西ヨーロッパ
- 西ヨーロッパ にしヨーロッパ (Western Europe) 簡易版
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「西ヨーロッパ」は、第2次世界大戦後?の冷戦期に、政治的な用法が広まった地域区分。
冷戦期当時、社会主義圏だった諸国の領域を「東ヨーロッパ」と呼んだのと、対になって用いられたのが「西ヨーロッパ」だ。
この用法では、地理的な意味はあまりない。例えば、北ヨーロッパ諸国?も、南ヨーロッパに属す、イタリア、ギリシア、スペイン、マルタなども含まれた。
この「冷戦期に唱えられた西ヨーロッパ」の用法は、使われる頻度は低くなってきてはいるが、現在でも用いられることはある。通例、含まれるのは、次の諸国の国土(本土領)だ。
- アイスランド共和国
- アイルランド?
- アンドラ公国
- イタリア共和国
- オーストリア共和国
- サン・マリノ共和国?
- スイス連邦
- スペイン?
- ドイツ連邦共和国
- ネーデルラント王国(オランダ)
- バチカン市国
- フランス共和国
- ベルギー王国
- ポルトガル共和国
- マルタ共和国
- モナコ公国
- リヒテンシュタイン公国
- ルクセンブルク大公国
- U.K.(連合王国)
【参照イメージ】
(ヨーロッパの地域区分の「一例」,ベースがイエローで彩色された部分が,政治的な西ヨーロッパ)
やや詳しい情報
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第2次大戦以前、「西ヨーロッパ」という言葉は、ほとんど用いられなかった。
もちろん、方角として、「西方」「東方」ということは言われたが、「西ヨーロッパ」という使い方は、ほとんどなされたことがない。
例えば、第1次世界大戦後にドイツの歴史家、オズワルト・シュペングラーが公刊して、当時の人々に多くの議論の材料を与えた“Der Untergang des Abendlandes”は「西方の没落(The Decline of the West)」を意味した(日本語書名では『西欧の没落』として知られている)。
ありていに言って、16世紀頃から、第1次世界大戦が戦われる頃まで、現在「西ヨーロッパ」と呼ばれる国の多くでは「自分たちこそヨーロッパ文明の代表」という理解が、スタンダードな常識だったのだ。彼らにとって、現在の「東ヨーロッパ」は、単に「ヨーロッパの辺境部」にすぎなかった。極論を言えば「2流のヨーロッパ」「ヨーロッパの遅れた部分」であり、2次大戦後のように、ヨーロッパの西と東とを対にして把握するような発想は見られなかった。
(もちろん、当時の常識は、現在の理解からすれば自文化中心主義?の偏見なのだが、それは、また別の話だ。ここでは、「当時は」どんな理解が支配的だったかを整理している)
16世紀頃から第1次世界大戦頃まで、現在西ヨーロッパ諸国として理解されがちな国々とって、「東方」とは、第一にオスマン=トルコ領やペルシア領、あるいはインドを意味した。まれに、ロシア帝国領も「東方」とイメージされることはあった。
例えば、神聖ローマ帝国(後のオーストリア王国)は、もちろん、ヨーロッパの1国とイメージされていた。しかし、当時の情勢では、オーストリア王国の属領は、ヨーロッパの辺境とイメージされることが多かったのだ。(オーストリアが、ハプスブルク辺境伯の領土とされたのは、もっと前の中世のことだ)
現在、ソ連崩壊後の歴史的な情勢変化に応じて、「西ヨーロッパ」が指す範囲が曖昧化しているのは、当然とも言える。
現在は、未だに冷戦期の世界像に拘っている一部の保守的論者を例外として、ヨーロッパ諸国で、冷戦期の政治的な意味で「西ヨーロッパ」が言われることは、徐々に少なくなってきている。むしろ地理的な意味、あるいは歴史的、文化的な意味で用いる用法も生じている。ただし、こうした用法は、まだ定着したものとは言えず、論者によって指し示す範囲はまちまちだ。
現在、「西ヨーロッパ」の範囲が曖昧化している原因として、もう1つ、2次大戦後の世界情勢に起因するものを指摘できる。それは、イスラム諸国や南アジア諸国の発言力増加だ。
アラブ人を中心にしたイスラム教徒や、インド人を典型にする南アジア諸国の国民が、よく使う“Westerner”(西方人)は、「欧米人」を含意している。より細かく言えば、「U.S.A.(合衆国)もヨーロッパ諸国と一体視した『西方人』の領域、あるいは、欧米文化や欧米型文明全般を指す言葉」として、「西方(Western)」が用いられる。そして、この「西方(Western)」と、「西ヨーロッパ」とは、連想関係が強く、混同され易い。
現在、ヨーロッパ域内では、「ヨーロッパとしての、歴史的、文化的に、共通性もあるが、地域ごとの個性もある、域内の一地区」として「西ヨーロッパ」が言われることが、増えてきている。
他方、ヨーロッパ以東を中心にした域外広域では、「欧米的なものを代表する地域圏」との連想をもって「西ヨーロッパ」、あるいは「西方(Western)」が言われることが多くなってきている。
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「増補待ち」
捕捉情報
解説記事本文では、ワールド・ワイドな用法を優先して、近代日本語の「西欧」「西洋」についての説明はあえて交えませんでした。補足説明を記しておきます。
- 西欧
- 近代日本語としての「西欧」は、ドイツ、フランス、ベルギー、ネーテルラント、ルクセンブルク、及び、U.K.(連合王国)を意味しました。現在でも、こうした意味で用いられることもあるでしょうが、やはり、「東ヨーロッパ(旧社会主義諸国の領域)に対する西ヨーロッパ」で用いられることの方が、ぐっと多いのは、欧米諸国と同様でしょう。新しい用法は、もちろん2次大戦後の用法です。
- 近代日本語としての「西欧」が、いつ頃から用いられるようになったかは、調べ切れていません。ただ、少なくとも、第1次世界大戦前には成立していた言葉だったことは確かです。この言葉は、一面、地理的な用語でしたが、しばしば「西欧列強(諸国)」のように、「海外で植民地を支配している強国」という用法でも用いられました。
- 富国強兵政策で、欧米の強国に追いつくことを大目的としていた大日本帝国で、ヨーロッパ諸国の内で特に強盛だった(当時、強盛だった)諸国を「西欧」とイメージしたのは、無理もないことだったかもしれません。
- また、大日本帝国では、第2次世界大戦以前(つまり冷戦期よりも前)にも、「東欧」「中欧」という言葉も「西欧」と併用されていた例があります。頻度は少なかったかもしれませんが、ある程度通用したらしいことは、興味深いと思われます。
- ちなみに、日本語で言う「西欧」にあたる諸国では、「南ヨーロッパ」という地域は、「東ヨーロッパ」と違って、古くから強く意識されることもあったようです。
- これは、宗教戦争時代のカソリックとプロテスタントの対立や、それ以前の地中海文化圏と、内陸文化圏、あるいはゲルマン文化圏とラテン文化圏の差異意識など、いくつかの要因が複合してのことだろう、と思われます。が、それは、また別の話題になります。
- 西洋
- 現在「西洋」は、学術用語としては、主に「古典古代?のオクシデント(地中海世界西方)」の意味で限定的に用いらることが多くなっています。
- しかし、語源的には、西洋/東洋と世界を大別する用法が語源で、19世紀後半頃から、用いられはじめたそうです。定着し、広まったのは、明治維新後とのことで、細かく見れば、この大別は、「当時の日本社会が、強く興味を惹かれた地域」の大別にすぎませんでした。例えば、南アメリカやアフリカも眼中に入れての「世界の大別」にはなってませんでした。
- この辺の欠落を補おうとして、2次大戦後、何人かの日本の歴史学者が、今で言う中東から南アジア、中央アジアにかけてのあたりを、「中洋」と整理することを提唱したこともあったのですが。この「中洋」は定着しませんでした。
- (内陸アジアという言葉が定着したのは、現在で言う生態学の視点も取り入れたコンセプトだったことが大きかったと思われますが、それは、また別の話題になります)
- ちなみに、「現在、『西洋』は、学術用語としては限定的に用いられている」とは言っても、「西洋史学」「東洋史学」などの用法で、今も用いられることはあります。現在でも「西洋史学」は、特に古典古代限定で用いられるわけでもないようです。
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