は、ダンボールか」航路が呟く。シールドの量が多く、若干の被弾も許される。何よりも低スピードで扱い易い。初心者向けの機体だ。クリア重視の自機選択である。ボムのじょり丸ファイアーも他の機体にくらべて一発多い。

「で、でも。あのゲームにおいてダンボはあくまで操作の習熟に使う機体じゃ」たらすじが初心者騎士団での経験をもとに指摘。

「そ、そうだよ。銃砲は他に負けちゃいますよ」これはいも子。その通り、火砲の充実性と機動性では他の機体に一歩劣る。ボス戦までの道中をパターン化していないと、辛い。

「フ、そうね。確かにみんなそう考えるわ」不敵に笑う吹雪先生の奥さん。「でも、このゲームでのダンボールの価値は火砲によらないわ」

「白兵戦?」ユーラが弾かれたように顔を上げる。「たしかにこのゲーム、ダンボの白兵戦は強化されてます。けどっ!?」

「確かに、ダンボは白兵戦で性能を示した。けれどアレは、陣地形成ができてたり、戦う場所を選べたからだ」かつてダンボ無双を成し遂げたMillbackが冷静に指摘する。「まず間合いに入らなければならない。弾幕を避けて敵の懐に入るなんて、そう簡単にはできない」

「どうかしら?」

「中ボス撃破!」「一面ボスが来た」「うわああ、すごい極太レーザーだ」「避ける隙間がないぞっ」「ああっ、亜細亜ちゃんが飛んだ!」驚くギャラリー。

 そう、確かに亜細亜はいま筐体の前で高く飛んだ。そして、上空で両の手の甲をクロスし、一気に振るう。電流火花がスパークし、ダンボールの動きが加速する。

「な、なんだ! あの動きは」「ダンボールが、敵のレーザーをすり抜けている!?」「いや、瞬間移動しているッ!」「ダンボールが稲妻のようだ!」

「そう、あれこそがブリザード・パイロット奥義の一つ、ライトニングサンダー!」

「静電気干渉でゲームの基盤に直接干渉、自機のあたり判定を一瞬消失させるという荒技ですっ!」

 拳を握り、三角帽子のまま解説する南天深夜 。

「……それってやっぱりチートなnごぺらばっ」

 吹雪先生の奥さんの裏拳がヤサトの指摘に強制介入する。というか、定規連射で人をボコにした人間があの技にはOKってどうなのよ。「馬鹿ね、道具を使っていない以上、アレは技なのよっ」は、すみません。

 亜細亜のダンボールは敵ボスに肉薄、スコップの打ち込みが唸り高速撃破する! ギャラリーの興奮は極大に達した。

「くぅ、このままではいかん」

 二面、三面も着実に撃破されてゆき、スコアの伸びも順調。まさか亜細亜がここまでやると思っていなかった藩王火足水極、亜細亜の弱みなど抑えてはいなかった!

「こうなったなら……!」火足水極は、もう一つの筐体に乗り込み、レバーでコマンドを入力する。「↑↑↓↓←→←→BABAっと、エクストラステージ、後ほねっこ宮殿!」

 ヴィーッ、ヴィーッ、ヴィーッと警報ブザーが鳴り、画面には”Caution!! Gate Open!”の文字。

「ええっ、一体何が?」とまどう亜細亜。すると画面がぐにゃりと曲がり、ダンボールがそのゆがみに吸い込まれていく。「こ、これは?」「ゲートが開いた?」「この場所は……」「王城だ!」

 その通り。

 スクリーンに描かれたのは新王城、なじみ深い後ほねっこ男爵領の町並みである。粉雪舞う王宮、その真正面に立つのは異形の大型I=D。ハリネズミのように火砲を備えたそれは、禍々しい砲塔を亜細亜の駆るダンボールに向ける。

「ここまでやるとは、さすがといってやろう。しかし、この私に勝てるかな?」

 雪の中から出てくる敵、敵、敵。

 大型I=Dの援護射撃を受け、あまたの敵機がダンボールに集中する。

「ふははは! どうだ、怖かろう!!」

 あっという間に、緊急回避にボムが費やされ、シールドが減ってゆく。

 まがりなりにもクリアを前提に構成されているステージとは異なり、このエクストラ・ステージは藩王の思うがまま。バランスなど知らぬとばかりに大口径レーザーと誘導ミサイル、浮遊機雷がばらまかれる。

「だ、駄目だ!?」「残機ゼロ!」

 のこるは、画面上一機のみ。

「か、勝てないの?」呆然とスクリーンを見る亜細亜、そのとき吹雪先生の奥さんが叫んだ! 

「亜細亜、忘れちゃ駄目。あなたは1人で戦ってるんじゃない! 確かに筐体の前では1人よ、でもその後ろにあなたの後ろに何人もの仲間がいるの! それを思い出して!」

「くっ」亜細亜は飛んだ、腕をこすり静電気干渉を起こす。

「ふはは、ライトニングサンダーで操作できるのはせいぜい一つの基盤! 二つの基盤に効果を及ぼす電気を腕の振りだけで起こせるモノか! そうれ、後一捻りッ!」

 そのとき、ごうと風が吹いた。

「ああッ、あれは!」「筐体の上に黒雲が?」「雷雲だッ! なんでこんな所に?」

深夜の『冷気』と南天の『炎』その強烈な温度差がさっき風を呼んだ。けれど、亜細亜のオーラがさらにその風を局地的な低気圧とし、積乱雲を作り上げた!」状況を分析するMillback。「なんてこった、こんなことが可能だなんて!」

「聞いたことがあります」ユーラが続ける。「かつて、夏の同人誌即売会中、参加者の熱気が建物の中に雲を作ったことがあるとか」

「今この場の熱気があれば、それくらいのことは可能よ」三角帽子のまま南天が言葉を裏付ける。

 ――そう、1人じゃない。

 亜細亜の瞳に星が映った。その輝きは、仲間達の信頼の輝き。ゲームに賭けた青春の輝き。

「今よ! 亜細亜、あなたならできる。あのわざを!」

 空気がイオン化し、雷鳴がとどろく。亜細亜の作り出した静電気が二つの筐体に雷撃の道筋を開く。そして、迅雷の閃光が荒れ狂った!

「ライトニングサンダー……スパークノヴァ!!」

 静電干渉場は局地的落雷を呼び、その落雷は火足水極の筐体をも撃った。

「見ろ、ダンボールのスコップが!」「稲妻を受けて長く伸びてるッ!」「まるで稲妻の大剣だ」

「く、いかん。まさかここまでの大出力とはッ」離脱をはかる大型I=D。が、火足水極の操作が一切受け付けられない。「ま、まさか? 静電気干渉でこちらの操作を奪うなんてッ」悲鳴を上げる火足水極

「いきますッ!」

 神速の踏み込みでダンボールが大型I=Dを捕らえる。残像を残し、まるで数体ものダンボールがスコップを振るっているかのようだ。その道筋に触れた敵機はそれだけで爆発し花道を飾った。

 棒立ちになった大型I=Dのシールドが瞬くうちに削られた。  そして、轟音。

”Enemy Defeated!”

 静電干渉は筐体の射出システムにも及んだのか。数倍の強さで放り出された藩王はゆっくりと宙を舞った。

「あれ、おかしいな。負けたのか。ここまでやって……」床に激突するまでの数瞬を火足水極は呆然と眺めた。眼下で沸き立つパイロット達、藩国民達。そして、やはり空中にいる一足先に着陸する亜細亜。

 愚王は見た、亜細亜の絶対領域、ニーソックスとスカートの間が作り出す聖域が、今まさにこのアングルからのみ鉄壁の守りを崩そうとしているのを  。吹き飛ばされたこの角度、この位置、この高度からのみ、宙返り中の亜細亜の絶対領域のその上のあのロマンがええと良いのかこれうわ見える見えるもう少しもう少し神様お願いあと数秒です風よ吹け嵐よ起これ後一吹きでちらっとぴらっと見えそでみえない桃源郷が青春の1ページが甘酸っぱい記憶が…」どべちゃ」

 この設定文がピンクの設定文として没になる直前、世界の善意が藩王の意識を刈り取った。火足水極はゲーセンの屋根に頭を突っ込んで奇怪なオブジェのようにぶら下がった。

“Mission Complete!“、“Extra Stage Clear!“

 後ほねっこ男爵領、新着用アイドレス。“高位北国人+黒い舞踏子+ブリザードパイロット+名パイロット”の華々しいデビューはこうして幕を閉じた。

 その後のどたばたはみらのが連れてきた吹雪先生によって収拾された。これにより藩王は一週間ほど首にギブスを巻くだけで済んだ。吹雪先生が間に入らなかったら、12Tの外交団参加も危うかったろう。

 危ういと言えば、ブリパの格好をしようとした奥さんに「へそ出しする年じゃ……云々」を口にした誰かが藩王に隣に同じようにぶら下がったり、みらのが亜細亜にゲーム勝負を挑んだりしたけどそれはまた別の物語。

 たぶん、今日も後ほねっこ男爵領は平和である。 ¥¥以上

藩国地図修正版

ちょっと見やすくしてみましたー。
藩国地図修正版2 藩国地図修正版

技術的な諸々とか、要点の駅とかは、他の方にお任せっ!

長距離輸送システム


風が吹いた。
一言、呟く。

「まさに地の果てだな」

夏も近いというのに、一抹の冷たさを含んだ風が、冬の厳しさを連想させる。
こんもりと盛り上がる針葉樹の林も、青々と揺れる麦畑も、水路のはしるこじんまりとした町並みも、
やがては白い風景の中に埋没するのだろう、と、そう自然に納得させるものが、この国にはあった。
それが、わたしが訪れた、後ほねっこ男爵領という国の印象だった。

省みて、振り仰ぐ。

だが、と思う。
だが、これだけは違う。
この塔だけは、例え雪が全てを塗りつぶそうとも、屹立し続けるだろう。

そこには、天をも衝かんとそびえ立つ、巨大な玄い塔があった。
塔の頂きは、山をも越え、遥か彼方、天頂を目指しながら、霞み、視界から消えていく。
小さな町ならば、丸々ひとつ飲み込めるのではないかと思うほど大きな基底部には、何両ものディーゼル車両が出入りしている。

それは、空へと届く塔だ。
それは、星の海へと続く階梯だ。
それが、わたしの夢の形だ。

空を行く鉄道列車。
人は、形になったわたしの夢のことを、長距離輸送システムと呼ぶ。

無論、その胸躍る光景はわたしの夢想でしかない。
振り返ったわたしの視線の先に広がるのは、セラミックで覆われた巨大な塔の偉容ではなく、広がる草原と草を食む山羊という、ごくごく牧歌的な風景。
今はまだ、そんな巨塔――わたしは軌道塔と呼んでいる――などわたしの脳内にしか存在しない。
『今は』、『まだ』
だが、わたしには見えるのだ、星を目指して、空を昇る幾つもの列車が。
必ずや、この手でそれを作り上げてみせる。
そのために、ここまで来たのだから。


軌道上まで届く高塔を建設し、その内側を二重螺旋を描くようにして軌条を設置。
その軌条を走行するディーゼル列車によって、宇宙と地上とを繋ぐという地上-宇宙間の長距離輸送システムの構想。
それ自体は、けして目新しいものではないし、カーボンナノチューブの発明により、理論上、不可能ではないと言われて久しかった。
しかし、技術的に可能であることと、実際に建築可能であるということの間には、文字通りの意味で天と地ほどの差が存在する……正確には、存在した。
驚くべき事に、この徹頭徹尾突飛としか言いようのないシステムを採用した藩国が、すでに二国ある。
時に必要は常識(または良識)を凌駕するという現実の、好例といえるだろう。

そしてまた一国、必要が良識を超越してしまった国がある。
その国の名は、後ほねっこ男爵領。
NW屈指のド田舎と名高い、大分の小国である。
逗留ACEの数くらいしかウリがないこの国が、どうにかしてNW全体の役に立ちたいと、考えに考えた結果こそが、長距離輸送システムの設置だった。
長距離輸送システムさえあれば、聯合国の戦力を宇宙に上げられるだろうという、いじましいというか涙ぐましい考えの下、建設が決定されている。

だが、誰かの役に立つという事は、同時に、敵対する誰かに不利益をもたらすという事でもある。
先だっての空爆の際、まっさきにながみ藩国の長距離輸送システムが破壊された事件は、まだ生々しく記憶に残っている。
帝國と天領共和国との休戦がならなかった以上、宇宙へ戦力を輸送できる長距離輸送システムが、重点的に狙われるであろうことは想像に難くは無い。
それでもなお、この弱小藩国は、あえて虎の尾を踏んだ。

それはヒーローになりたいという虚栄心故なのかもしれないし、tera領域帝國全体の利益を考えた冷徹な思考に基づく判断なのかもしれない。
だが、そんなことは、わたしには関係ない。
軌道塔をこの手で造る機会を与えてくれたという事実だけで、十分だ。
それ以上、何もスポンサーには望まない。

わたしは、天を衝く頂を、螺旋を描く軌条を、造り上げたい。
ただのディーゼル車が、宇宙まで駆け上がる姿を、この目で見たい。
わたしが造り上げる軌道塔は、完成した次の瞬間にはレーザーの光の中に崩れ落ちる運命なのかもしれない。
だが、バベルの塔と、呼ばば、呼べ。
一瞬で構わない。
わたしは、この手で宇宙に触れたいのだ。


「あの……それで、立地の方は如何でしょうか?」

背後から、遠慮がちな声。
いつの間にか、後ほねっこ男爵領側の建設担当者の一人――要は体の良いお目付け役――の少年が、わたしの後ろに佇んでいた。
わたしはスポンサー向けのとっておきの声音で応える。

「ええ、申し分ありません。素晴らしい軌道塔が出来上がるでしょう」

それは良かった、と深夜少年は胸を撫で下ろしたようだった。
わたしの横に並んで、彼もまた、空を見上げる。
その横顔は、ひどく真剣だった。

「国内の鉄道網整備は、順調です。計画通り、軌道塔の建築には取り掛かれるでしょう。
 よろしくお願いします。我が藩国の命運を、貴方に託します」

大袈裟な、とわたしは笑えなかった。
軌道塔の設計と建築に、わたしが全てを賭けている様に、彼らもまた、譲れない何かをわたしの軌道塔に賭けたのだろう。

ならば、我々は運命共同体か。

再び、後ほねっこ男爵領の草原に風が渡る。
風に含まれる一陣の冷たさは、冬の気配をかすかに残していた。
それが今、たまらなく心地よい。

「ええ、ええ。確かに託されました。
 約束しましょう。これ以上はない最高の軌道塔を作り上げる、と」

笑う。
隣の深夜少年が、目を見開くのが分かった。
突然、わたしのまとう雰囲気が変わったからだろう。
だが、きっと今のわたしの笑顔は、悪魔のように頼もしいに違いない。

約束は、必ず果たされるだろう。
何故ならば、託された信頼に全力で応えることだけが、わたしの夢に全てを賭けた彼らへの唯一つの返礼となるのだから。
打ち上げ施設の戦い(仮&途中)

にゃんにゃん共和国で起こった災禍がわんわん帝國へと伝播しつつあるテラ辺境域。
混乱未だ収まらぬこの星を我が物にすべく、にゃんにゃん共和国の天領が大艦隊を派遣しつつあった。。
辺境の帝國と共和国は敵の先遣隊を迎え撃つも、生き残った大型I=Dが地表を穿つ。
いくつもの国の施設が破壊されてゆく。
そのなかにはFVBの宇宙開発センター、ながみ藩国と都築藩国の宇宙行き長距離輸送システムもあった。
これらへの被害は、宇宙への輸送力が大幅に減少することになる。
すなわち、共和国天領の主力艦隊が何の障害もなくテラを攻撃できることを示す。
辺境域各藩国の滅亡がカウントダウンされると言えるだろう・・・

ここは後ほねっこ男爵領。
テラ領域の日本に似た孤島列島の大分の場所に居を構えるわんわん帝國の藩国である。
辺境域にありながら他の藩国より開発が遅れているので、一言で言えば田舎だ。
田舎なのに幾度か戦火に晒され、その都度復興してきた不屈の藩国といえよう。
宇宙からの攻撃に怯えつつも、日々を牧歌的におくっていた。

少し前はこの藩国にもちょっとした混乱が生じていた。
治安維持活動を担っていたISSの崩壊と、にゃんにゃん共和国の市場における食料取引の停止。
その結果、大量の難民を発生させたのだ。
難民の一部、およそ三千万人が帝國との国境近くまで押し寄せ、
辺境を訪問していた帝國の皇帝陛下が受け入れを命じた。
当然、我らが男爵領でも難民を受け入れる。
受け入れにあたり、様々な難問があったが藩王以下の国民が努力したおかげで混乱は収束していく。
その難問の一つが就労であり、その解決は長距離輸送システムの建設となった。

後ほねっこ男爵領藩国には悩みがある。
I=D生産と運用のための資源と燃料の確保に難儀し、
国民数が少ない上に連絡つかない人もいるのでさらに少ない人数での国家運営など幾つもある。

そして極めつけが戦闘で活躍できないこと、である。
−読み物:アイドレスで戦闘活躍出来ない国の調査報告0424−で取り上げられているように、
ACEと施設にそれぞれ5枠ずつ使ってる。
ようするに着用アイドレスの強化があまりなされていない。
あまりにも弱いんで個人ACEの廃役を防ごうとあちらこちらに出向くACE後藤亜細亜ちゃんの支援ができないほどだ。

それら藩国の欠点を補うべく、なのかどうかは分からないが、
考え出されたのが宇宙への往復が可能な長距離輸送システムであった。
今現在、宇宙からの脅威にさらされているテラ領域だが、
迎え撃つための宇宙への輸送力が大幅に減少していた。
このままでは例え地上で軍隊が待ち構えていても、軌道上からの攻撃で全ての藩国が滅亡する可能性が高い。
極大といってもいい。
そこで男爵領は大艦隊を迎え撃つための戦力を宇宙へ送り出す輸送力の構築を急いだ。
今もどこかで戦ってる亜細亜ちゃんを守るべく、自分達の戦いを始めたのだった。

しかしながら、後ほねっこ男爵領は北国なので冬は長い。
冬になれば、長距離輸送システムの構築は休止せざるをえない。
何時来るか分からない脅威を前に、一般国民達を恐怖と寒さの両方に震わせるわけにも行かない。
冬が来る前に終了させる。
その為には今以上の労働力が必要になる。
輸送システムの建設を特急で終わらせるために、受け入れた難民に特急建築で増えた仕事を分担することにした。
こうして現国民と、新国民が一丸となって宇宙行き鉄道の建築に携わっていく。
同じ釜の飯を食えば、自然と連帯感は生まれていく。
チャンスがピンチになりやすい後ほねっこ男爵領にしては良い仕事であった。
これも天の配剤か、と藩王は涙する。

長距離輸送システムと同時に国内線鉄道の建築も同時にスタートした。
男爵領は狭いながら起伏に富んだ土地になっている。
北側の首都、新・ほねっこ城市を中心とした山里と、
工業団地に飛行場と湾のある南側の海里はたてがみ峠によって分断された形を成している。
二つの里を結ぶ新ほねコロ街道はあるが、通行規制があるために行き来が非常に不便なのだ。
亜細亜ちゃんにもド田舎と言われる原因の一つだろう。
そんな土地での暮らしを甘んじて受け入れている国民達ではあったが、
だからといってそのままにしておくわけにもいかない。
脱・ド田舎の決意を持って国内鉄道を整備する。
ある意味、悲願なのかもしれない。

国民が一丸となって工事を突貫したおかげで、冬が来る前に大事業はは終了した。
作り上げられた路線は四つ。
山里と海里をつなぐ<あじあ線>、海里と工業地帯・沿岸地帯を行き来する<みらの線>、
山里とその周辺の生活路線となる<ふぶき線>、そして宇宙への架け橋ならぬ軌道塔線路<トーゴ線>。
どれも男爵領に逗留しているACE達の名前を貰っている。
ACEへの愛の賜物だろう。
吹雪先生の奥さんの名前だけ使われていないが、後ほねっこでは奥さんといえば彼女がまっさきに思い浮かぶほどだ。
誰も彼女の名前を知らないのだ。
奥さん自身に聞いてもあいまいな返事しか返ってこない。
後ほねっこ男爵領の七不思議の一つにランクインされそうな気配である。

鉄道の完成セレモニーもそこそこに、宇宙からの脅威を迎え撃つ部隊を迎え入れる準備が始まる。
そして冬がやってきた。

(後はまだ製作中。)
更新日時:2009/07/28 00:10:45
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参照:[toptest] [SideMenu] [後ほねっこ男爵領]
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