疑似体験
疑似体験 ぎじたいけん
- ゲーム・コンセプト関連用語の解説。
疑似体験とは−−
「疑似体験」は、「ブルーローズ」では、ゲーム・コンセプト、デザイン・コンセプトの、重要ポイントの1つになっている。
一般には、文脈に応じて、様々な意味で用いられる「疑似体験」だが、「ブルーローズ」での意味合い、特にゲーム・コンセプトとの関わりでの意味は、かなり絞られている。
「ブルーローズ」で言われる「疑似体験」の要点は、「ゲームの過程を楽しみながら、GMやプレイヤーが、それぞれの立場から物語が紡がれる過程に参加し、冒険のスリルを感じること」 と言ったあたりだろう。
ルールブックでは、特に、第1章「ゲーム・コンセプト」の内、「テーブルトークRPG」と題された単元の最後のパラグラフに、「ブルーローズ」での意味合いが集約的に記されている。
「テーブルトークRPG」単元の、最後のパラグラフを省略なしに引用してみよう。
ルールブック、p.22より引用
「世のなかには、その傾向によってさまざまなゲームがあるが、RPGは、将棋やカードゲームのように純粋に勝敗を目指すのではなく、シミュレーションを通じて、ゲームの過程を楽しむ。とくに『ブルーローズ』では疑似体験性に重点を置いており、プレイヤーはこのゲームを通して、冒険活劇のスリルを体験してほしいし、ゲームマスターにはみずから冒険活劇を生み出していく快感を感じてほしい」
少し読み苦しい箇所もあるが、文脈ははっきりしている。(引用した単元のさらに前から読めば、文脈はもっと明瞭になるはずだ)
引用個所では、2つの文章から成り立つパラグラフの、前の方の文を読み落とさないように注意。
特に、「RPGは〔中略〕ゲームの過程を楽しむ」の箇所がポイントになる。
この部分に賛同できる人も賛同できない人もいるだろうが、ここは、賛否を云々する箇所ではない。
著者によるマニュフェスト(宣言)であり、「ブルーローズ」のデザイン意図として読むべき箇所だからだ。
(ルールブックの「ゲーム・コンセプト」の章で、著者(デザイナー)のゲーム観が宣言されることは、別に奇異なことではない)
マニュフェストだ、と思って読めば、引用したパラグラフの後半を、例えば次のように解釈することできるだろう。
- 「〔著者は〕シミュレーションを通じて、ゲームの過程を楽しむ〔ように〕『ブルーローズ』では疑似体験性に重点を置いて〔デザインをした〕」
- 〔だから〕「プレイヤーは〔ゲームの過程を楽しんで〕冒険活劇のスリルを体験してほしい」
- 「GMには〔ゲームの過程を楽しんで〕冒険活劇を生み出していく快感を感じてほしい」
「RPGは〔中略〕ゲームの過程を楽しむ」の箇所を読み落としたまま、「GMは冒険物語を生み出し」「プレイヤーは冒険活劇のスリルを疑似体験する」の部分だけに注目するような読み方は、するべきではない。
そんな読み方をしたら、まるで、「ブルーローズ」が、いわゆる吟遊詩人タイプのマスタリングの最悪のものを許容するかのように誤解することもできるだろう。しかし、それは、まったくの誤読というものなのだ。
同じ単元の前半部には、次のような箇所もある「プレイヤーはそれぞれキャラクターと呼ばれる架空の個人を担当し、その個人を通して物語の作成に参加する」(左記引用内の太字強調処理は、本稿筆者による)
太字で強調した箇所から文脈を手繰っていけば、単元末尾を「吟遊詩人タイプのマスタリング許容」と採るような誤読は、本来なら、あり得ないと思われる。
- ルールブックの著者(デザイナー)は、「ブルーローズ」の楽しみ方について疑似体験性に重点を置いたデザインをした。
- プレイヤーは「冒険活劇のスリルを〔疑似〕体験」することが期待されている。ただし、ゲームの過程を楽しみ、物語の作成に参加しながら。
- GMは「みずから冒険活劇を生み出していく快感を感じ」ることが期待されている。ただし、ゲームの過程を楽しみながら。
以上が、「TRPG」と題された単元で、宣言されている「ブルーローズ」と「疑似体験」との関係の要点になる。
「ゲーム・コンセプト」の関わりでも重視されるべき要点でもある。
疑似体験に関連した記述は、第1章「ゲーム・コンセプト」の内でも、「ルールの運用に迷ったとき」、あるいは、「ルールブックの記述の解釈」に迷ったとき、立ちかえって判断材料にすべき箇所の1つだろう。
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