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後ほねっこ迷宮防衛計画

後ほねっこ迷宮防衛計画

L:ほねっこ迷宮防衛計画(イベント) ={
t:名称 = ほねっこ迷宮防衛計画(イベント)
t:要点 = 決意の表情,避難訓練,周りを見回す人々
t:周辺環境 = 人気のない地表部分,肩を寄せ合う人々
t:評価 = なし
t:特殊 = {
 *ほねっこ迷宮防衛計画のイベントカテゴリ = 藩国イベントとして扱う
 *ほねっこ迷宮防衛計画の効果 = 迷宮深部に迷宮城砦が建造され、防衛計画が策定される。
 *ほねっこ迷宮防衛計画の効果2 = 迷宮城砦は緊急時の避難所兼防衛拠点として扱われる。装甲99として扱う
 *ほねっこ迷宮防衛計画の効果3 = 迷宮城砦を攻撃するには迷宮を突破する必要がある。
 *ほねっこ迷宮防衛計画の効果4 = 避難訓練により、藩国民の迷宮城砦への避難速度が向上する。住民は損害なく城塞まで避難できる。
 }
t:→次のアイドレス = 迷宮巡視員(職業)、ダンジョンパイロット(職業)、迷宮案内犬(職業)、迷宮修行(イベント)
}

#HQボーナスにより、迷宮の複雑さが上がる



会議は踊る

後ほねっこ迷宮防衛計画


(前略)――以上のように、想定される攻勢に対する有効な対抗策手段は、現在後ほねっ
こ男爵領には存在せず、また、同藩国の経済規模・発展速度・マンパワーを考慮するに、
将来、対抗できるだけの能力を備えるとは考えられない。

第八次防衛計画準備書より抜粋。

「極めて控え目な言い方をすれば、我が国は今まさに存亡の危機に立たされていると言え
ます」

「ならば、どうしろと言うんだ! 国を捨てろというのか!」

「惜しい。実に惜しい」

「……なんだと?」

「嘆かわしいことですな。
 何も藩国の外まで足を伸ばさずとも、逃げる先はもっと近くにある事に、ご列席の皆様
は気づいておられないようだ」

後ほねっこ男爵領国防委員会小会議議事録より抜粋


「承認する。この邦に暮らす全ての民草の命を救うために、あらゆる手を尽くせ」

後ほねっこ男爵領藩王火足水極の言葉


 後ほねっこ男爵領の地下に、広大な地下空洞が存在することが判明したのは、つい最近
のことである。孫ヶ守の直下60mほどの地点を頂点とした半球状の巨大空間が、着工さ
れたばかりの巨大迷宮の造営作業中に偶然発見されたのだ。
 発見当初、埋立ててしまおうという話もあったのだが、空洞のあまりの巨大さに断念。
その後、速やかに忘れ去られる筈だった巨大空洞は、本格的な装備を整えた第二次調査隊
の報告により、藩国上層部最大の懸案事項の一つと化した。

 大空洞基底部の一角に、更なる大深部へと続く遺跡が発見されたのだ。第二次調査隊は
遺跡の存在を確認後、慎重を期して内部へ侵入することなく帰還したため、それ以上の情
報を持ち帰ることは叶わなかったが、遺跡の発見は、ただそれだけで上層部の頭痛の種と
なるのに十分な重大事だったと言える。

 遺跡との付き合い方に疎い北国人にとって、調査隊の持ち帰った遺跡発見の一報は、藩
国の真下で地球破壊爆弾が見つかりましたと報告されるに等しい凶報である。聞き及んだ
誰もが布団を被って忘れてしまいたいと思ったのは間違いないが、この情報がもたらされ
る地位にいる人間に、現実逃避などと言う贅沢が許されるはずもなく、連日、昼夜を問わ
ず対策会議が開かれることになった。会議は紛糾を極めたものの、とにかく遺跡との付き
合いの長い藩国から意見を仰ごうという無難な結論に達したそんなある日、大空洞を用い
た、ある計画が藩王の承認を得て、発動した。

 それが、後ほねっこ防衛計画である。

 藩国の区画ごとに大空洞へと直結するリンクゲートを設置し、いざ事が起こった際は、
後ほねっこ男爵領の全藩国民が、大空洞に建造される地下城砦都市に立て篭もるという前
代未聞の大計画は、当然のように、各所から激しい反対に晒された。発案者からしてみれ
ば、国全体を半永久的に地下都市に移住させようという計画を、長期間の地下滞在は、遺
跡の影響で人体に不可逆的に変化を起こすということで、避難計画まで大幅に譲歩したつ
もりなのだったらしい。なぜこんなマイルドな計画で反対が出るのか不思議でならないと
零していたと、後に側近の一人が語っている。それはともかく、粘り強い説得と、何より
も火足水極の全権委任の効果は絶大だった。かくして、後ほねっこ男爵領は国を挙げて来
るべき国難に向けた準備を始めることになる。


決断――説得の風景

ある日の藩王


「迷宮課、か」

 まだ、誰もいない部屋に付けられた、真新しいプレートを見上げながら、火足水極は、
なんだか冗談みたいな響きだよな、とひとりごちる。

 迷宮課。迷宮と城砦都市の保守管理及び警備を一手に引き受ける、新たなる国防の要。
現在はまだ設立を急いでいる段階で、装備はともかく人員が一人もいないというさびしい
状態だが、早急に郷土軍と警察から火足水極自ら適性試験を行い、課員が選抜される予定
だ。迷宮課設立の暁には、彼らは迷宮巡視員と名付けられ、平時は遺跡の監視する意味も
含めて迷宮を巡回しつつ、城砦都市の保守や管理を行い、一朝事ある時は、侵攻する敵を
迷宮で迎え撃ち、避難した藩国民を守る最後の盾となる。

 先のケルベロス作戦において名を馳せた後ほねっこのパイロットが、その性質上、攻性
な作戦において最も力を発揮するのに対し、迷宮巡視員は防性な作戦でこそ、その実力を
発揮する組織となるだろう。

 今、後ほねっこ男爵領に、槍と盾が揃おうとしている。無力が、悪いことだとは思わな
い。だが、弱いというただそれだけの理由で、生存を許されない時代に、後ほねっこ男爵
領は身を置いているのだ。もはや、弱いままでいることは許されない。思いきり殴りつけ
たら、今度はこちらが殴り返されないために守り固める番か、と火足水極はほろ苦く思う。

 迷宮課の設立を、更に急がせなければならない。最後に決意の表情で迷宮課のプレート
へ眼差しを送ると、火足水極は、靴音を響かせてその場を歩き去る。激務が待つ、執務室
へと。彼のために用意された戦場へと。もう二度と、藩国民を無為に死なせないという、
その理想のために。強く、さらに強くあるために、彼に立ち止っている暇などありはしな
いのだった。


はんおうのにちょうじょう

ひなんくんれん


 今日は学区のひなんくんれんの日でした。
 この間、ぼくの家の近くにできたゲートをとおって、ひなん所に行くくんれんでした。
 ぼくは、ひなん所に行くのは初めてだったので、とってもどきどきしました。
 でも、お父さんとお母さんが手をにぎってくれたので、すぐに安心しました。
 ゆうどう係のお兄さんが、ひなんの時は、必ずよゆうがあるから、いそいだり、はしっ
たりして、まえの人をおさないように気をつけて下さいと、大きな声で言っていました。

 三分くらいならんでいると、ぼくのばんが来ました。
 ぼくは、お父さんと、お母さんと、おとなりのミィちゃんと、ミィちゃんのお父さんと、
ミィちゃんのお母さんといっしょに、ゲートを通りました。


避難訓練の風景

 ピカピカ光るゲートを通る時、ぼくはきっとカーテンをくぐる時みたいなかんじがする
のかなと思っていたんだけど、なんにもかんじなかったので、ちょっとがっかりしました。
 通りぬけた先では、めいきゅうじゅんしいんのお兄さんが、にこにこわらいながら待っ
ていました。
 それで、ぼくは、今、めいきゅうのおくにいるんだなって分かりました。

 おとなの人も、こどもも、みんなめずらしそうにまわりを見回していました。
 めいきゅうのおくのひなんじょは、思っていたよりもずっとあかるくて、でも、ものす
ごく高いてんじょうまではあかるくできていないので、まるで、夜の町のようでした。
 学校で、めいきゅうの中には、こわいお化けや、きけんなどうぶつがたくさんいるって
ならっていたので、ミィちゃんはすごくこわがっていました。
 ぼくは、へいきでした。
 お母さんが、めいきゅうじゅんしいんのお兄さんがいるし、わるいてきがやってきても、
こうていへいかがいらっしゃって、おいはらって下さるから、すぐにかえれるからだいじょ
うぶよ、と言いました。
 ぼくは、そのとおりだと思っていたので、ぜんぜんこわくありませんでした。

 そのあと、お父さんと、お母さんと、ミィちゃんのお父さんと、ミィちゃんのお母さん
は、おとな向けのせつめい会にしゅっせきして、ぼくと、ミィちゃんは、こども向けの説
明会にしゅっせきしました。
 せつめい会では、めいきゅうじゅんしいんのお姉さんが、いろいろなお話をしてくれま
した。
 めいきゅうの中には、こわいお化けやきけんなどうぶつが、やっぱりいるということや、
ひなん所の中だけは、めいきゅうじゅんしいんのお兄さんやお姉さんが、まいにちがん
ばっているので、あぶなくないことをおしえてもらいました。
 みんなの中には、きもだめしとかぼうけんと言って、めいきゅうに入りたがる子もいる
けど、あぶないからぜったいに入っちゃだめだよ、と、お姉さんは言っていました。

説明会

 そのあと、お父さんと、お母さんといっしょに、ひなんじょで出るおしょくじをたべて、
上にもどりました。
 ゲートのちかくで、さいごに人ずうをかぞえて、ひなん所に行った人と、かえってき
た人のかずが同じことをたしかめて、ひなんくんれんはおわりました。

 めいきゅうのおくが、あんなに広いとは思わなかったので、すごいなあ、と思いました。
 つぎのひなんくんれんでは、もっとひなん所のいろいろなば所を見てみたいと、ぼくは
思いました。


犬士も避難訓練中

摂政ユーラの憂鬱


「先日の避難訓練を元にした、実際の避難の際のシミュレーション結果です。
 全藩国民の避難完了まで、一時間半。その後の確認などで、全リンクゲートを閉鎖する
までにかかる時間は、およそ二時間半となっています」

 苦い顔で、摂政ユーラはその計算結果を眺めていた。

「時間が掛かり過ぎです。
 藩国民に対しては、避難訓練を繰り返し行い、こちら側としてはさしあたって無駄の洗
い出しと手順の効率化に努めてください。
 目標では、全行程を30分で完遂する事になっているはずです。
 そのことを踏まえて、避難計画の練り直しを」

 は、と小さく頷いて肯定の意をユーラに伝えると、部下の姿はドアの向こうに消えた。
 多分、また徹夜を強いることになってしまうだろう。
 自身も満足に眠れぬ夜が何度も続く摂政は、長時間書類を眺めていた所為で疲れの溜まっ
た目頭を揉みほぐすと、再び書類の山と向かい合う。
 リンクゲートの閉鎖に関しては、開閉の操作を迷宮城砦側からのみに限定することで、
地上側からリンクゲートを開かれるという事態を避けることになっている。
 リンクゲートの数は、およそ850。計画では、一つのリンクゲートから2000人が
避難することになっているが、冗長性を確保するために、大目に設置してある。
 問題は、この数だった。一つでも開きっぱなしのゲートがあれば、その瞬間に避難計画
は瓦解しかねない。
 普通に考えれば、リンクゲートの開閉を集中して管理するシステムが必要だが、システ
ムに対する依存度を高く設定し過ぎると、今度は、そのシステムが乗っ取られた時が恐ろ
しい。ゲート一つならば、区画一つを閉鎖するなり、守備隊によって押し返すなりによっ
てリカバリーが可能かもしれないが、集中管理システムが敵の掌中に落ちてしまった場合、
その時点で王手詰みが確定する。

 ユーラは、数十分書類との睨めっこを続けた末に、避難の際に発令所となる迷宮城砦の
第二王城に据えるシステムは、あくまでもゲートの開閉状態を確認できるだけの限定され
たものにする事を決定。多少、手間とマンパワーが取られるが、避難直後ならば、問題は
ない範囲に収まる。個々のゲートを閉鎖した際は、必ず報告するよう義務付けることを条
件に、承認する。
 かくして、決済待ちの書類の山から、決済済みの書類の山にごく一部の書類が移動し、
ユーラはまた新たな問題に頭を悩ませ始める。問題は尽きることなく、予算は決して潤沢
とは言えない。新しい事を始めるには、何もかもがあまりにも少ない小国の悲哀を一身に
背負いながら、それでも尚、ユーラは決して歩みを止めようとはしない。

 それは、何もユーラ一人に限ったことではない。この計画に携わる、誰も彼もが、きっ
とそういう風に働いている。この計画の成否に、この藩国の存亡がかかっている事を、知っ
ているからだ。この政庁のあらゆる会議室で、あらゆるデスクの前で、誰も彼もが訪れ得
る最悪の未来と戦っているのだ。

 いつの日か、再び炎がこの国を焼くす時が来るのかもしれない。
 だが、この国の民が、それを目にする事は、決してないだろう。
 その炎が、民を焼く事は、決してないだろう。
 この国に悪意をもって足を踏み入れるものを迎えるのは、銃弾でも、民の悲鳴でもなく、
動くものの影一つない、痛いほどの静寂であるはずだ。


静寂の……

摂政ユーラのあまり憂鬱じゃない日々

「城砦都市のチェックが終了したそうです。トラップやシステムのバックドアが発見され
ましたが、無事処理が済んだと、協力者の方から連絡がありました。こちらが報告書にな
ります」

「了解しました。お疲れ様でした、とお伝えください」

 はい、と頷き、部屋を辞した部下を送った後、ユーラは報告書に目を落とした。
 思わず知らずため息が漏れる。

 “宰相府から手が空き次第誰か送ろう”

 送ってもらって良かったと、心から思う。流石宰相府から迎えた協力者は敏腕だった。
 古来より、籠城戦で心しなければならないのは、内部からの崩壊を如何にして防ぐかで
ある。堅固無双と称えられながらも、内部崩壊を止めきれず、外敵よりもむしろ、内部の
味方の手により崩れ落ちた名城は、枚挙に暇がない。
 もし仮に、セプテントリオンの浸透を放置したまま有事を迎えていたら、と思うと、摂
政ユーラは背筋が凍る想いだった。

 さて、彼は自分の仕事を果たした。次は我々の番だ。
 報告書を脇にやると、ユーラは目の前の書類に集中する。
 先ほども述べたように、味方の到来が確実な籠城戦で最大の問題となるのは、内部崩壊
である。現在ある危険は、協力者の力もあって排除することができた。
 次なる課題は、将来如何に危険を持ち込ませないかの一点に尽きる。
 平時はさしたる問題はない。通常の手段で城砦都市に赴こうとしたら、それこそ幾つ命
があったところで足りるものではないし、迷宮巡視員が定期的に巡回する予定だからだ。
 問題となるのは、緊急時、避難民を利用される、あるいは、避難民の中に敵の工作員が
紛れ込んでくるというパターンだ。
 使い古されてはいるが、それだけに極めて有効だ。
 それだけに、こちらの採れる手も限られてくる。

「結局、検査体制の強化と、避難区域の区画分けか……」

 危険物を持ち込ませないために、そして、危険人物を城砦都市に立ち入らせないために、
避難民の検査を厳重にすること。そして、万が一防ぎきれなかった時、被害を最小限度に
とどめるために、区画ごとの隔離を容易にすること。
 後者はさしたる問題はない。隔離のためのシャッターや、BC兵器の使用を想定した空
気清浄機の設置などで済む。
 問題は前者である。藩国民の速やかな避難が至上命題である以上、検査に時間を取られ
て、リンクゲート前で渋滞を起こすような事態は避けなければならない。
 かといって、検査を簡便にして、穴を開けるようなことも、またあってはならない。

「新たな検査装置の導入と……あとは訓練に次ぐ訓練しかない、か」

 検査の迅速化と徹底化。この相反する目的を達成するには、結局のところ、常日頃から
の訓練の繰り返しがもっとも効果的なのだ。
 きわめて無難な結論に達した摂政は、新たな訓練費用と検査機器の予算に承認の判を押
し、次なる問題に心を移していた。
 書類の山の影で、後ほねっこ男爵領の摂政は多忙な一日を過ごす。
 きっと明日も明後日も、多忙に違いない。だが、昨日よりも今日よりも、確かに前に進
んでいるという実感は何物にも代え難く、そして、何よりも、心強いものだった。
 窓の外では、日が暮れようとしている。
 今日も一日が終わろうとしていた。
更新日時:2009/02/25 00:04:42
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