ネクベト女神
- ネクベト女神 ネクベトめがみ (Nhbt,Nekhbet) 簡易版
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「ネクベト女神」は、古代エジプトの伝統神の内で、最も古くから崇拝されていた、と思われる神の一柱。「ネフベト女神」とも。
崇拝は、確実に古王国時代?まで溯れる。おそらく、初期王国時代?、あるいは先王朝時代?には、既に上エジプトのネケン?(またはネヘン)周辺で崇拝されていた、と思われる。宮廷祭儀で上エジプトの後見神とされ、ファラオ?を後見する二柱の女神の一柱とされた。
多くの場合、禿鷹の姿で顕されるが、まれに禿鷹の頭部を持つ女性の姿、あるいは禿鷹の皮を被った完全な女性の姿もとる。
王宮祭儀ではファラオの戴冠に降臨する女神だが、ファラオを育成する神聖な母性、あるいは乳母の役割を担った女神ともされた。
【参照イメージ】
(ファラオを戴冠する二柱女神,Mandarava.com)
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ネクベト女神崇拝の古い聖地、王朝時代に上エジプトの第3ノモスとされたネケン(ネヘン,エイレイティアポリス,エル・カブの遺跡)にあった。エル・カブに遺るネクベト女神の神殿址では、天上に翼を広げて天を飛ぶ禿鷹の姿で描かれたネクベト女神の図像をみることができる。
現在、エル・カブの遺跡に遺る神殿は、新王国時代?以降に改築されたものが、さらに現代に修築された。遠からぬ場所に位置する貴族の岩窟墓も新王国時代のものが多い。
しかし、ナイル対岸にあるヒエラコンポリスでは、ネケンのホルス神の配偶神として、ネクベト女神が祀られていた。ヒエラコンポリスの聖地としての古さから、ネクベト女神の崇拝も先王朝時代に遡る可能性が、極めて高い、と考えられている。
ヒエラコンポリスでは、ネクベト女神はネケンのホルス神の配偶神とされ、「ホルスの無傷の目」と呼ばれた。この定型句は、月を意味した。エル・カブでは、セベク神?がネクベト女神の配偶神とされた。
女神は、古王国時代には、王宮祭儀と結びつき、上エジプトの後見神となり、下エジプトを後見するウアジェト女神と共に、ファラオの玉座を後見する2女神、あるいは「2人の貴婦人」となった。
女神の王権祭儀への関与は、上エジプトの政治統一に深く関わったネケンの勢力が導いたものだろう、との推測は、細かな経緯は不明なものの、多くの研究者が否定してはいない。
古い時代に、幾つかの異本があったピラミッド・テキストの1つでは、「父の父(ファラオ)の母の母であり、世のはじめからあった神格」と敬っている。
この古いイメージでは、女神は世界の始まりから存在していた女性的な神格で、養子を養ったとされた。ネクベト女神の女神官は、禿鷹の毛皮を身にまとい「マー(母親)」という尊称で呼ばれていた。
王宮祭儀との関わりでは、上エジプトの支配者に許された白冠が、女神の持ち物とされた。後世、古代エジプト人自身が、「ネクベト女神は、白冠の化身(擬人化)」と唱えるようになった。
おそらく、この「化身」や「擬人化」は現代人が考えるような意味で言われたのではないだろう。古代エジプト人にとって、神威と考えられた「白冠が顕す、上エジプトを支配する力」を体現するのが、ネクベト女神、といった意味だろうと思われる。
その後、ネクベト女神はファラオの神界での母神と目され、中王国時代の中頃には、ヘケト女神?、ムト女神、テフヌト女神?、ハトホル=テフヌト女神?などと同一視されるようになっていった。
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ネクベト女神を、同じ玉座の後見神であるウアジェト女神と比較すると「弓を束ねるもの」、「9つの弓を束ねるもの」との尊称が興味深い。
太陽神との関わり、ファラオの神界の母神としての、産婆役、乳母役、母神としての役や、ムト女神など母神との同一視は、2女神に共通してみられるのに、「弓を束ねるもの」の尊称は、ネクベト女神にだけ捧げられたものだからだ。
「9つの弓を束ねるもの」の「9つの弓」とは、古代エジプト文明に対して異民族的な沙漠遊牧民の総称で、かなり古い時代から用いられていた。どの民族を9つ、と数えるといったものではなく、「多くの沙漠遊牧民」を漠然と総称するイメージ的な定型句として伝わっている。
ネクベト女神は、あくまでエジプト文明側で祀られた神格の1柱だが、「沙漠遊牧民を統べるもの」といった側面は、あるいは、女神の古いルーツに根ざした一面だったかもしれない。
女神の古い聖地であるエル・カブの近傍では、東方沙漠へと続くワディ(涸谷)の一画に女神を祀る社が遺っている。後世この社は、東方沙漠に開発された金鉱山へのルートを守護する社として祀られるようになった。
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ネクベト女神の神格(再整理と補完)
- 呼称
- 自称として 「白きもの」、「南の冠」、「上エジプトの宮殿の女主人」、「沙漠の谷の女主人」
- 尊称 「ネケンの白きもの」、「天空の女主人」
- 特別な役割(神威)を尊称して ネケンのホルス神の配偶神として「ホルスの無傷の目」。この尊称は、月を意味した。
- 玉座の後見女神として、ウアジェト女神と共に「2人の貴婦人」。
- 玉座の後見女神として、「弓を束ねるもの(9つの弓を束ねるもの)」。「9つの弓」とは、古代エジプトの定型句で、異民族としての沙漠遊牧民族の総称。
- ウラエウスとして「ラーの目」。
- ハトホル女神と同一視されて、「ネケンに住まう偉大な牝牛ネフベト」。
- ハトホル=テフヌト女神と同一視されて、「南のハトホル」。
- 図像
- 禿鷹の姿。しばしば、両脇に羽飾り(フラベルム)を付けたヘジュト冠を被っている。
- まれに、禿鷹の頭部を持つ女性の姿で顕される。あるいは、禿鷹の皮を被った完全な女性の姿でも顕される。
- 時として、ウラエウス?の姿で描かれることもある。
- 持物
- ウアス杖?、フラベルム(羽毛飾り)、ヘジュト冠(特にフラベルムで飾られた冠)、王が持つ鞭(フラジェルム)
- エンブレム
- 「禿鷹の皮の上に置かれた下エジプトの白冠」。「睡蓮に支えられた籠の上に止まる、羽飾りのついた白冠を被った禿鷹」
- 神聖動物
- 白い禿鷹。
- 聖域
- 上エジプト第3ノモスの首都となったネヘブ?(エイレイティアポリス,エル・カブの遺跡?)が、おそらく、女神の最も古い宗教センター。上エジプトがノモスに編成される前からの崇拝拠点だったと思われる。対岸のネケン(ヒエラコンポリス)でも、ネクベト女神は崇拝されていた。
- 王宮祭儀に関連して、メンフィス?、テーベ?でも祀られた。
- 主要祭儀
- ファラオ戴冠の宮廷祭儀にウアジェト女神と共に降臨し、「玉座の後見神」となる。ファラオの王位更新祭、他お王宮祭儀にも降臨。
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参照:[ウアジェト女神] [神話、伝説のキャラクター] [小辞典ワールド編] [ムト女神] [ナルメルのメイス・ヘッド] [エル-カブの遺跡] [バステト女神] [上エジプト] [ヘジュト]