メロダク・バラダン2世
追加情報
- 「簡単な判定に成功すればわかる情報」とします。
- 小辞典版推奨判定
- 「歴史+知性 目標値10〜12」
- やや詳しい情報 メロダク・バラダン2世がバビロンの王位に就いたのは、B.C.721年のこと。エラム人?の助力があってのこと、とされている。
- 王位に就いたメロダク・バラダンは、シャルマネセル5世の陣没、サルゴン2世の即位を巡るアッシリア帝国の混乱に付け入るかのように、バビロニア地方の諸都市を糾合。対アッシリアの反乱を起した。
- B.C.709年にバビロンはアッシリア軍の攻囲され落城するが、メロダク・バダランは逃亡、サルゴン2世の死後に再起した。
- 小辞典版推奨判定
- 「歴史+直観 目標値10〜12」
- やや詳しい情報 メロダク・バラダン2世は、バビロン王即位の時からエラム人に後押しされていた、という説がある。
- 注:説があるのは事実だが、詳細はあまり定かにされていない。エラム人とメロダク・バラダンが明白に同盟をしたのは、サルゴン2世の死後、彼が再起したときである。
- ただ、最初のバビロニア反乱の2年目に、エラムの軍勢がアッシリア軍と交戦して局地戦で勝利を得たことが、側面支援のような影響をもたらした。
- しかし、バビロニア諸都市が、10年以上、自立を保てたのは、当時のアッシリア帝国がシリア・パレスティナ諸都市の反乱と、その背後でのエジプト王朝の策動、新ヒッタイト群小国家の行動と、その背後でのフリュギア王国?やウラルトゥ王国の策動という、政戦両面の国際政治に謀殺されていた、との大局にあったから――と見るのが現状での冷静な歴史整理になっている。
- 小辞典版推奨判定
- 「言語+知性 目標値10〜12」「歴史+知性 目標値12〜14」
- やや詳しい情報 メロダク・バダランの名は、ユダヤ教聖典(『旧約?』)によるヘブライ語読み。これがルーツになって、英語他にも広まっている。
- バビロニア名は「マルドゥック=アパル=イッディナ(Marduk-apal-iddina )」、バビロンの守護神、バビロニアの主神のマルドゥック神に関係した王名を称してた。含意は、「マルドゥック神に(王権を)委ねられし者」。
- 現在は、「マルドゥック=バラダン(Marduk-baladan)」、「ベロダック=バラダン(Berodach-baladan)」と称されることもある。単に「バラダン(Baladan)」と記して、メロダク・バラダン2世を指すことも少なくない。
GM向け参考情報
- GM向けの補足情報、マスタリング・チップス、アイディア・フックなど
捕捉情報
メロダク・バラダン2世は、教科書的な世界史では、マイナーな人物です。ことに、高校世界史級では、ド・マイナーだと思われます。
結局、彼が関ったアッシリア帝国への反乱は鎮定されてしまいましたし。古代史マニアの一部の間での人気者、と言った方が相応しいかもしれません。
しかし、「後に彼の孫が帝王アッシュル・バニパルとバビロニア王シャマシュ・シェム・ウキン?との兄弟戦争に関る」、「アッシリア帝国を倒したのがメロダク・バラダンと同系のカルデア人の興した王朝、新バビロニア?だった」などの事情から、歴史学的に注目はされている人物です。
ただ、普通の歴史学者は、一般向けの概説書では未解明のことは書かないし、公表する学術論文でも、仮説は仮説と断られ、慎重な言い回しで表現されるのが基本になってます。そんなわけで、メロダク・バラダン2世に注目されるべき面があることも、なかなか世間に知られないだけの話になってます。
逆に、シナリオ・メイク的には美味しい人物です(笑)。
細かな事跡などもあまりわかっていないし、生涯もアウトラインが整理されているだけで、細部が解明されているとは言えない現状です。フィクションを絡める余地は、今のとこたくさんあります。
例えば、バビロニア反乱と古代ユダ王国の対アッシリア帝国連動説だが、きちんとした概説書や事典類でも示唆的に言及されていることはあります。
ただし、一部の例外を除くと、普通、言及されることがあるのは、両国のアッシリア帝国への対抗が、タイミング的に連動していたという話までであることが多い。要するに、細部はよくわかっていない、として扱う余地が大きな人物です。
事跡
メロダク・バラダン2世は、生年不詳。カルデア名も不祥らしい。
ビート・ヤキン族の首長になった経緯も不祥。ビート・ヤキン族や、カルデア系部族の間で、どの程度の影響力を持っていた人物かも不祥。
ただし、記録によれば、彼の本来の根拠地は、「海の国」ににあった「ドゥール・ヤキン(ヤキンの砦)」と呼ばれる場所だったらしい。部族ごとの結束が固く、民族全体のまとまりは、まだなかったらしい当時のカルデア系部族の内では、比較的強い支配力を自分の部族に及ぼしていたのだろう、とは推測される。
しかし、ドゥール・ヤキンは、「『海の国』のどこかだったようだ」、程度が知られるばかりで、発掘調査されたという話も聞かない。普通の研究者の公的な発言では、この辺のことに言及されることは、まれである。
(セッションの物語内では、普通の研究者も「ここだけの話だけどね」と、自分の予想を語ったりするかもしれない)
蓋然性としては、メロダク・バラダン2世の対アッシリア反抗戦がきっかけになり、カルデア系部族に、民族集団としてのまとまりが強まっただろうことは想像される。
- B.C.721年
- バビロン王メロダク・バラダン2世を称し、アッシリア帝国への反乱に踏み切る(即位年をB.C.722年とする説もある)。バビロニア諸都市も、メロダク・バラダンの即位と前後し、対アッシリア反乱に同調した。
- 多くの歴史書で、バビロン王位への即位自体にエラム人の支援があったことは言及されているが、詳細な事情まで記されている本はほとんど見ない。
- (おそらく、古代記録に、エラムがメロダク・バラダンを支援した、と採れる記述がある、あたりが真相ではなかろうか?)
- B.C.719年
- エラム人の軍勢が、アッシリア軍に打撃を与えた。アッシリア側の歴史記録では、どの程度の戦果だったかは詳しくは記されていないが、相当の打撃を被ったようだ。
- B.C.709年
- 各方面の政略で一定の安定状況を得たアッシリア帝国は、軍勢を本格的にバビロニアへと侵攻させた。アッシリア側も苦戦したが、バビロンは落城。メロダク・バラダン2世は一端、根拠地ドゥール・ヤキンに退いたらしい。
- B.C.708年
- 記録によれば、ドゥール・ヤキンはアッシリア軍により徹底的に破壊され、ヤキン族も壊滅した、とされる。しかし、エラム人のもとに身を潜めたメロダク・バラダン2世は、後に再起するので、実はヤキン族も散り散りになっただけらしい(?)。バビロニア諸都市は、なお数年、アッシリアへの抵抗戦を続ける。
- B.C.705年
- アッシリア帝王サルゴン2世、没。後継は、第3子センナケリブ。
- B.C.703年
- 再起したメロダハ・バラダン2世、再度バビロン王を称し、再度、アッシリアへの反乱を起す。この時は、はっきりと、エラム人との同盟行動がとられた。
- (この再起のときに、ユダ王国のヒゼキア王など、シリア・パレスティナの諸都市とも同盟があった、とする説もある)
- B.C.700年
- メロダク・バラダン2世率いる軍勢とエラムの同盟軍は、センナケリブ率いるアッシリア軍とキシュ近辺の平野で会戦。結果は敗戦。メロダク・バラダンは、当時のエラム人の領域の南部まで逃れ、そこで没した、と伝えられている。
- アッシリア側の王碑文に、次のように記された物が知られている
- 「私〔センナケリブ〕の最初の遠征では、バビロニアの王メロダク・バラダンを、そのエラムの援軍もろともキシュの平野で打ち破った。彼は戦いの激しさが頂点に達したとき、自らの陣営を去り、一人で逃走して身の安全を得た。彼が戦いの喧燥のなかに置き去りにした戦車、馬、荷車とラバは、私の手の中に没収した。私はバビロンの中心にある彼の宮殿のなかへ意気揚々と足を踏み入れ、財宝庫を開いた。金、銀、金製と銀製の用具、貴重な宝石など、無数の財産、膨大な重量の財宝すべてに加えて、宮廷女官、宮廷管理、付き人、楽師、職人その他の宮廷に使えていた人びとを連行し、没収財産のなかに数えいれた。私の主であるアッシュルの力によって、私はバビロニアの75の堅固な要塞都市だけでなく、その周囲に位置する420の小都市を包囲して陥落させ、そこから戦利品を没収した。ウルク、ニップル、クタ、シッパルにいた反逆したアラブ人、アラム人、バビロニア人をそれぞれの住民と共に連行し、奪い取った財産のなかに数えいれた」
- 訳文は、大貫良夫、他、共著,世界の歴史1『人類の起原と古代オリエント?』,中央公論社,1998.P.341〜342より。(一部歴史的地名、人名の表記を変更する、などの改変をさせてもらっています)
- B.C.652年
- 兄であるにも関らず、父王の生前の指示でバビロニア王に任じされていたシャマシュ・シェム・ウキン?は、バビロニア地方で弟である時の帝王アッシュル・バニパル に対し反乱を起した。このとき、シャマシュ・シェム・ウキンを盟友として支援した「海の国」の実力者、ナブー・ベール・シュマティは、メロダク・バラダン2世の孫である。
人物像
メロダク・バラダン2世は、人物像も、無理を生じさせずに加味できるフィクション設定の幅が広いキャラクターです。
例えば、古代のシャドウ・ウォー?に利用された辺境の蛮族首長。あるいは、自民族の結集を目指して、反乱にかけた英雄的人物。または、自身が何かの秘密を得ようとして破滅していった悲劇的ヒーローなどなど。
事跡を踏まえていろいろな人物像に料理しても、あまり無理が生じません。まだ余り解明されていないのに、古代の国際政治と動乱に微妙な立場から関っているからです。シナリオ・メイク的に美味しい人物と言えます。
あるいは、人物像の構想など面倒だったら、「詳しいことは学者にもまだわかってないんだ」で押し切っても許される、という、これまた美味しい人物です。
アイデア・フック?
ここでは、文中のあちこちで示唆したソース案を、列挙するだけにしておきましょう。
メロダク・バラダン2世は、――
- エラム人の関った古代のシャドウ・ウォーズに関係したかもしれない。
- さらに、同じ古代のシャドウ・ウォーズには、ユダ王国など、シリア・パレスティナの都市国家も関っていたかもしれない。
- さらにさらに、シリア・パレスティナの都市国家の背後には、エジプト王朝の陰謀もあったかもしれない。
- 彼自身が、バビロンで秘密に継承されていた、なんらかのオーパーツに関っていたとしてもいい。
- あるいは、バビロン王になることを通じて、何かのオーパーツを得ようとしていたのかもしれない。
- また、後代、アッシリア帝国に止めを刺す、新バビロニアの先駈けだったかもしれない。もちろん、そこにも古代のシャドウ・ウォーズの陰が……。
以上のネタのすべてを、1度のセッションに投入しないように注意。
そうした処理には、少なくとも4〜5回のキャンペーン展開が必要になってしまうでしょう。
「ブルーローズ」は、あくまで「現代を舞台にした冒険」であることもお忘れなく。
- 小辞典版推奨判定
- 「魔術+知性 目標値 最低12〜」
- やや詳しい情報 メロダク・バダランの名は、ユダヤ教聖典(『旧約?』)によるヘブライ語読み。これがルーツになって、英語他にも広まっている、ここまでは俗世間でもよく知られている。
- バビロンの守護神にして、バビロニアの主神マルドゥックに「王権を委ねられし者」と称した彼が、後にヘレネス(ポリス時代の古代ギリシア人)に「カルデアの知恵」と呼ばれた秘密知識の一端に触れていた可能性はある。
- 小辞典版推奨判定
- ――
- おまけ
- 「歴史+知性に成功してみたら? 神様の名前組み込んだバビロニア王なんて、掃いて捨てるほどいたんだから」
- 「うむ。だからこそ、ヘレネスがカルデア人の知恵と呼んだ秘密知識が連綿と継承されていた可能性が高い、と、魔術+知性判定は告げるはずなんだな、これが」
- 「可能性だけなら、なんだってあるけどさー。だいたい、歴史+知性判定によれば、マルドゥックがバビロニアの主神に格上げされたのだって、ハンムラビ王の政治的狙いで」
- 「エラム人がメロダクさんを応援したのって、裏で古代ユダ王国もツルんでなかったか、歴史+直観で判定しみよっと♪ マスター、縁故使っていーですかぁ?」
- 「……ねぇ、なんで歴史+直観なわけ?? 歴史+知性でしょってば?」
- 「だぁって、縁故使えば、ガーディアン・エンジェルちゃんが、お告げくれるかもよぉ」
- 「あ〜、その歴史+直観判定はどうぞ。縁故も使っていいけど、守護天使のお告げは共感+直観でないと降りてこない」
- 「そっかー。んじゃ、そっちにして……、縁故も使うし、ついでに《夢と希望》も使いま〜す」
- 「そう来たか(笑)。いいけど。君らみんな、たまには分析+知性とかにも挑んでみたら?」
- 「地味ぃ」「分析できる試料が出てきたらするけど?」「俗な分析では計り知れない秘密こそが、重要なのだよ」「はいはい」
活用や検討
活用
- 過去の投稿
- 「詳しいことは学者にもまだわかってない」路線のシナリオで、万一、プレイヤーの内にメロダク・ファンの古代史マニアの人がいたら。「悪いけどフィクションだから、今日は『充分わかってない人物』ってことでやって」でいいでしょう。
- もし、そのプレイヤーが、どうしてもプレイヤー知識をセッションに活かしたいようだったら、要所要所で「歴史+直観」判定を指示してく手があります。
- 「歴史+知性」ではありません。「メロダク・バラダンのことはまだよくわかっていない」を、基本設定にしたセッションなのですから。「歴史+知性」に成功しても、「まだよくわかっていない」とわかるだけです。大成功すれば、「よくわかるためには、関係した古代文書(あるいは遺跡や遺物)を発見しないとだめだ」と理解します。
- 「歴史+直観」に成功した場合、「君のキャラは、根拠は不明だが、これこれこうに違いない、という確信をインスピレーションとして得た。しかし、それを証明するには証拠になる遺物か、古代文書が必要だ」としていきます。
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参照:[歴史上の実在人物] [センナケリブ] [アッシュル・バニパル] [サルゴン2世] [バビロンの遺跡]