移牧
移牧
- シームレス・ワールド用語の補助解説項目。
「移牧」とは、牧畜生活、及び、広義の遊牧のライフ・スタイルの内、移動ルートが極めて限定されているものを指す。“Transhumance”の訳語。
典型的な遊牧のライフ・スタイルは、内陸アジアの草原地帯などの広い地域で営まれる。季節に応じた周回ルートがある程度定まっていても、気象変動や、牧草地の状態などに応じて、遊牧ルートの選択にかなり融通が利く(もちろん高度な騎馬生活技術もあっての融通だが)。
これに対して、移牧のライフ・スタイルでは、生活圏の地形にもよるが、通例、定まったルートを、季節の巡りに応じて往復する。
例えば、ヨーロッパ・アルプス?などで、冬場は平地で、夏場は冷涼な高地で牧畜をおこなうスタイルは、移牧の1タイプだ。このタイプの移牧は、多くがほとんど定住に近く、遊牧の内には含まれない。
移牧タイプの遊牧民の代表格は、現パキスタン領で生活するパシュトゥーン人?だ。彼らの間には、現在も半定住の移牧生活を営む人口がたいへん多く「現存する遊牧民集団では、最大規模」と、言われている。彼らのライフ・スタイルは、「半定住」と呼ばれるタイプの移牧だ。
夏場は、高山地帯で牧畜を営み、冬が近づくにつれ、より高度の低い草地に移動するが、ルートは一定している。彼らの多くは、テントの類を持って移動するが、移動ルートの主要ポイントには、簡単な山小屋のような住居を設けているので「半定住」と呼ばれる。これらの住居は、オフ・シーズンには無人で放置されるので、たいへん簡素な物ばかりだ。
移牧民は遊牧民の1タイプだが、一般に、騎馬遊牧民のような生活技術は伝えていない。移牧民にも、ロバやラバなどを飼育する例はあるが、主に荷物を背負わせて運ぶ用途に使われる。
キーワード:
参照:[ブラーフィ人] [グルジア人] [連邦直轄部族地域,パキスタン=イスラム共和国の〜] [バローチスタン州] [ハザラ人]