文庫クセジュ『エジプトの神々』
フランソワ・ドマ,『エジプトの神々』,(文庫クセジュ)白水社
どんな本か
古代エジプトの神々を、まず、その祭儀と地域神話とから追求。次いで、主要神格とその神学(神論)の変遷も概説。古代エジプト宗教史の内にあった“一神教化”のトレンドを整理しようと試みた書。
文庫クセジュ、原著1965年刊行からの翻訳版。
日本語版翻訳者、大島 清次氏による「訳者まえがき」より部分引用――
本書は〔中略〕、はじめに原著者ものべてるとおり、エジプトの宗教論でも、また、エジプトの神話を伝えるものでもない。もちろん書名が示すとおり、古代エジプトの神々について概説的な知識を与えようとしていることは、本叢書の性格からして当然のことであるが、しかし、それもたんにエジプト神についての研究成果を要領よくまとめたというものではない。多様な神々を一旦それぞれの地方に還元しながら、逆に再びそれらを集約して、多様のなかの統一をはかろうとしているのである。というのも、神々が深く地方に根をおろして、その土地の住民の生活感情や、風土とかかわりあうかれらの精神の軌跡を間接的に物語っていると信じているからであろう。
〔中略〕著者は、この一見雑多な多神教とみえるエジプトの宗教が、実は一神教の特殊な外貌であることを立証しようとしているのである。
書誌情報
フランソワ・ドマ 著,大島 清次 訳,『エジプトの神々』(文庫クセジュ),白水社,Tokyo,1966.
ISBN 4-560-05401-0
(原著刊行年は1965)
- 新書判、ソフト・カバー、本文141頁、資料2頁。価格、951円+税。
エジプトの神々 (文庫クセジュ)(フランソワ・ドマ)
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感想コメント
「ブルーローズ」にどう役立つか
- 「ブルーローズ」のシナリオ題材ネタ本としては、モア・ディープ級でしょう。
この本を読まないとしても、「ブルーローズ」のプレイやマスタリングに不都合が生じる、なんてことは一切ないはず。 - プレイヤー専門の人では、古代エジプトに興味があって、じっくり読む余裕もある人向け。
- 古代エジプトのネタが趣味的に好きなGM、エジプトを舞台にして、ちょっと濃い雰囲気を狙いたいGMなどには、お勧め。
- 地方神殿や地域の祭儀についての情報が豊富な点がいいところ。
- メジャーな神々の神格の変遷について、多数の情報が記されているのもいいところ。
ただし、情報が地域ごとに分散して記されている気味はある。 - 極、大掴みではあるが、古代エジプトの主要宗教センターで、伝統神官たちが唱えた神論(神学)の変遷についても、記されている。
ただし、ヘレニズム期以降の神論や伝統神の変貌については、あまり触れられていない。それ以前の変遷が主内容になっている。 - 概説書ではあても、読者にある程度の予備知識が期待されているとしか思えないのは難点でしょう。
例えば、古代エジプトの地名について、相互の位置関係だけでもある程度イメージを抱けないと、読んでも混乱する可能性大。 - 原著が1965年刊行なので、考古学や古代史の知見については、やや古びてみえる説も記されている。この点は読者の方で読み分けていく必要がある。
「ブルーローズ」を離れてみるとどんな本か?
- やや取っ付きにくいところのある本かもしれない。題材はともかく、アプローチに癖があるようだ。
- 例えば、一神教と多神教の比較について、かなり細かな考察がされている。
日本語版翻訳者は、まえがきで「著者は、この一見雑多な多神教とみえるエジプトの宗教が、実は一神教の特殊な外貌であることを立証しようとしている」と紹介している。
著者の一神教理解は、日本人が普通抱いてるイメージとはかなり違うようだ。 - 著者の見解に賛成するにしても、反対するにしても、まず、著者の考えを掴むのに手間取るかもしれない。
キーワード:
参照:[書籍紹介] [クヌム神]