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オシリス神

オシリス神 オシリスしん (Osiris)

PCが予め知ってていい情報

 オシリス神は、古代エジプト?の伝統神の1柱。死者の支配者で、死者が来世に転生できるかどうかを決める法廷の裁判官を勤める神。ファラオ?の本体たるホルス神の父神でもある。

 古代エジプトで死後に遺体をミイラ化する平民が増えるにつれ、古王国時代?よりは中王国時代?、さらには新王国時代?と、広く敬われるようになっていった。

 おそらく、古代エジプトを通じ、最も多くの人に敬われた神の1柱だろう。

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「表現+知性 目標値10〜12」「歴史+知性 目標値12〜14」
やや詳しい情報 オシリス神は、イシス女神の兄神で配偶神。死者の魂が来世に転生できるかどうかを採決する神であることは、古王国時代のピラミッド・テキスト?にすでに記されている。
 古王国時代の王宮祭儀では、すでにファラオ?の本体たるホルス神(守護者ホルス、ハレンドテス)の父神である、とされた。ファラオの王朝が、太陽神ラーとの結びつきを深めるに連れ、イシス女神、及び、セト神?、ネフティス女神?と共に、ヘリオポリス9柱神?に迎え入れられた。
 オシリス神は、民に神々の崇拝と農耕とを教え、「善きもの」として善政を布いた最初の王とされた。ヘリオポリス?の神統譜神話に見られる信仰だが、少なくとも部分的にはさらに古くに遡る。
 オシリス-イシス神話や、その関連神話では、名声を妬んだ弟神セト神に殺害された後、イシス女神の活躍で蘇ったが、死者の法廷の裁判官になること、オシリス神の報復を果たしたホルス神が最初のファラオとなったこと、などが語られている。
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「表現+知性 目標値10〜12」
やや詳しい情報 「物語的に整った型でのオシリス-イシス神話は、現在、新王国時代のテキストが知られているのみです。また、新王国時代に多数記された『死者の書?』では、死者の魂が死後に赴くオシリス神の法廷の様子と、善き魂が迎える転生についてが語られています。
 古王国時代のピラミッド・テキストなどでは、死者の埋葬儀礼と結びつけて、どのようにミイラを作り、どのように埋葬し、どのように(ミイラ)を敬えばいいか、などが神話の型で語られていました。
 総合すると、オシリス神やイシス女神を巡る神話は、中王国時代から新王国時代の初期にかけて、かなり整備されたことが伺われます。が、その経緯は、まだ定かには解明されていません」。
 ヘレネス?たちは、オシリス神をディオニュソス神?やハデス神?と同一視しました。プトレマイオス朝?期には、新たに創唱されたセラピス神?がオシリス神と同体だ、と唱えられました」―― 考古学にかぶれた民間伝承研究家
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「言語+知性 目標値10〜12」
やや詳しい情報 「『オシリス』の神名は、ヘレネス?を通じて、古典ギリシア語?で後世に伝えられたものです。
 古代エジプトの言語?で、なんと呼ばれていたかは不明。神の名を記した神聖文字?に、スタンダードな表記法では発音不能な箇所があるからです。宗教的な意図から、真の神名を記すことを控えた、との説が有力視されています。
 現在の研究者の間では、おそらく、“ayin”のように記された文字が『アェセル』のように発音された、とする説が有力視されています
(ちなみに、神聖文字によるオシリス神の神名には、イシス女神同様『玉座』をデザイン化した絵文字が含まれています)」―― フィールドの言語学者

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「歴史+知性 目標値12〜14」
詳しい情報 オシリス神の古い崇拝中心地は、上エジプトではアビュドスが、下エジプトではブシリス?が知られている。遅くとも中王国時代には、上下エジプトの各地で、オシリス神の死と再生を再演する祭儀が営まれるようになっていった。その数は14とも15とも言われる。
 「アビュドス」は古典ギリシア語名で、古代エジプト名は「アブジュウ」。この地でのオシリス崇拝は、古王国時代の末頃から盛んになったもので、王宮祭儀の広まり(民衆化)と関係して盛んになっていったことが、発掘調査から跡付けられている。
 「ブシリス」も、オシリス神の名にちなんでヘレネス?が伝えた都市名で、古代エジプト名は、「ジェドゥ」だった。現在は、遺跡らしい遺跡も遺っていない。古代の間に石材が他の地域の建築事業に転用され、日干し煉瓦はナイル・デルタの湿気によって崩壊してしまっている。
 ちなみに、かつてジェドゥ(ブシリス)があった地域のつぐ近くには、古代エジプト時代「イスゥム」と呼ばれた町があり、こちらはイシス女神崇拝の拠点だった。と言っても、この地でイシス女神独自の祭儀が盛んになったには、新王国時代以降のこと。こちらには、プトレマイオス朝?時代に神殿に用いられた、宗教壁画が刻まれた花崗岩の石材が遺っている。
 様々な文献記録の分析から、オシリスの崇拝は、ナイル・デルタの東部地域で、古くから根強かったと推定されている。
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「表現+知性 目標値12〜14」「魔術+知性 目標値14以上」「歴史+知性 目標値14以上」
詳しい情報 「『オシリス神の死と再生を再演する祭儀』は、『洪水の季節』の最後の月に、ナイル川の氾濫が引き、播種をはじめる前に数日間に渡り執りおこなわれました。
 祭りは、オシリス神の神像を乗せた聖なる舟(ネシュメト?)を担いだ行列が中心になりました。最初は、オシリス神が敵対者を打ち倒していく様子が再演されます。次に、オシリス神が敵対者に打ち倒される様子が演じられ、神を埋葬する儀式が続きます。
 次に、祭儀に参加する信徒たちが、神の信奉者役と敵対者役に別れ模擬戦を演じます。この模擬戦は、信奉者側が勝つことになっていますし、あくまで模擬戦なのですが、かなりエキサイトして実際に死傷者も出したようです。模擬戦の終了後、先に埋葬儀式をおこなった地からオシリスの神像が取り出され、再び聖なる舟に乗せられると、群集が担いで神殿へ戻していきました。
 以上の公の儀式と別に、神殿の内奥では神官たちが密儀?を執りおこなったことが知られています。ヘロドトスやプルタルコス?は、エジプトを訪れた時、神官たちに許されたこの密儀に立ち会ったようです。プルタルコスは、密儀は公の祭りの2日めから着手される、と記しています。しかし、プルタコルスにしても、ヘロドトスにしても、「儀式の神聖を侵すことはしない」との理由で、儀式の詳細は記していません。
 各地の神殿の発掘調査で知られた式次第によれば、多くの密儀では、泥と水と砂を、特別に用意された神像の鋳型に入れ、儀式用の神像を作ったようです。この神像は神話に従って、14、ないしは16の部分に分割されました。
 こうして作られた神像には、大麦の種子が埋め込まれて発芽を待つ。芽が出神像は、オシリス神の埋葬地に密かに運ばれ埋葬儀式をおこなわれました。この時、前年に埋葬されていた神像を取り出され、神殿に持ち帰った後にミイラ化されました。デンデラの寺院では、分割された神の遺体に見立てられた神像のパーツを、イシス女神がそれぞれを発見したとの伝承地に送っていたようです。
 他に、オシリス神にまつわる宮中儀式として『ジェド祭』が執りおこなわれました。
 これは、メンフィスで始められた儀式らしく、王都でファラオ?の戴冠式の時と、聖なる年を祝う時に執りおこなわれました。「オシリス神の背骨」に見立てられたジェド柱?という芯の柱に綱をかけ、ファラオと助手たちが綱を引いて柱を打ち立てる儀式です」―― 考古学にかぶれた民間伝承研究家
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「魔術+直観 目標値12〜14」「歴史+直観 目標値14以上」
インスピレーション 「ヘロドトスもプルタルコスも、神殿の内奥で執りおこなわれたオシリス神の密儀は『陰気な儀式だ』と記しているな。
 伝えられている儀式は、極めて泥臭い呪術的?とも言えるが、そう陰気な儀式とも言えまい。
 古王国時代のピラミッド・テキスト?には、『オシリス神の敵対者が、神やその信奉者の遺体を喰らう』との記述も見られる。あるいは、この遺体を喰らう儀式が、古い密儀の奥義だったかもしれぬ。
 優れた能力を示したものの遺体を儀式的に喰うことで、そのパワーを身につける、という発想は、世界各地で土俗の呪術に見られるものだからな。
 まあ、ピラミッド・テキストの記述は、古代エジプト人が、ミイラ化の術を編み出し、ミイラの埋葬をはじめた以前の名残だとは思うがね」―― 結社をはぐれた魔術師
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「歴史+知性 目標値12〜14」「魔術+知性 目標値14以上」
詳しい情報 古代エジプトのオシリス崇拝は、他の伝統神崇拝と同様に、ローマ時代に下エジプトから廃れていった。
 紀元4世紀にテオドシウス大帝?がキリスト教をローマ帝国の国教に定めると、下エジプトでは伝統神殿は破壊も被ったが、上エジプトでは概ね無視された。
 ことにアスワン地方?ではイシス神殿が執りしきったオシリス祭儀が続けられた。フィラエ島では、6世紀、ユスティニアヌス帝の時代に、皇帝勅令で神殿が強制閉鎖されるまでオシリス神の祭儀が続けられた。

小辞典版推奨判定
「歴史/分析+知性 目標値14以上」
専門的知識 オシリス神崇拝の起原はよくわかっていない。
 現状ではっきり言えることは、次のようなことだ。
  • 古い時代には、ナイル・デルタ、それも東部が崇拝拠点だった。
  • 先王朝時代?の上エジプトでホルス神を祭神にしていた王朝では、現在のところオシリス崇拝の証拠はみつかっていない。
  • 遅くとも、古王国時代の第4王朝?期には、ファラオ?の王朝祭儀にオシリス神崇拝が取り入れられていた。
  • オシリス神は、イシス神?と共にヘリオポリス9柱神?に迎え入れられた確実な証拠は、現在のところ、古王国時代の第6王朝?期までは跡付けることができる。
 オシリス神崇拝の古い形態を解明することができれば、上エジプト出自の先王朝時代の王朝が、下エジプトに及ぼしていった支配の実態や、支配を通じて被った変遷が、もっと詳しく解明されるかもしれない。
 また、オシリス神が農耕神だったらしく、穀物の生育と関係しているらしいことから、外来説やシリア?起源説が言われることがある。しかし、現在のところ、外来説を証拠立てる物証は知られていない。外来説を否定する物証が知られているわけでもないが、考古学の分野では、判断保留とする研究者が増えている。
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「魔術+知性 目標値14以上」
専門的知識 「ナイル・デルタでの古い崇拝では、オシリス神はアンジェスティ神?と同体と目されていた。
 俗世の歴史学者の内には『オシリス神崇拝が、ブシリス?の地でアンジェスティ神崇拝を吸収した』などと言っている者がいるが、これはナンセンスだろう。ブシリスでは、知られる限り古く、オシリス神はアンジェスティ神と同一視されていたのだから、同体の神とされていたと考えるべきなのだ。
 他方、アビュドスでは、明らかにオシリス神の崇拝が、ヘンタメンティウ神?の崇拝を吸収したようだ。こちらは、オシリス神が支配する来世が西方にあるとのイメージが広がったことと関係しているはずなので、理解できる。
 本来、オシリス神が支配した冥界は地下冥界とイメージされたのだが。これが西方にある、とイメージされるに至ったのは、ラー神の乗る太陽船が西にある間(つまり夜間)、オシリス神の支配領域を通る、とされるようになったからだな。このイメージが広まったのは、明らかに後世のことだ。
 ちなみに、西欧で俗世間向けに書かれた怪奇小説に、オシリス神をバフォメット?と同一存在とする趣向の小説が幾つかある。残念だが、オシリス神と同体だったアンジェスティ神の頭部は牡羊だ。バフォメットの頭部は山羊だな」―― 結社をはぐれた魔術師

GM向け参照情報

オシリス神の神格

【参照イメージ】

呼称
自称 「上下エジプトにマアト?を確かに打ち立てるもの」。「たえず父神ゲブを称えるもの、母神ヌトを愛するもの」。
神の名をみだりに唱えぬための尊称 死者の裁判の裁判官として「マアトの主人」。冥界の支配者として「西方の筆頭者」、「永遠の主人」、「神々の王」。
その他 在世中のファラオ?が「生けるホルス」と呼ばれたのに対し、埋葬されたファラオは「オシリス」と呼ばれた。ミイラ化を経た埋葬が民衆に広まるに連れ、死者は「オシリス誰某」と呼ばれるようになった。
図像
 綺麗にカットされた顎鬚を生やした頭部以外は、ミイラのように布に巻かれた男性の姿で形象られる。ほとんどの場合、足を揃えている立像か、玉座に座した坐像で、歩いている姿はめったに描かれない。
 横たわった姿で描かれるのは、復活前の「植物のオシリス」。
 腕を胸の前で組んでいるか、前に突き出しているポーズがスタンダード。
 肌の色は緑に塗られることが多く、マレに暗褐色に塗られる。
 マレに隼の頭で描かれることがある。
持物
 王位を示すヘカ杖?、房鞭?、ジェド柱の護符?を持つ。
 アテフ冠?を被ることが多い。復活前のオシリスは、メネス頭巾を被っている。
神聖動物
 オシリス神の使いとなる神聖動物は、知られていない。
 ただ、ムカデや、小さな甲虫は、遺体を護るオシリス神の下僕と目された。
聖域
 古い崇拝地は、ナイル・デルタのブシリス?(古代エジプト名、ジェドゥ)。上エジプトでは、王宮祭儀と共にアビュドスが崇拝拠点となった。
 古王国時代の末までには、ヘリオポリスに9柱神の1柱として迎え入れられた。
 後、ナイル流域の各地で、オシリス祭儀が営まれるようになった。この内には、イシス女神の崇拝が根付いた地も少なくない。
 プトレマイオス朝では、セラピス神?の崇拝に習合された。
主要祭儀
王宮祭儀 ジェド祭の祭神となった。
民間祭儀 「洪水の季節」の最後の月(コイアク月)に、ナイル川の氾濫が引き、播種をはじめる前の数日間、オシリス神の死と復活を再演する祭儀が執りおこなわれた。この祭儀にはイシス女神も降臨した。
神殿密儀 オシリス神の死と復活を再演する祭儀がおこなわれた地では、民間祭儀と並行して、神殿の内奥で神官たちが密儀を執りおこなった。
他の神々との関係
 イシス女神の兄神にして配偶神。ブシリス?ではアンジェスティ神?と同体とされた。
 王宮神話に取り入れられて、守護者ホルス?(ハレンドテス)の父神。アビュドスに崇拝が定着し、ヘンタメンティウ神?と同一視された。
 ヘリオポリスの神統譜で、アトゥム神?の子孫で、ゲブ神?とヌト女神?の子神。ハロエリス?(大ホルス)、セト神?、イシス女神、ネフティス女神?の長兄。
 中王国時代頃、アヌビス神?の父神とみなされるようになった。
 他にも、オシリス神と関係づけられた神は少なくない。
補足
 古代エジプトでは、オシリス神はオリオン星と関係する、と考えられていた。
 オシリス神の密儀をおこなう神殿には、多くの場合、神の遺体を奉納した遺物箱が所有されていた(実際は、この遺物箱には、毎年新たに作られた「植物のオシリス」をミイラ化したものが奉納されていたようだ)。特に、デンデラの寺院は、オシリス神の遺体の頭部を奉納した遺物箱を持つとして有名だった。

別称類

 「オシリス」神名は、古典ギリシア語?によって広まり、伝わったもの。

 古代エジプトの言語?で、何と発音されていたかは不明。単に定かでないという以上に、神聖文字の表記は発音不能。現在の研究者の間では「アェセル」のように読まれた、との説が有力。

 神の名を示す神聖文字には、「玉座」を示す絵文字が含まれている。(イシス女神の神聖文字による神名にも「玉座」の図像が含まれている)

 オシリス神の別称は多い、「オシリス神の神格」の項を参照のこと。

活用や検討

活用

検討

  • 検討の項は記名記入を推奨(無記名記入は書き換えられても仕方なし、ってことで)