ベーシック世界の民族・宗教地図
山内 昌之 編『ベーシック 世界の民族・宗教地図』(日経文庫)
どんな本か
『ベーシック 世界の民族・宗教地図』は、1996年3月に刊行されました。つまり、1991年12月のソヴィエト連邦崩壊?から4年ほど後の刊行です。世界の民族問題、宗教現象を理解するための材料を提供するため、地域研究の専門家が共同執筆した本です。
世界を「ヨーロッパ・旧ソ連」「中東・中央アジア」「南アジア」「東南アジア・オセアニア」「東アジア」「南北アメリカ」「アフリカ」の7地域に大別。各地域の民族問題の背景、経緯を主に、関連する宗教現象にも目配りして整理してあります。
一言で言えば、民族紛争の最新メディア報道や、参考資料にあたる前の下調べ用“アンチョコ”にいいと思います。
この本は、世界中の民族について、網羅的に解説したような内容ではありません。
その代わり、各地の民族問題についての最新の報道で省略されがちな経緯も整理されています。ソ連崩壊以降に、どういう動きが生じたかを簡単に調べられるという点も、かえって下調べ用“アンチョコ本”としての価値を高めています。
同程度の価格帯でも、各国の民族問題を扱う資料本は多く刊行されていますが。データを重視した比較的冷静と思える整理がなされているところ、ソ連崩壊から4年目というタイミングで編まれたところを推します。
とりあえず、この本にあたってから、必要に応じて、もっと高い資料本を捜しにいくなり、特定の民族問題を主題にした資料をあたるなり、といった具合に使っていくといいと思います。
同じ日経文庫から刊行されてる『ベーシック 世界の紛争地図 新版』(2000年刊)と併用すると、いざという時の下調べにはさらに重宝するはずです。
ちなみに、「日経文庫」は、文庫サイズではなく、新書判ワイド・サイズ。書店では、経済書や国際関係のコーナーで扱ってることが多いと思います(文庫本コーナーでの陳列は、まずないでしょう)。
書誌情報
山内 昌之 編,『ベーシック 世界の民族・宗教地図』(日経文庫 654),日本経済新聞社,Tokyo,1996.
ISBN 4-532-10654-0
- 新書判ワイド・サイズ、202頁、874円+税。
ベーシック 世界の民族・宗教地図 (日経文庫)
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感想コメント
「ブルーローズ」にどう役立つか
- 紛争ネタはPCの国籍や背景、経歴などに応じて、反応が違ってた方がもっともらしいものですが。それでもセッション・メンバー間で共有基盤にできる情報があった方が、キャラの個性的な反応に説得力とおもしろみを演出し易くなります。そのための“アンチョコ本”としてお勧めです。
特に「民族問題と宗教問題は、関連することは多いが、必ずしも同じ問題ではない」といったポイントが、経緯を伴ってきちんと押さえられておるところは優れています。(その辺をごちゃまぜにして論じてる本や報道って少なくありませんので) - プレイヤー専門で『ブルーローズ』を遊ぶ人には、紛争ネタや民族問題が冒険に関ってくることがママあるキャンペーン環境の方に、お勧めしたいと思います。
ただし、この本から得られる情報のセッションでの採用・不採用は、原則GM裁量を優先、とすることを推奨します。 - GMにとっては、シナリオ・メイクの下調べ資料として、手もとにあるといいと思います。
- 「民族問題とかは扱わないシナリオ傾向だよ」って方でも、「冒険の舞台になる地域に、どんな民族関係があるか確認する」用途には有効です。
- 地域の民族関係を積極的にシナリオに活かそうって方や、オーパーツや超古代伝承に絡めようって方には下調べ用の“アンチョコ本”としてお勧めです。
ただし、この本は、世界中の民族を網羅するような内容の本ではありません。超古代文明やオーパーツと絡め易い少数民族などについて調べるには、別種の資料にあたっていく必要はあります。
「ブルーローズ」を離れてみたらどんな本か?
- すでに記したように、1996年に刊行されたという点が、かえって内容のイニシアティブになっていると思います。
編者の山内昌之さんは、イスラム圏をフィールドにした地域研究、民族研究の重鎮と呼べる方です。山内氏編、それもできるだけ本書と同様の執筆陣で、同じアプローチの本を新たに編んでもらえたら、とか思わないでもないですが。この1996年版は、これはこれで価値のある資料本と思います。
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参照:[ベーシック世界の紛争地図] [書籍紹介] [書籍紹介 ベーシック・ピックアップ]